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壊れる〔本科第6回課題〕

本科のシナリオ課題はこれで6つめ。
11月も、10月に続き4本書きたかったのですが、2本で終わりになりそうです。残念。
12月は3本は書きたいです。がんばろう。


タイトルって、私はお話を全部書いたあと一番最後につけることが多いのですが、文章にしても映像にしても観る人が一番最初に目にする情報ですよね。
言ってしまえば一番最初のネタバレ。
作品のテーマを持ってくるとか、全体を表してみるとか、セリフの一節を入れてみるとか、作品を彩るやり方は色々あるんだろうなと。
自由度が高いがゆえ、結構大事ですね、タイトル。


第6回の課題は「時計」
映画の劇中で使われる時計は、たとえば2度、3度ほど感覚を開けずに写して、時間の進みを表したりしますよね。
今回は、登場人物にとってもっと意味を持ったものにできないかなと思って、時計の機能的な側面はあまり描かずに、劇中に数個出してみました。


添削前のシナリオを全文掲載をしていますが、掲載している全ての作品において著作権は放棄していません。
引用される場合は引用元を明記(こちらのページ、もしくはツイッターなど)してください。
「映像化したい」と思われた方(ありがとうございます)はご連絡ください。



よりどころ

人物
堅木進(22)(27)会社員
牧原尚人(25)堅木の同僚
只野香里(28)堅木の同僚
風間明恵(40)堅木の同僚
星川雅弘(52)堅木の上司
和田慶次(22)(27)堅木の同期
中村莉乃(22)(27))堅木の同期
清水裕二(55)時計屋店主


○堅木家・寝室(早朝)
ベッドで寝ている堅木進(27)。
ベッド横には写真立て。リクルートスーツ姿の堅木進(22)、和田慶次(22)、中村莉乃(22)の3人が肩を組んで写っている。写真の堅木の頭はぼさぼさ。
写真立ての横に銀色の腕時計。時刻は4時59分。秒針の音。秒針が59秒を指す。
目を開ける堅木。起き上がる。

○駅・ホーム(朝)
混雑したホーム。
髪をぴっちりと固め、スーツ姿で立っている堅木。
堅木、腕時計を見る。
秒針の音。7時ちょうど。
電車がホームに滑り込む。
堅木が腕を下すと、腕時計が落ちる。
腕時計を拾う堅木。
堅木「金具が緩くなっちゃったのかな…」
堅木、腕時計を胸ポケットにしまう。

○角馬商事・総務部(夕方)
堅木、牧原尚人(25)、只野香里(28)、風間明恵(40)、星川雅弘(52)を含めた総務部の人々が各自仕事をしている。
香里が堅木の所へ来る。
香里「堅木さん、今朝言っていた書類なんですけど」
堅木「ああ、それならまとめておきました」
香里「早いですね!ありがとうございます」
席に戻る香里。
秒針の音。壁の時計が5時になる。
堅木がノートパソコンを閉じ、立ち上がる。
牧原「あっ、皆さん、今日只野さんの育休復帰の歓迎会でさざんか予約してますんで。18時半です。お忘れなく」
全員「はーい」
堅木、座る。

○居酒屋さざんか・店内(夜)
テーブルを囲んでいる総務部の人々。
堅木、ポケットの腕時計を取り出す。
時計は11時を指している。
堅木「あ、11時なので失礼します。終電が」
香里「えっ」
牧原「もうそんな時間ですか?」
牧原と香里がスマホを見る。
香里「あれ、11時半過ぎてます!旦那に怒られちゃう、私失礼しますね」
堅木「え?」
牧原「堅木さんの時計、止まってませんか?」
堅木、腕時計を見る。
11時ぴったりで止まっている腕時計。

○角馬商事・総務部(朝)
堅木以外の総務部全員が仕事をしている。堅木の席は空席。
堅木、ぼさぼさ頭で走って入って来る。
堅木「すみません、遅れました!」
星川「堅木くんが寝坊とは珍しいな。まあたまには、な!」
堅木、ペコペコと頭を下げながら自席へ向かう。途中、転ぶ。
明恵「大丈夫?」
堅木「あ、なんとか。ありがとう母さん」
総務部全員が堅木を見る。
明恵「やだわあ。堅木くんほど大きい息子持った覚えないわよ」
堅木、慌てて
堅木「あ、今、僕、あー、えっと、本当すみません…」
総務部全員がくすくすと笑う。
堅木、苦笑いしながら自席に向かう。
星川「来て早速で悪いけど堅木くん、これ頼むよ。午後イチの会議で使いたいから、急ぎでな」
堅木「あ、はい」
星川から書類を受け取り、座る堅木。
腕時計をポケットから出し、机に置く。
牧原「あ、時計どうでした?直りました?」
堅木「やっぱり壊れてるみたい。昼休みに修理持って行こうと思って」

