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文鮮明先生とは誰なのか/原理講論研究(3)
10月の初旬にある家庭連合の教会長と直接会って話す機会がありました。この教会長のお話によると、文鮮明先生ご夫妻は崇拝の対象ではないそうです。家庭連合・旧統一教会では、文鮮明先生のことを「再臨のメシア」と呼んで、崇拝しているのかと思っていましたが、そうではなかったようです。私のような既成教会のキリスト教徒は、「再臨のメシア」とは二千年前のイエスと同一人物であり、メシアとはキリストであり、キリストは三位一体の神の位格のひとつであり、従って「再臨のメシア」とはイエス・キリストのことであり、崇拝の対象であると思い込んでしまいます。ところが、家庭連合では「再臨のメシア」とは崇拝の対象ではないとのことです。
そもそも、メシアとは「油を注がれた者」という意味であり、旧約ではイスラエルの祭司や王を表す言葉でした。つまり、聖書においては最初から、人間の称号として、メシアという用語が使われてきました。メシアとは、神から特別な使命を与えられた人という意味です。家庭連合は、そのような人間を表す称号として、メシアという言葉を使っています。
では、『原理講論』は、文鮮明先生のことをどのように説明しているのでしょうか。総序の終わりの方で、『原理講論』の著者は次のように述べています。
「神は、既にこの地上に、このような人生と宇宙の根本問題を解決されるために、一人のお方を遣わし給うたのである。そのお方こそ、すなわち、文鮮明先生である。先生は、幾十星霜(いくじゅうせいそう)を、有史以来だれ一人として想像にも及ばなかった蒼茫(そうぼう)たる無形世界をさまよい歩きつつ、神のみが記憶し給う血と汗と涙にまみれた苦難の道を歩まれた。人間として歩まなければならない最大の試練の道を、すべて歩まなければ、人類を救い得る最終的な真理を探しだすことはできないという原理を知っておられたので、先生は単身、霊界と肉界の両界にわたる億万のサタンと闘い、勝利されたのである。そうして、イエスをはじめ、楽園の多くの聖賢たちと自由に接触し、ひそかに神と霊交なさることによって、天倫の秘密を明らかにされたのである。」(p. 38)
幾十星霜とは、長い年月を意味する言葉です。蒼茫とは、果てしなく広いことを意味しています。
ここで著者は、文鮮明先生が「イエスをはじめ、楽園の多くの聖賢たちと自由に接触し、ひそかに神と霊交なさることによって、天倫の秘密を明らかにされたのである」と述べています。つまり、『原理講論』は決して文鮮明先生がイエスと同一人物であったと教えているのではなく、むしろ祭司サムエルや預言者エリヤのように、神の語りかけを聴くことのできる人であり、特別な使命を果たすために神によって遣わされた人であると証言しているのです。
では、文鮮明先生が解決するべき根本問題とは何だったのでしょうか。
『原理講論』の著者は、イエス以後2千年を経過したキリスト教の難問を、次のように指摘しています。
「イエスの十字架の代贖によって、明らかに救いを受けたと信じている人々であっても、有史以来、一人として、救い主の贖罪を必要とせずに天国へ行けるような罪のない子女を生むことができなかったという事実は、彼らが重生した以後においても、それ以前と同じく、原罪が、その子孫にそのまま遺伝されているという、有力な証拠とならざるを得ないのではなかろうか。このような実証的な事実を見るとき、十字架の代贖の限界は果たしてどのくらいまでなのかということが、大きな問題とならざるを得ない。事実、イエス以後二〇〇〇年にわたるキリスト教の歴史の期間を通じて、イエスの十字架の血によって完全に赦罪されたと自負してきた信徒たちの数は、数え尽くせないほど多かった。しかし実際には、罪のない個人も、罪のない家庭も、罪のない社会も、一度たりとも存在したことはなかったのである。」(p. 36以下)
既成のキリスト教会は、イエスの十字架の贖罪は完全であると主張しているが、実際に救われたと自負しているキリスト教徒の多くが、相変わらず罪深い生活を送り続けているのは、どうしてなのか、と著者は問いかけています。この難しい問題を解決するために、神は文鮮明先生を遣わしてくださったというのです。
🟦世界平和統一家庭連合『原理講論』光言社、1996年。
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