おい、Z そのトレーナーはハニーズじゃないヘインズだ!

あれは中学2年の修学旅行の頃だった。
九州に修学旅行へ行くので冬物を準備しないといけなかった。
僕の町は沖縄県でも田舎にあり、町内には洋服店がない。なので隣町のデパートまで行かなければならなかった。
僕の父は、車の免許をもっておらず、唯一免許を持っている母は町内しか車の運転ができない。
そんな時、友人Zが
「いいだろーオレ○○まで行ってハニーズのトレーナー買ったんだぜ!」と ドヤ顔をかましてきた。
隣り町まで家族で行き、服を購入したらしい。正直とても羨ましかった。
結局、僕は町内のスポーツ店でトレーナーを買った。

修学旅行、九州でのこと。
夜に全体集合し、明日のスケジュールを確認しあった。
すると隣のクラスからZがやってきた。
「買ったやつはこのトレーナーだよ、いいだろ?ハニーズ」
「え、これハニーズじゃなくてヘインズ(Hanes)って読むけど」
「うそ?いや、ハニーズだよこれ」
Zは顔を赤くしながら他の生徒に確認をしていた。ちょっとびっくりした顔をしていたので、たぶんヘインズと言われたのだろう。

Zよ、友人である僕がなぜその時に注意をしてあげたのか分からなかっただろう?もし、あのとき僕が指摘しなかったら君は一生、ヘインズのことをハニーズと呼んでいた人生を送っていたに違いない。

そのトレーナーはハニーズじゃない、ヘインズだ!

大人になったZ
「今日は買い物に付き合ってくれてありがとう❤️」
「僕も嬉しいよ、まさかサチコちゃんから誘ってくれるなんて」
「お互い様!Z君も何か買ったら?」
「そうだなぁ、あのトレーナーなんかほしいなぁ」
「どれどれ?」
「あのハニーズのトレーナー」
「‥‥‥(『Henes』のこと?)うん、そうだね‥‥あのとなりのトレーナーは?」
「ニケもいいね、ニケも捨てがたい!でも僕はハニーズが好きかな」
「‥‥‥(え、もしかして『NlKE』のこと?‥‥笑わそうとしているのかしら)‥‥」

帰り道に大通りを歩く
「サチコちゃん、今日はとても楽しかったよ。ありがとう」
「う、うん、‥‥‥」
「どうしたの?元気ないね?」
「私も楽しかったよ。また行きたいね」
二人で横断歩道を渡ろうとすると危うく車にぶつかりそうになる。
「危ない!ったくなんだあの車は!大丈夫?サチコちゃん」
「大丈夫。ありがとうZ君❤️」
「それにしても、あのラピンの車最悪だなぁ、ちゃんと運転しれっつーの!」
「ラピン?‥‥‥(あの車種はラパン『LAPlN』なのに)‥‥」
「ごめんなさい。私達合わないみたい、サヨナラ💔」
「え、どうしたの?サチコちゃ〜ん、ちょっと待って~」

あの修学旅行の時に僕がZに指摘していなかったら今頃はこうなっていたのかも知れない。 


1985年、阪神タイガースが優勝した年。
バース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発のホームランで阪神ファンが湧いた。
まるで映画のような奇跡が現実に起こることもあるのだ。
ましてや、ハニーズ、ニケ、ラピンの奇跡の三連チャンが起こりうるかもしれない。

Z君へ伝えたい。

あのとき僕から指摘されたことをもっと感謝してほしい。
そしてドヤ顔はうかつに使うものではない。

そんなZ君だが、今でもずっと友達だ。

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ミズグチスイデンクレ村長
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