○角馬商事・1階エントランス
エレベーターを降りて歩いている堅木。
和田慶次(27)が追いかけてくる。
和田「おい、進!」
堅木「慶次。久しぶり」
和田「なんだよその頭、1年目の研修以来じゃん。メシどこ行くの?」
堅木「あー、メシの前に、腕時計壊れちゃってさ、修理持ってこうと思って」
和田「おまえまだ使ってたのかよ。物持ちいいなホント。俺2年前かな、壊れちゃって」
和田、腕につけている白い腕時計を見せる。
堅木、ポケットに腕時計をしまう。
和田「あ、今晩、莉乃の結婚祝い忘れんなよ。いつもの店だから」
堅木「うん」
小走りで去って行く和田。

○時計屋・店内
清水裕二(55)が堅木の腕時計を見ている。
堅木がそれをのぞき込む。
清水「うーん、歯車がひしゃげちゃってるね。落とした?」
堅木「あ、今朝、駅で」
清水「それだな。このメーカー、日本は取引が終わっちゃってんだよ。探してみるけど、ちょっとうちじゃ無理かもなあ」
堅木「…そうですか」

○角馬商事・総務部
堅木がトボトボと入って来る。
星川「堅木くん、今朝頼んどいた資料は?」
堅木、顔を上げる。
堅木「資料…?あ!忘れてました…今すぐやります」
星川「なんだ出来てないのか。もう良いよ。急ぎって言ったじゃないか」
星川、堅木のデスクの上にあった書類を取り、早足で出て行く。
堅木「…すみません」
堅木、トボトボと席につく。
明恵「堅木くん、体調悪い?いつもならお昼前に仕上げちゃってるじゃない」
香里「昨日遅くまで盛り上がっちゃいましたもんね」
堅木、苦笑いしながら
堅木「寝不足かもしれないですね。ご迷惑おかけしてすみません」
堅木、ノートパソコンを開いて作業を始める。
心配そうに見る明恵、香里、牧原。

○居酒屋たきび・店内(夜)
和田と中村莉乃(27)が席についている。
堅木、入って来る。莉乃が気付く。
莉乃「進、こっち!てか何その頭。久しぶりに見た!」
堅木「あ、今日、寝坊しちゃって…」
堅木、苦笑いで席につく。
莉乃「なに、進元気ないじゃん。今日私のお祝いでしょ?もっと明るくできないの?」
和田「もしかして、彼女に振られた?そんなヤワな奴じゃねーじゃん」
黙り込む堅木。
莉乃「…本当にどうしたの?」
堅木「…同期お揃いで買った腕時計がさ、壊れちゃって。頼まれた仕事忘れたり、前の席の人の事お母さんって呼んじゃったり…今日最悪なんだ」
和田と莉乃、顔を見合わせ、笑いだす。
堅木「…笑うことねーじゃん」
和田「ごめんごめん。それさ、おまえが1年目の頃やってた事ばっかじゃんって思って」
莉乃「そうそう、懐かしくなっちゃって」
堅木「そうだっけ…?」
莉乃「変わんないなあ。よくこうやって毎週愚痴ってたよね」
和田「最初は愚痴なのに、毎回いつの間にか笑い話になってたけどな」
堅木もつられて笑う。
莉乃、突然泣き出す。
堅木「え、莉乃、どうしたの?」
莉乃「…あたし、結婚したら旦那についてアメリカ行きで、会社辞めるの。なんか寂しくなっちゃって」
和田「え?あ…そうなんだ」
堅木「そっか。向こうでもがんばれよ」
莉乃「と、言うわけで」
笑顔を作る莉乃。紙袋を出す。
莉乃「まだ早いけど、私から皆にお別れの品。またお揃いだけど、ちょっと奮発したから部屋の一番いい所に置いてね」
和田「えー、まじかよ。今日莉乃のお祝いじゃん」
莉乃「いいのいいの。同期の2人には、すっごくお世話になったから!」
泣き出す和田。
莉乃「なんで慶次が泣いてんの!」
堅木も泣き出す。
莉乃「えー!今日はお祝いでしょ!」
堅木「…ありがと。ありがとう」

○堅木家・寝室(早朝)
ベッドで寝ている堅木。
堅木、目を開ける。起き上がり、ベッド横を見る。
堅木、部屋を出て行く。
ベッド横にある写真立て、止まった腕時計。
その横に小さな立て時計。時計は5時を指している。立て時計には、堅木、和田、莉乃が写ったインスタントカメラの写真がセロテープで貼ってある。


おしまい

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