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「方角」にまつわる話。

最近は、

「『斜め』という概念が今の四方角でもよかったのにね。北西・北東・南東・南西をそれぞれ東・西・南・北という方角に置き換えなかったという方角の始まりを考えるととても興味深いと思わないかい。」

と知らないおじさんに話しかけられたら怖いなぁなんて思ったり、思わなかったりしています。

普段、僕たちはほとんどの場面において、東・西・南・北の方角しか意識していないんじゃなかろうか。北西・北東・南東・南西というワードをぎりぎり気象予報とかで流し聞きするくらいか。ましてや、「北北東」をはじめとする東・西・南・北と北西・北東・南東・南西の隙間を埋めるニッチな方角なんて日の目を浴びないだろう。

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「北北東」
北北東は、カタカナにすると「ホクホクトウ」となります。どうでしょう、秋から冬にかけて食欲を掻き立てるあの紫色の食べ物を想起させませんか?ということで、もうお分かりですよね。「北北東」は焼き芋屋の名前になるべきだと思うんです。「北北東で焼き芋を。」という駅の北北東にしか出店しない焼き芋屋さん、というコンセプトの移動式の焼き芋屋さんです。普通にバズりそう。

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僕は南東南に何があるのか、東北東に何があるのか全く知らない。だけど調べてみると面白い発見があるものだ。僕が住んでいる南東南には、大田黒公園という紅葉がきれいな庭園があることを知ることができたし、東北東には古書サンカクヤマという素敵な古本屋を見つけることができた。普段は北か南、あるいは東か西の二つに一つを選びながら生活をしているけれどそのどちらでもない方角の探索は案外面白いのかもしれない。

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日本の北北西に位置する国は、アイスランド。島国。オーロラや温泉、有無を言わせない大自然が有名。そんなアイスランドを舞台にした漫画、入江亜季さんの「北北西に曇と往け」が学生時代からずっと好き。まだ、完結していないので、新刊が出る喜びをかみしめることができている唯一の作品。主人公はアイスランドに住む日本人の17歳探偵。アイスランドの事件を解決するというよりも自身の家族にまつわる悩みをアイスランドと日本を跨ぎ、解決していく物語。アイスランドの植生から文化、土地、街など幅広いところにスポットライトがあたる。旅のお供にしたい。絵もきれい。何と言っても装丁が良い。読んだら最後、旅や冒険に出たくなるそんなシリーズ。

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この宇宙 迷い易いから 北極星
じゃなくて一直線 南南東の君の街

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サカナクションの「なんてったって春」という曲に、こんな歌詞がある。

南南西から鳴く風 何故か流れた涙 なんてったって春だ

サカナクション「なんてったって春」

「南南西」と「鳴く」と「何故か」と「流れた」と「涙」で「な」から始まる品詞が多く韻としては気持ちの良い。そして、意味もしっかり掛けられていてとてもかっこいい。風の音を「なく」と表現することであとからくる「涙」が引き立つ。そんな韻の気持ちよさとは裏腹に春の陰鬱さをうたっている。

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日本の東北東に位置する地域、アラスカではイヌイットと呼ばれる先住民族が暮らしている。イヌイットの人々が使うイヌイット語には、日本の「雨」と同じように「雪」を示す単語や表現が多いらしい。日本の「五月雨」「梅雨」「甘露の雨」といったように。

※本当はイヌイット語の方角を示す単語の話(例えば、西は「〇〇」という単語で、「太陽が沈む場所」という意味があるらしい、的な話)がしたかったのだけれど、インターネットのどこにも日本語の資料がなかった。これだけ情報に溢れた世界で、イヌイット語の方角にまつわる話がまるで存在していないのは不思議。まやかし。

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やはり、16方位というのは特別で好きだ。というか16という数字が好きなのかもしれない。音符であれば16分音符が好き。ただこの16分音符というのは、16というおっきな数字がついているにも関わらず、音の長さは8の半分になってしまう。これだからこの世はちゃんちゃらおかしくてくだらない。こんなおかしくてくだらない世界で残り一つ、西北西にまつわる救済を見つけていきたい。

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