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対話は共に未来をつくるための手段

先日「ひとが育つまち益田フォーラム」がありました。
毎年この時期になると「人は人によって人となる」を再確認します。

みなさんは「対話」という言葉から何をイメージしますか?

ひとづくり(教育/学校)でも、まちづくり(地域)でも使われる言葉ですが、どうやら人によって微妙に認識が違うようで、3つの文脈に分けられる気がしています。ずっと下書きにあってうまく言葉にならない所もありますが、私なりに整理してみました。


● 対話とは…
直接に向かい合って互いに話をすること。また、その話
広義には2人以上の人物間の思考の交流をいい、広く文学的表現法として用いられるが、特に哲学では問答によって哲学的主題を追究していく形式

コトバンク

益田市がやっている「対話」によるひとづくりやまちづくり(≒未来づくり)は、
①態度を耕して
②深い内容で繋がり
③未来を共に創る
このプロセスを小さくたくさん営まれているのだと思います。

その結果、「共に」「未来を」「つくる」ための「手段」のひとつとしての「対話」だと思います。

様々な場面での、対話の事例を紹介します。

①向き合おうとする態度(being/主体的)

1-1.ライフキャリア

家庭・仕事・趣味・伝統芸能・地域活動の時間といった「暮らしの多様性」と、 それらの時間の中で「何を大切にしたいか」、「何をやりがいに感じるか」といった、自分なりの「幸せのものさし」を元に、豊かな暮らしをデザインしていくことが、「ライフキャリア」という考え方です。

ユタラボより

1-2.新職場体験

ライフキャリア教育の事業です。
生徒は職業について深めると同時に働く人の思いや願い、生き方に触れて「自分はどう生きたいか?」を考える機会になります。
学びに向かう力や人間性・態度に重きを置いているのがポイントだと思います。

1-3.ないならつくる

「田舎にはなにもない」と言うけれど「ないならつくろう」という精神・態度。
面白がり生み出すジェネレーター的なスタンス。

②深い内容で繋がる(having/対話的)

2-1.益田版カタリ場

カタリ場では人生について講演ではなく対話します。
過去の深い話や悩み、楽しみ・ワクワクしてること等を色々話します。
授業として自分と向き合う機会があるのはいいことだと思います。

2-2.トークフォークダンス

対話の手段の一つであるトークフォークダンス。
基本的には様々な問い・テーマについて1分ずつ話します。
初めましての方を知る上で、いきなり深い問いを話す相手として出会えるので不思議だけど嬉しいことです。
今回のフォーラムでもあった山口覚さん流のグランドルールは7つ。

1.私たちと思う
2.耳を澄ませて聴く
3.答えではなく思っていることを話す
4.評価をしない
5.同意を求めない
6.話を奪わない
7.待つ

山口覚さんより

2-3.総合的な学習の時間

小学校6年生の「町の幸福論」の単元では、地域の人と対話をしてプロジェクトを進めていくことが多いです。
特にチームの方向性があり、ブラシュアップしていく過程でその内容について詳しい人と子どもが話す時は、内容を深めて繋がるタイプの対話です。

2-4.哲学対話

答えのない問いやテーマについて哲学的に対話をして深めます。
特徴は自己紹介をしなくても成り立つ場であること。誰が言うかより何を言うかという雰囲気があるように思います。
答えのないものなので、納得のいく解にたどり着かず余計モヤモヤすることもあります。一方で納得解にたどり着くとスッキリすることができ、レベルアップした感覚になります。

2-5.手段

私は「対話(が目的)の場」に行く時に違和感を持つことがありました。
その場にいることが目的とも取れて、その場にいれば何を話してもOKで、何を話さなくてもOKな感じ。
「対話が目的」と言われるとなんだか本気になれないというか、なんのために対話をするのか分かりにくいことが多いです。
対話の形式としての場は、「個人間の関係性を深める場合」にはいいと思いますが、「未来をつくる」文脈にするには、あくまでも対話は未来をつくるための"手段"であることを忘れてはならないと思います。あくまでも形式です。
その対話の場をきっかけに、「次はどうする?」と具体的な行動の作戦会議に進むことが大切だと思います。

2-6.スキル

対話はスキルである。

1.笑顔
2.「はひふへほ」でリアクション
3.質問

「いいじゃん」と受け入れることで否定しないクセがつき、安心安全な関係・場だから「やりたい」が出てきます。
そのためには対話の練習の場が必要で、慣れて身に染みると対話の経験者みたいな人が出てきます。
そしてファシリテーターは、「私なんて」と謙虚な人をも上手に変換します。

③未来を共に創る営み(doing/深い学び)

3-1.自然なことすぎて対話アレルギー反応の人もいる

(社会)教育関係の世界ではなんなく使っていますが、一般市民の地域の文脈では意図的な対話に違和感を持つ人もいます。
↑で対話の場へのアンチテーゼを述べましたが、かくいう私も対話の場に地域の人を誘うと「何を喋らされるのか分からなくて不安」という反応をもらったことがありました。頑張らないといけないと思うのでしょう。

ある日、お店でのおばちゃんたちの会話に耳を澄ましてみると、「最近どうよ」と①対話的な態度で、あーだこーだ②深い内容を、「じゃあ次こうしようよ」と③明日(未来)を一緒に創っている場面に遭遇しました。
市民が日常的にしているおしゃべりは、対話的と言えるのではないでしょうか?

3-2. 対話によるまちづくり

一方で対話が必要な場面があります。
何かがうまくいっていない時や何か変化をさせたい時、現状への不満感がある時、特にまちづくりの文脈においては①②③どれも大事です。
向き合って、深い話をし、次を考え、行動する。

未来社会の創造に「対話」が果たす役割

この図で言えば、一人ひとりが未来に向かって話し合うことです。
そして、全体が未来に向かって話し合い、未来を共創するには(多数決だけではない)合意形成のひとつとしての対話のスキルも必要です。
立場や意見の違う人たちによる本質的な議論でAの意見とBの意見が出て、そこからCをつくることこそ対話の美しさだと思います。

①向き合おうとする態度+②深い内容で繋がる=③未来を共に創る営み

人は人によって人となる

益田フォーラム2024のテーマは「主体性」「育ち」でした。
前夜祭では「育ちの要因は?」と問いを投げたところ、様々な「○○のおかげ」という回答がありました。
私たちは誰か・何かのおかげで育っていて、私らしさは環境(ひと・もの・こと)のおかげなんだと再確認しました。特に”ひと”のおかげで成長できたと答える人が多かったようです。
日常のおしゃべりも、意図的な対話も、他者の存在のおかげで自分がつくられていて、強くあれるのだと思います。

さらに、近所のおじ様たちと話していると「あなたのおかげなんよ」と口癖のように感謝を伝え合い、握手をしています。それを私たちは「おかげ握手」と呼んでいます。
益田フォーラムでは、お世話になってる方々への感謝が思い出される機会になって、「あの人のおかげで私はこうなれたなぁ」と実感します。それはまさに、「人は人によって人となる」のだと思っています。

来年の益田フォーラムは8月に変更されるようです。
全国の皆さん、またお会いしましょう!

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