無能な解説者は淘汰される未来?AIチャットボットによる「パーソナルコメンテーター」が登場【メディア】
※この記事は2018年4月30日執筆記事を再掲したものとなります
AI(人工知能)という単語が語られるとき、必ずと言っていいほど付いて回るのが「機械は人間に置き換わるのか」という議論だろう。そしてこの論争は、スポーツブロードキャスティングの領域をも飲み込み始めている。
北京に本拠地を置くAIテクノロジーカンパニー「Cubee Technology」が、AIを搭載した世界初のサッカーチャットボット「AIBALL」を公開した。
AIBALLは、自然言語処理(NLP)と深層学習(ディープラーニング)により、サッカーファンの質問に答え、学習しながら成長するAIチャットボットである。iOSまたはAndroidのアプリで取得可能であり、現状は主に競技ルールや統計データ、選手の逸話などを紹介する。ユーザーの質問に応じて、選手・チームの情報や試合データ、ソーシャルメディア上の最新ニュース、過去の試合・イベントなどの情報ソースにアクセスし、音声、画像、記事、動画、アニメーション、チャートなど多岐にわたるフォーマットにてユーザーにフィードバックする。
AIBALLが優れているのは、自然言語処理や深層学習などのAI技術により、ユーザーの行動やロジックを学習する点である。ユーザーの好みのチームや選手を時間をかけて記憶することで、よりパーソナライズされた情報を提供することが可能になる。AIBALLの将来性を見込み、すでに中国の大手モバイル企業「シャオミ」や、中国のスマートスピーカー大手「Dingdong」らがパートナーシップを結んでおり、これら企業のプラットフォームを通じたサービス展開が見込まれる。例えば、スマートスピーカーの音声認識技術と合わされば、ユーザーが声で質問できる、まさにユーザー個々人の「パーソナルコメンテーター」として機能する未来も想像に難くない。
国際化・情報化が進み、サッカーファンの知識や需要がより洗練されていく中、従来の「1人のコメンテーターvs複数の視聴者」という構図は成り立たなくなりつつある。実際に、日本のサッカーファンの中にも、元日本代表という肩書きを持った解説者のコメントに対して、深い敬意を持って耳を傾ける者もいれば、自身よりも知識レベルが低いとこき下ろし、その言説を批判する者もいるだろう。AIチャットボットが、完全にTVのコメンテーターに置き換わる未来はまだ遠いのかもしれないが、個々の情報ニーズに寄り添うことができるこのデジタルコメンテーターが、彼らのジョブオポチュニティを徐々に侵食していく可能性は低くくはないだろう。
サッカー日本代表監督ヴァイッド・ハリルホジッチの解任騒動により、一部コアファンと一部解説者との溝が深まりつつあるが、既存権益のぬるま湯に浸る彼らが機械によって淘汰され、実力のある者のみが生き残る正当競争の世界の誕生は、ファンの見る目が上がりつつある日本サッカー界においては、実現が望まれる未来なのかもしれない。