イスラエルのユダヤ人の遺跡を破壊するパレスチナ人の活動について
イスラエルの著名な保守派のジャーナリストであるキャロライン・グリックは先週末に、パレスチナ人による破壊活動に関する論説を投稿した。この論説は、聖書の古代史に関心のある人々にとって重要な内容を含んでいる。パレスチナ解放機構やパレスチナ自治政府は、イスラエルの地に残存するユダヤ人の歴史的な遺跡を破壊し、ユダヤ人の文化を横取りしてきた。以下では、このグリックの論説に基づいて、パレスチナ人がどのような仕方で、イスラエルの地に残存するユダヤ人の歴史的な遺跡を破壊し、ユダヤ人の文化を横取りしてきたかを明らかにしたい。
1980年代にエバル山の祭壇の発掘調査を行ったアダム・ゼルタル教授は、それが申命記27:1〜9とヨシュア記8:30〜35に記されたヨシュアの祭壇であることを突き止めた。パレスチナ自治政府は1月下旬に、この遺跡を取り囲む古代の壁を破壊する動画を投稿した。ゼルタル教授は元々は筋金入りの社会主義者だったが、彼自身の科学的な探究の結果として、申命記から列王記に至る聖書の記述が正確であったことを受け入れるに至ったそうだ。パレスチナ人は、その重要な遺跡を破壊することによって、歴史を書き換えようとしているのだ。
エバル山に位置するヨシュアの祭壇の遺跡を破壊しようとするパレスチナ人の取り組みは、イスラエルの地において数千年の歴史を持つユダヤ人居住地の物理的な記録を破壊しようとするパレスチナ自治政府の長年の取り組みの一断片を構成している。その取り組みは今や、サマリアにおけるユダヤ人の歴史の遺物を破壊することと横取りすることに集中している。
エバル山から谷に至る地域の一帯は、テル・サマリアと呼ばれている。この地域には、イスラエル北王国のオムリによって建設された首都サマリアの遺跡がある。オムリ王とアハブ王がここを支配していた。
ローマ時代には、ヘロデがこのテル・サマリアにセバスティアという都市を建設した。このセバスティア(セバステ) は、古代イスラエルにおける最も重要な都市のひとつになった。
2020年11月に、パレスチナ自治政府はセバスティアで式典を開催し、この式典の中で、ムハンマド・シュタイエ首相はそこを「パレスチナ人の遺産」であると宣言し、15メートルの旗ざおに大量のパレスチナ解放機構の旗を掲げた。
パレスチナ人は、「ユダヤ人の王」として知られるヘロデが、実際には「パレスチナの王」だったと主張している。このヘロデは、紀元前1世紀にエルサレムのユダヤ第二神殿の複合施設を拡張した。
パレスチナ自治政府はまた、近隣のテル・アロマの古代遺跡をも破壊している。このテル・アロマは、千年以上に渡ってユダヤ人居住地の中心だった。
イスラエルとの和平プロセスの枠組みの中で、パレスチナ解放機構は1994年にパレスチナ自治政府を設立した。それ以来、パレスチナ自治政府はユネスコのような国際組織の協力を得ながら、ユダヤ人の歴史的な遺跡を破壊し続けてきたのだ。
イスラエルは1994年に、エリコの都市の支配権をパレスチナ自治政府に譲り渡した。その直後に、当時のパレスチナ解放機構の指導者ヤセル・アラファトは、エリコのシナゴーグの古代遺跡を破壊することを命令した。
しかし、その破壊活動の標的の中心は、今日に至るまでずっと、エルサレムの神殿の丘である。パレスチナ自治政府は1999年に、古代の神殿の丘の地下空間を新しいモスクに変貌させるための大規模な改修プロジェクトを実行し、9千トンの古代遺物や残骸をその複合施設から取り除き、それらをエルサレムの周辺に投棄したのである。
動揺した考古学者たちは、それらの残骸を収集し、スコプス山に移送した。このスコプス山で、「神殿の丘の移転プロジェクト」(the Temple Mount Sifting Project) が発足した。20年以上の間に、ボランティアたちによって、何千もの古代遺物がごみの中から発見され、回収された。
