「富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ」 吉川英治 『宮本武蔵』 6巻入城府より
「待つ間に富士でも眺めておれというのだろう。ー伊織、富士が見えるぞ」
「富士なんてめずらしくないや。法典ケ原だって、いつも見えるじゃないか」
「今日の富士は違う」
「どうして」
「富士は、一日でも、同じ姿であったことがない」
「同じだよ」
「時と、天候と、見る場所と、春や秋と。ーそれと観る者のその折々の心次第で」
「………」
◆隣りの芝生は青い
久しぶりに宮本武蔵を読んでみました。なかでもお気に入りの場面が武蔵が伊織に対して諭すところです。
伊織はまだ14歳の子供で、人を自分の価値観で見てしまいがちです。
江戸の関所を通るときに、役人は武蔵と伊織のみすぼらしい格好を見ると「江戸に何の用か!」と圧力をかけてきます。武蔵は機転をきかし、柳生但馬守宗矩の名前を出すと役人はすぐに通してくれました。
伊織は役人を馬鹿にし、柳生家には憧れを持ちます。
何かを成し遂げた人、上手くいってそうな人を見ると、うらやましくなるときがあります。
ひとり黙々と作業をしていると、「ハウスを借りて果樹を作り、県外に送った方が良かったのでは?」とか「◯◯さん農業でいくら儲かっているだろうか?」など考えてしまいます。
考えることは悪くないのですが比べてしまうのは良くないですね。なぜなら先祖の土地を再生し水田を作り、美味しい野菜を作ると決めたからです。
自分に負けそうになる時は宮本武蔵6巻〜入城府〜を読みます。続きをどうぞ。
伊織は、河原の石を拾って、水面を切って遊んでいたが、ひょいと跳んできて、
「先生、これから、柳生様のお屋敷へ行くのですか」
「さあ、どうするか」
「だって、あそこで、そういったじゃないか」
「一度は、いくつもりだが……先様は、大名だからの」
「将軍家の御指南役って、偉いんだろうね」
「うむ」
「おらも大きくなったら、柳生様のようになろう」
「そんな小さい望みを持つんじゃない」
「え。……なぜ?」
「富士山をごらん」
「富士山にゃなれないよ」
「あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ。世間へ媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値打ちは世の人がきめてくれる」
武蔵よ、ありがとう。原点に帰れそうです。ついでに伊織もありがとう😊
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