『着替えたくない子』との会話から子どもの接し方を考える
私の勤めている園では、子どもが洋服を濡らしたり汚したりしたときに、自分の着替え袋から洋服を取り出し着替えます。先日、「着替えたくない。」と言う子との会話から気付いたことがありました。
Aちゃんは洋服を濡らしたので、着替え袋を持ってきて洋服を取り出します。しかし、そこで動きが止まります。
Aちゃん「かわいくないから、着替えたくない。」
Aちゃんは、不満そうな、泣きそうな、なんとも言えない表情でした。この時、私はいくつかのことを考えました。「幼稚園の洋服を貸し出すこともできる。でも、そうしたらこの子は、嫌なものを嫌と言い続けるのだろうか。自分の気持ちに折り合いをつける力も育ってほしい」と。
そこで私は、Aちゃんが着替えに気持ちが向くように「そうなんだね。あ、これかわいいね。」と声を掛けました。しかしAちゃんは「かわいくないから、着替えたくない。」と言い、洋服を蹴るようなそぶりを見せました。このままこの会話を続けていてもAちゃんには有効ではないでしょう。
しかし、この後Aちゃんはその洋服を自ら着替えました。それはこのような流れです。
私「そっか。そうなんだね。Aちゃんは、かわいいのが着たいんだよね。」
Aちゃん「うん。スカートとか。」
私「スカートとか着たいんだよね。わかるなあ。Aちゃんかわいいの着たいんだもんね。そうだ。先生さ、ママにお話しするよ。Aちゃんかわいい洋服が好きなんです、って。スカートとかかわいいのが好きなんです。って。Aちゃんの気持ちすっごくわかるもん。」
すると、Aちゃんはしばらくして、「このリボンかわいい。」とつぶやいて洋服を着ました。
私はAちゃんの姿を見て、驚きました。そして大きな気付きがありました。
それは、『感覚は人それぞれなので正解がない』ということです。ある人にとって「かわいいもの」でも、ある人にとっては「かわいくない」のです。この部分で話をしても、お互いに向かい合って意見を投げ合うだけになってしまいます。
では、どうするか。
それは、『その子の感覚を肯定して味方になる』ということです。
この場合、その子の隣に立って一緒に同じ方向を向いていることになります。そしてその子の味方になってどうしたらいいか考えていくのです。
もしかしたら、世の中はもっと複雑でこんなに簡単ではないのかもしれません。
しかし、感覚は人それぞれだからこそ、相手を尊重する感覚は忘れないでいたい、とAちゃんとのやりとりから教えてもらいました。