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人類はどこから来てどこに向かう?:マルサスの警告、そしてその後の逆転劇

人類の未来と幸福マルサスの警告、そしてその後の逆転劇:

1. マルサスの主張と歴史的インパクト

18世紀末、イギリスの経済学者トマス・マルサスは、「人口論」において重要な理論を提示しました。彼の主張は次のようなものでした:

人口は指数的に増加するが、食料生産は算術的にしか増加しないため、最終的には人口が食料供給を圧迫し、飢餓や貧困が避けられない。」

この理論は、人口増加がもたらす社会的な危機を警告し、特に19世紀の経済学に強い影響を与えました。彼の理論は、食料の生産が限界を迎え、「自然の調整」としての飢餓や疫病が必然的に発生すると予測していました。

その後、この考え方はローマクラブの1972年の報告書「成長の限界(The Limits to Growth)」にも反映されました。ローマクラブは、経済成長が地球の資源を限界まで使い尽くし、人口増加が持続可能性を脅かすという警鐘を鳴らしました。この報告書は環境問題に対する国際的な注目を集め、1972年のストックホルム会議で環境保護の重要性が広く認識されました。

2. ただ、彼の主張は良い意味で裏切られた

しかし、マルサスが予見できなかったのは、その後の技術革新による農業の飛躍的な進展です。緑の革命に代表されるように、遺伝子改良や化学肥料、灌漑技術の進化によって、農業生産性が大幅に向上しました。この結果、食料生産は人口増加を上回るペースで伸び続けています。

下記のチャートは、過去100年間および今後の予測に基づく、人口増加と農作物生産の増加を比較したものです。



青、世界人口、緑、農業生産(1920年を100とする)

ここからも分かるように、農作物生産の増加率は人口増加率を大きく上回っており(今後も上回る可能性大)、食料供給が人口圧力に対抗できる状況が続いています。結果として、マルサスの予測は良い意味で裏切られ、技術進歩によって飢餓や貧困の未来は大きく緩和されました。

3. 今後も人口の伸びより農作物生産の伸びが大きい可能性

国際機関の予測に基づくと、人口増加率と農作物生産増加率には以下のような違いがあります。具体的には、国連とFAO(国連食糧農業機関)のデータをもとに比較します。

1. 人口増加率(国連予測)

- 年率:約1.0%(2020年〜2050年)
- 世界人口は2020年の約78億人から、2050年には約97億人に達すると予想されていますが、人口増加率は次第に減少傾向にあります。

2. 農作物生産増加率(FAO予測)
- 年率:約1.5%(2020年〜2050年)
- FAOの予測によると、農作物の生産量は技術進歩や農業効率化により、年率約1.5%のペースで増加するとされています。特に、技術革新による収穫量の向上が主な要因です。

シンプルな比較
-
人口増加率:1.0%
- 農作物生産増加率:1.5%

現時点では、農作物の生産は人口増加よりも高いペースで拡大すると予想されています。ただし、これは技術革新やインフラ整備が順調に進んだ場合の予測であり、気候変動や社会的な不安定さが影響する場合には変動がある可能性も考えられます。

4. だが、問題がないわけでは無い

しかしながら、問題は生産だけでは解決しません。マルサスの懸念とは異なり、現代の飢餓問題は主に分配の不均衡に起因しています。生産は増加していても、紛争地やインフラが未整備な地域では、食料へのアクセスが困難であることが依然として大きな問題です。

さらに、気候変動が農業に与える悪影響も無視できません。気象パターンの変化により、特に低緯度の地域では収穫量が減少し、飢餓リスクが高まる可能性があります。技術的な進展によって食料生産が改善されても、これらの問題が存在する限り、飢餓は完全には解消されないでしょう。

5. 人類は何故不幸だと感じるのか?

マルサスの理論や飢餓問題から派生する根本的な問いとして、なぜ人類は不幸を感じるのか?という問題が浮かび上がります。飢餓や貧困が解消される道筋が見えても、心理的な幸福感は別の要素に左右されます。経済的な豊かさや技術の進歩だけでは、必ずしも幸福感が増加するわけではないことが多くの研究で示されています。

  • 相対的な貧困ソーシャルメディアの台頭で、比較対象が圧倒的に増えた。従来は身近なコミュニティに限定されていた「比較対象」が数百万人いや、数億人となったことの副作用。自分が他者と比較して「不足している」と感じることが、不幸感を生む要因の一つ。人間はそもそもソーシャルな存在なので、比較感からは逃れられないし、逃れる必要も無いが、うまく付き合わないといけない

  • 意味、パーパスの欠如:現代人はローマ皇帝よりも栄養状態が良いとの説もあるくらい栄養的には圧倒的に充足しているはずなのに、満たされない。生活における目的意識の欠如や、自己実現の不足も、人々が不幸と感じる要因

  • 環境の不安定さ:気候変動や経済的不安が、人々の将来に対する安心感を奪い、不幸感を強めています。

人類は、物質的な飢餓や貧困を克服するだけでなく、心の平穏社会的つながりを求め続けています。未来を見据える際には、物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさをも追求する必要があるでしょう。


結論

マルサスの警告は、過去においては非常に重要なものでしたが、現代においては技術革新によって飢餓は大幅に緩和されています。しかし、分配の不均衡や環境問題、そして人々の幸福感の追求という新たな課題が浮上しており、これらに対処するための新しい視点が求められています。

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