昨年、パレスチナ自治政府はエリコの外側のハスモン朝の宮殿の中のハスモン朝の墓地を略奪し、2千年前の遺骨を散乱させた。
国際遺産の保存の責任を負う国連機関であるユネスコ(UNESCO) は、パレスチナ人の取り組みを支持し、ユダヤ人と神殿の丘とのつながりを否定し、ヘブロンのマクペラの洞穴とベツレヘムのラケルの墓をイスラム教の遺産であると宣言した。神殿の丘は、ユダヤ教の最も神聖な場所であり、ヘブロンのマクペラの洞穴は、聖書の族長たちと女族長たちが葬られた場所である。
パレスチナ解放機構とパレスチナ自治政府は、イスラエルがユダヤ人の国であると承認することに同意していない。パレスチナ解放機構が1964年にその指針を公開した時以来、パレスチナ人は、ユダヤ人がイスラエルの地においていかなる歴史も持たないという一貫した立場を保ち続けている。
言い換えると、歴史的な記録を完全に消去することは、イスラエルを破壊することを目的としたパレスチナ人の戦争の基本的な特徴なのである。イスラエルの地におけるユダヤ人の歴史を少しでも承認することは、ユダヤ人がイスラエルの地の先住民であるという否定できない真実を開示することにつながるからである。
アラファトの後継者のマフムド・アッバスは、これらの嘘によって暮らしを立てている。アッバスは、イスラエルの地にはパレスチナ人の5千年の歴史があると主張することによって、何千年の歴史を書き換えてきた。アッバスはエルサレムにユダヤ人の神殿があったことを否定しながら、エブス人の家系を主張することと、カナン人の家系を主張することの間で、行ったり来たりしている。
ゼルタル教授が発掘調査を行っていた時にサマリア地区評議会の会長を務めていたベニー・カツォベル氏は、長年の活動を通じてゼルタル教授の親しい友人になった。破壊された遺跡を訪れたイスラエルの軍人たちに向かって、カツォベルは次のように語った。「誰かがこのような仕方で国家の根源を破壊することを許す国はないだろう。我々ユダヤ人は、全人類にとって最も深く最も意義深い根源を、我々の土地に保有している。全世界が、この破壊を無視することによって、しかもマクペラの洞穴がパレスチナ人の遺跡であると主張することによって、これらのつながり(これらの遺跡とユダヤ人とのつながり) を否定しようとすることは、驚くに値しない。」
カツォベル氏の発言に対して、ゲルション・ハコーエン少将は、パレスチナ解放機構のアッバス・ザキが2009年のインタビューで語った言葉を引用することで応答した。2009年のインタビューの中で、パレスチナ解放機構のレバノン駐留大使であったアッバス・ザキは、「二国家解決」を要請するパレスチナ解放機構の本当の目的が、ユダヤ・サマリア地方からも、神殿の丘を含むエルサレムの北部、東部、南部からも撤退するよう、イスラエルに要請することにある、ということを明らかにした。
「二国家解決によって、イスラエルは崩壊することになる。なぜなら、もし彼らがエルサレムから出て行ったら、約束の地と選ばれた民について語られてきたことの全体はどうなるだろうか。そこから離れると言われた時、彼らが捧げた犠牲の全体はどうなるだろうか。彼らはエルサレムが霊的な地位を保有していると考えている。ユダヤ人はユダヤ・サマリア地方のことを彼ら自身の歴史的な夢だと考えている。もしユダヤ人がそれらの場所から離れることになれば、シオニストの理念は崩壊し始めるだろう。その理念は自発的に後退することになる。その時、我々は前進することになるのだ」とザキは語った。
言い換えると、イスラエルの地におけるユダヤ人の歴史を横取りするパレスチナ人の戦争の目的は、最終的にイスラエルを物理的に破壊するための条件を設定することにある。モーセの言葉によると、このイスラエルの地でユダヤ人は「あなたの神、主の国民」になった。イスラエルの破壊を目指す者たちにとって、イスラエルの地よりもふさわしい標的は他にないのだ。
画像:エルサレム旧市街、2020年12月(AHMAD GHARABLI/AFP via Getty Images)