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ホーリネスの牧師が統一教会を迫害するのは不可解だ

統一教会を迫害するキリスト教のグループは、福音派と日本基督教団のふたつに分けられます。日本の福音派のほとんどは、ホーリネスによって形成されたと言われています。それに対して、日本基督教団はリベラル派神学の影響を受けたプリテスタントの合同教会であると見られています。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。実は、日本基督教団の中にも、ホーリネスが深く広く浸透しています。

では、ホーリネスという教派はどのような特徴を持ったグループなのでしょうか。

ホーリネスの創始者は中田重治という人です。中田は一時期、内村鑑三と一緒に再臨運動という伝道活動に取り組んでいたこともありました。もともとはメソジストの牧師でしたが、ホーリネスという新しい運動を始めました。ホーリネスの創始者となった中田は、日本人の祖先がユダヤ人であるという日ユ同祖論を信じ込み、これをホーリネスの教理に取り込みました。

日ユ同祖論を信じる牧師たちは、日本人とユダヤ人の共通点を強調しますが、相違点はまったく無視します。日本人にはとても受け入れられないような特徴や習慣があるにもかかわらず、中田重治は、ユダヤ人の受け入れやすい側面だけを強調しました。

日ユ同祖論は親ユダヤのようにも見えますが、実はユダヤ人に対する日本人の劣等感の裏返しでもあります。ユダヤ人の独自性を傷つけている点で、致命的な反ユダヤ主義であると見ることができます。しかも日本人とユダヤ人の双方の独自性を同時に傷つけているのですから、日ユ同祖論は極めて毒性の高いウイルスのようなものであると私は思います。

この日ユ同祖論と一体化した再臨信仰のせいで、戦時下の政府当局はホーリネスを迫害しました。迫害を受ける苦しみや痛みを誰よりもよく知っていたにもかかわらず、ホーリネスの牧師たちは、統一教会を標的とした迫害の加害者になってしまいます。

統一教会の信者に対する脱会活動で有名な森山諭牧師は、ホーリネスの影響を受けています。なぜなら、森山牧師の日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会は、森山牧師が中田羽後と共同で設立した教会であったからです。中田羽後は、ホーリネスの創始者である中田重治の息子です。つまり、福音派の中でも特に激しく統一教会を弾圧し始めたのは、ホーリネスの創始者の息子が設立した教会の牧師であったのです。

実は日本基督教団の中にも、中田重治の子孫たちがいます。1988年から教団議長を務めた辻宣道牧師は、中田重治の孫です。辻牧師が教団議長に就任したこの年から、統一教会の信者が拉致監禁される事件が激増しました。強制脱会を専門に活動していた川崎経子牧師は1990年に『統一協会の素顔』という脱会活動の指南書を書いていますが、辻牧師はその本に「推薦のことば」を寄せながら、辻牧師自身も20年近くにわたって脱会活動にかかわったと表明しています。

この辻牧師は、戦時下におけるホーリネスに対する迫害を経験していました。父親である辻啓蔵牧師は青森刑務所で獄死しました。この痛みを知っていたにもかかららず、辻宣道牧師は、統一教会信者を拉致監禁し、監禁された信者に精神的な拷問を加える脱会活動を促進していたのです。

いったい、ホーリネスの伝統を受け継ぐ牧師が、どうしてそんなことをしてしまうのか、本当に理解に苦しみます。

資料:🟦杉田六一『東アジアへ来たユダヤ人』音羽書房、1967年。
   🟦宮澤正典『近代日本のユダヤ論議』思文閣出版、2015年。

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