見出し画像

ブラック・ライブズ・マターに反対するカトリック教会の司祭たち

ブラック・ライブズ・マター運動は、必ずしも公民権運動ではない。むしろそれは、キリスト教徒の信仰を攻撃することによって、米国の文化を根底から覆そうとする破壊的な運動である。この運動に対して、米国や南アフリカのカトリック教会の司祭たちが、勇気を持って声を上げ始めている。この小論では、ブラック・ライブズ・マターに対するカトリック教会の司祭たちの最近の意見を取り上げてみることにしたい。

南アフリカのウィルフリッド・フォックス・ネイピア枢機卿は日曜日に、優遇的な「黒人経済力強化政策」 (Black Economic Empowerment) を「人種差別」と呼んで非難し、そのような偏愛主義にはアパルトヘイトのようなところがあると語った。[1]

ダーバンの大司教であるネイピア枢機卿は、アファーマティブ・アクション(優遇措置Affirmative Action) と黒人経済力強化政策について、人種によってもうひとつの集団を優遇する「アパルトヘイト政策と同等の」人種差別の形態である、とツイッターで述べた。ここで、アパルトヘイトとは、南アフリカにおいて制度化された人種隔離政策のことである。この制度は、南アフリカで少数派であった白人の絶対的な優位を確保していた。アパルトヘイトは、反アパルトヘイト運動のメンバーたちの勇気と忍耐によって、1990年代の初めに克服された。

ネイピア枢機卿はまた、ブラック・ライブズ・マター運動に対しても非難の声を上げ続けてきた。ブラック・ライブズ・マターの公式声明は「何世紀にもわたって最高の文明と文化を支えてきた真の価値観、構造、制度を解体することに関与している利害関係者と政党によって運動が乗っ取られていることを示している」と、ネイピア枢機卿は昨年7月にツイートした。ブラック・ライブズ・マターが、両親と子どもによって構成される基本的な単位としての核家族を否定していることや、異性愛規範の廃止やクィア文化の擁護を含む過激なLGBTのアジェンダを擁護していることを理由に、ブラック・ライブズ・マターを非難するキリスト教徒や保守派の黒人指導者が増加している。ネイピア枢機卿もそのひとりだ。

ネイピア枢機卿はまた、ブラック・ライブズ・マターが本当に黒人の命を大切にしているならば、妊娠中絶産業を非難するはずである、と述べた。妊娠中絶産業は、不均衡な仕方で、黒人の人口を標的にしているからである。「ブラック・ライブズ・マター運動の信頼性に関するもうひとつの重要なテストは、プランド・ペアレントフッドや妊娠中絶産業に対してどのような立場をとるかである」とネイピア枢機卿はツイートした。米国においては、妊娠中絶産業は不均衡な仕方で黒人の人口を標的としている。すなわち、中絶された黒人の子どもの割合は、中絶された白人の子どもの割合の3倍である。米国疾病対策予防センターによって提供された最近の妊娠中絶に関する2018年のデータによると、米国における妊娠中絶の割合では、黒人の女性が最も高く、白人の女性は最も低い。米国の白人の間では生産児1,000人当たり110人の妊娠中絶があるのに対し、黒人の間では生産児1,000人当たり335人の妊娠中絶がある。したがって、黒人は白人の3倍の割合で、中絶されているのであり、しかも米国における黒人の死者の半数以上は、妊娠中絶の結果なのである。

テキサス州タイラー地区のカトリック教会の司教は昨年7月に、ブラック・ライブズ・マター運動の公式声明がキリスト教徒の信仰に反対していると主張した。[2]

「このことについて、自分でよく調べてみてください」と、ジョセフ・ストリックランド司教は独立記念日に、ブラック・ライブズ・マターの公式声明を引用しながらツイートした。「この声明の終わりの方で、信仰に反するふたつの点が述べられています。ひとつは核家族に反対していること(お父さんはどこにいるのか) 、もうひとつは男と女の結合としての性に関する神の御計画に反対していることです。このアジェンダは危険です」とストリックランド司教は述べた。

米国においては、核家族の崩壊が黒人に悪影響を及ぼしてきた。この核家族の崩壊が、犯罪と貧困と依存の下方スパイラルの中心にあったのだ。多くの黒人は、自分たちがこの下方スパイラルの中にあることに気づいている。にもかかららず、ブラック・ライブズ・マター運動の指導者たちは、このことを認めようとしないのである。

NFLのアメリカンフットボール選手として活躍したマーセラス・ワイリーは、「西洋で規定された核家族構造の要請を破壊する」というブラック・ライブズ・マターの願望は間違っていて危険である、と主張している。統計を引用しながら、ワイリーが語ったところによると、ひとり親家族の子どもが「自殺する可能性は5倍であり、貧困に陥る可能性は6倍、高等学校を中退する可能性は9倍、化学物質を濫用する可能性は10倍、レイプに関与する可能性は14倍、刑務所に入る可能性は20倍、家出する可能性は32倍である。」

ストリックランド司教が批判したブラック・ライブズ・マターのもうひとつの主張は、ひとりの男とひとりの女の結合としての結婚を否定することである。キリスト教徒の信仰は、人間が男と女に創造されたと教えており、ひとりの男とひとりの女の結合としての結婚を尊重している。ブラック・ライブズ・マターは、このようなキリスト教徒の信仰を否定しているのである。

「我々はクィアを肯定するネットワークを促進する。我々が集まる時、異性愛規範の窮屈な支配から、あるいは、むしろ、世界のすべての人が異性愛者であるという信念から、我々自身を解放するという意志を持って、そのネットワークを促進するのである」と、ブラック・ライブズ・マターは宣言している。反キリストのジェンダー理論の用語を採用することによって、ブラック・ライブズ・マターは「シスジェンダーの特権を解体し、性転換した黒人の地位を高めると共に、特に不均衡な仕方で、性転換に反対する暴力に直面し続けているところの、男性から女性に性転換した黒人女性の地位を高める」という意図を表明している。ここで、シスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別と性同一性が一致しており、その一致に従って生きる人のことである。

ブラック・ライブズ・マターは、キリスト教徒の信仰を攻撃することによって、米国を根底から破壊しようとする運動である。キリスト教徒は今や、信仰を守るための戦いに参加することを求められている。政府もメディアもプログレッシブに支配された今、米国のキリスト教徒は、極めて困難な状況に置かれている。その危機的な状況の中で、米国や南アフリカのカトリック教会の司祭たちが、勇気を持って声を上げ始めている。このことは、プログレッシブに支配された日本の教会に属するキリスト教徒にも勇気を与えるに違いない。


画像:南アフリカのウィルフリッド・フォックス・ネイピア枢機卿

[1] https://www.breitbart.com/national-security/2021/03/07/african-cardinal-affirmative-action-is-racial-discrimination-like-apartheid/

[2] https://www.breitbart.com/politics/2020/07/06/texas-bishop-calls-out-dangerous-black-lives-matter-movement/

いいなと思ったら応援しよう!

岩本龍弘
よろしかったら、サポートをお願いします。今後の活動に生かしていきたいと思います。