ポルトガルのプロサッカーチームが「シートデリバリー」を開始。日本でも導入進む【スタジアム】
※この記事は2018年2月12日執筆記事を再掲したものとなります
サッカーポルトガルリーグ「リーガ・ノス」に所属する世界的な強豪クラブ「FCポルト」が、ホームスタジアムである「エスタディオ・ド・ドラゴン」で、シートデリバリーサービスを開始したことを発表した。
FCポルトが開始したシートデリバリーサービスは、 スマートフォンアプリ「O FC Porto Seat Delivery」をダウンロードした観客が、スタジアムの飲食およびグッズをアプリ上で購入すると各自の席まで配達される仕組み。決済は、PayPalかクレジット/デビットカードにより行われる。サービスは段階的に導入されており、飲食とグッズの配達に対応している座席ゾーンもあれば、グッズだけに対応しているゾーン、または、配達が未対応のゾーンもあるようだ。
なお、シートデリバリーサービスは、FCポルトのデジタルトランスフォーメーションを担当するテクノロジーエージェンシー「7EGEND」と、エスタディオ・ド・ドラゴンの飲食サービスを担当する「Gertal」のパートナー2社により導入された。
シートデリバリーは、Wi-Fiなどインターネットインフラが整備された「スマートスタジアム」には欠かせない構成要素のひとつ。すでに欧米では先進的に導入が進められている。
例えば、スマートスタジアムの先進事例として有名なアメフトの名門「サンフランシスコ49ers」のホームスタジアム「リーバイス・スタジアム」でも、スマートフォンアプリによる飲食・グッズの配達は導入されており、これらに加えて、アプリ内での駐車料金の支払いにも対応している。
本領域は主に欧米が進んでいる分野であるが、日本でも徐々に同様の取り組みが行われ始めている。
例えば、ラグビークラブの「ヒト・コミュニケーションズサンウルブズ」がホームスタジアムである「秩父宮ラグビー場」のスマートスタジアム化に着手。2017年より一部座席においてWi-Fiネットワークを提供し、飲食注文等の新たな試みを実験的に開始することを発表している。
また、NTTグループを親会社に持つサッカーJ2リーグの大宮アルディージャも、日本のスマートスタジアムの先進事例として有名な「NACK5スタジアム」において、VIP向けサービスとして2016年より専用タブレットを使用したフードデリバリーサービスを提供している。こちらは、サポーターからの評判も高く、指定席への展開も視野に入れられているようだ。
日本でも、それぞれの競技においてスマートスタジアム化が進むにつれ、いずれはアプリを活用した座席への飲食・グッズなどの配達が標準的なサービスになり得るだろう。例えば、サッカーのように、ハーフタイムの約10-15分ほどしか目を離す隙がない競技では、特定の時間帯に観客が押し寄せ、飲食の窓口が過度に行列化するなど、顧客満足度上の課題が散見されている。当然、個々の観客に飲食を配達するのだから、人件費やさらなる調理施設への投資費用など、導入に向けた障壁は一定存在する。しかし、観客のスタジアムエクスペリエンスを改善し、快適な観戦環境を提供することは、リピーター増加や顧客リテンションに関わる重要な施策であることは間違いない。観客が飲食の購入に数十分も待機するような、観客・クラブ両者にとっての損失が、フードデリバリーサービスにより低減する未来を期待したい。