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電車での失敗談 僕がメガネをかけるようになった理由

今から15年以上前の話だ

当時、大阪に住んでた僕は仕事のため、電車通勤をしていた。なるべく人がいない時間を見計らって電車を待っているのだが、最終的には人がたくさん乗ってきて席の取り合いになる。

『プシュー』っとドアが開き、電車内に足を踏み入れると左右を見渡しながら空いている席がないか確認をする。

1人入れそうな席が空いている。僕は「すみません」と隣の人におじぎをして申し訳なさそうに座った。

各駅停車なので、そのつど人が入ってくる。だんだんと人も増えてきて皆、窮屈そうにしている。

すると隣に座っていた40代ぐらいの女性が立ち上がって、「おばあちゃん、ここ座って」と目の前に立っていた年配の女性に席をゆずった。おばあちゃんは「ありがとう」と笑顔で席に座った。

これだ!ミスター偽善者の僕に火が付いた。おい若造、おばあちゃんが困ってるだろ席をゆずってあげなさいよ、と席をゆずった40代の女性からの挑戦状だと僕は受け取った。

そこから急に緊張感が出てきて、電車が駅に停まるたびに年配の人がいないかキョロキョロとターゲットを探した。

次の駅で大量に人が流れ込み、なんと僕の目の前に年配らしき女性が立っているではないか!タイミングを見て席をゆずるぞ。『ドクンドクン』緊張して心臓の鼓動が鳴り止まない。

勇気を出せ!あの40代の女性が席をゆずったんだ、20代の僕にもできる。そこから席をゆずり出すまでのカウントダウンが始まった。

5.4.3.2.1 いけ!


僕は腰を浮かし、立ち上がろうとしながら「どうぞ、ここに座ってください」と勇気をだして目の前の女性に言った。

女性は「えっ!いいです、いいです」と困惑そうに首を横に振った。

あれ、なにかやらかした?気まずそうな雰囲気になり、相手がこちらを見ていないのを確認しながらじーっと女性を見てみた。

よくよく見ると女性は40代後半から50代前半だと思われた。

しまったー、年配の方ではない。最近目の前がボーっとしているけど視力が落ちているんだと改めて気が付いた。人の周りがぼんやりと霧がかかった様に見えたのはオーラじゃないんだ。
この電車内も何かどんよりとした空気が流れていた。

こっからの時間が長かった。ぼくは矢吹丈がボクシングの試合で燃え尽きたように頭を下にうなだれたまま、時間が過ぎ去るのをただただ待っていた。

もしも願いが叶うなら、運転手に銃を突き付け、「今すぐ、準急に変えろ!」と叫ぶだろう。

次の駅で、その女性が降りた瞬間、僕はこう思った。

早くメガネを買いにいこうと。


どうでしたか?人それぞれ、何かきっかけというものがあるんです。
今回の話はメガネをかけようと思ったきっかけです。おわり。


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ミズグチスイデンクレ村長
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