vol.14 いかに店員と顧客をつなぐか
前回、「訪客」イベントについて語りましたが、直接販売を行わないディベロッパー社員にとって、テナントスタッフと顧客の関係をいかにデザインするかが何よりも大切になります。
最近では、コロナ感染防止のため、接客中の会話を制限する館も多いので、店員と顧客のコミュニケーションがとりにくい状況です。ただ、オンラインを使った対話は増えているので、事例を1つ紹介します。
オンラインで店員と顧客を結ぶ「STAFF START」
今、オンライン上でのコミュニケーションづくりで成功しているサービスといえば「STAFF START(スタッフ・スタート)」でしょう。企業と販売員と顧客のエンゲージメント向上アプリケーションで、販売員はコーディネート、シーン、商品のおすすめポイントのご提案など店頭での接客業務をデジタル上でも行うことができます。
●「STAFF START」とは
●店舗販売員がデジタル上で月8000万円売る時代 「スタッフスタート」を活用した売り方の一歩先(WWD/2020年6月26日)
これまでアパレル業界で800以上のブランドで活用されており、月額売り上げ最高約8000万円を記録する販売スタッフも出たそうです(驚!)。事前に売れるかどうかを販売員が予想する“目利き”機能があったり、デジタルだからこそできることが満載。
すでに貴館のテナントでも一部導入している会社さんもあるかもしれませんが、ナショナルチェーンならまだしも、小さな企業は存在すら知らないというところがほとんどでしょう。
「STAFF START」に限らず、このような情報をテナント各社と共有したり、導入が金銭面的に難しいテナントさんには、コロナの特効薬が出るとされる年内(ホント?)までは導入への支援金を出すなど、販促費などを新たな形で転用することも必要なのではないでしょうか。
「情報小売業」として、すべきこと
以前、小売業は「情報小売業」になることが求められているということを記事にしました。
今はモノではなく「情報」が売れている時代であること、そして、顧客ニーズ(情報)をつかみ、品揃えや接客、宣伝・広報に活かしていくということの大切さを語りました。
私が勤めている株式会社ジャパンライフデザインシステムズでは、この「情報」を売りに、40年以上クライアントからの信頼を獲得してきました。当社では「生活者研究」と題して、小売業の皆さまに、2つのプログラムをオススメしています。
1つは、「IMAGINAS(イマジナス)」というウィークリーで行う時流研究(生活者/ライフスタイル研究)です。
当社代表でありマーケティング・コンサルトの谷口正和と毎週、新聞や雑誌などさまざまなメディアから、トピックスを集め、分析・考察を加え、3つのキーワードに集約。解説文と事例も盛り込み、各クライアント企業にレポートを届けています。
毎週、上記のレポート(画像参照)が届いて、年会費たったの5万円。もともと我々の勉強のためにやっているので、これで商売するという風には考えていません。
当然、テナント各社にも情報を共有し、販促や接客、品揃えのヒントに使っていただいています。
また、各ショッピングセンターで課題や展望は異なるので、ミクロに顧客ニーズを拾い上げるもう1つのプログラムが「インタビュー100」です。こちらは、館内にいらっしゃる100人のお客さまにヒアリング調査(インタビュー調査)をします。
この2つのマーケティングプログラムで、顧客のインサイトが相当見える化できます。
顧客調査というと、各社数百万、時には1,000万近くかけて調査しますが、当社のインタビュー調査はとてもお値頃価格です(笑)。もともと「IMAGINAS」でマクロ的な生活者ニーズは掴んでいるので、ミクロに見直すだけで済みますから、ライトに実施できているのです。
クライアントによっては半期に一度、実施してくださっており、もちろん、ここで上がった情報も、店長会などで私たちから発表させていただき、共有しています。これにより、館全体として「One Team」になり、同じ方向を向くことができているのです。
ユニクロさんは「情報製造小売業」という言い方で自社を経営していますが、各SC関係者の皆さまも「情報小売業」への認識を深めていただき、よりテナントスタッフさんが売上を上げられる環境づくりを築いていっていただけると良いでしょう。