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「自動運転」がスポーツクラブにもたらす影響・未来を予想する

本マガジンでは、テクノロジーの進化がスポーツクラブにもたらす影響、その未来図を予想していきます。一見するとスポーツクラブには直接的な関係がなさそうな技術でも、その機能を抽象化し、スポーツクラブへの影響として再度具体化させると、様々な影響をもたらすことが見えてきます。

今回のテーマは「自動運転技術」です。

テクノロジーの基礎知識

まず「自動運転」とは、どのような技術を指すのでしょうか。用語の定義から明確にしていきます。

日本では、米国の非営利団体「SAE International」が提唱する定義が採用されています。SAEは、自動運転を技術の高度に応じてレベル0〜5までの6段階に分けており、レベル3〜5までを「自動運転」としています。なお、レベル1〜2の車両は、自動運転ではなく「運転支援」と定義されます。

※SAE...Society of Automotive Engineers

■レベル0
ドライバーが全ての運転操作を実施
(ドライバーへの警告技術は本レベルに含む)

■レベル1 (運転支援)
システムがステアリング操作、または、加減速のどちらかを支援

■レベル2 (運転支援)
システムがステアリング操作、および、加減速の両方を支援

■レベル3
特定の場所でシステムが全ての運転操作を行い、緊急時はドライバーが運転操作を実施
(特定の場所:高速道路など)

■レベル4
特定の場所で、緊急時の操作を含む全ての運転操作をシステムが実施

■レベル5
場所の限定がなく、システムが全ての運転操作を実施

日本では、2020年4月にレベル3車両による公道の走行が認可されました。「高速道路の同一車線で、時速60km以内で走行していること」「不具合などによりレベル3運転が走行可能な条件を逸脱した場合には、いつでも運転を代われること」などの条項がつく中、自動運転車による走行が許容されます。

ようやくレベル3の自動運転車が市販されようという段階の中で、車両にアクセルやハンドルがなくドライバーすらも不要となる、いわゆる「完全自動化」を意味するレベル5の実用化は、まだまだ遠い未来のように思われます。それでも、本記事では、自動運転がスポーツクラブに与える影響の最大値を見込むためにも、レベル5の自動運転が実現した世界を想定していきます。

自動運転技術 参考出所


テクノロジーが果たす機能の抽象化

自動運転=「車が自動で走る」

この具体的な機能だけを見ていても、スポーツクラブに与える影響を広く予想することはできません。適用可能性を広げるためにも、一度、自動運転が持つ機能を下記2点に抽象化します。

①四輪車によるモビリティの自動化
②プライベートモビリティ空間の自由化

①四輪車によるモビリティの自動化

自家用車に限らず、バスやタクシーなどあらゆる四輪車が、ドライバーを介さずに自動走行します。

②プライベートモビリティ空間の自由化

モビリティを下記2つの定義に基づき分類します。

■パブリックモビリティ:搭乗主体≠運転手(タクシー、バス)
■プライベートモビリティ:搭乗主体=運転手(自家用車)

タクシーやバスなどの「パブリックモビリティ」においては、搭乗主体は運転手ではないため、スクリーンやスマートフォンで動画を見ても、イヤホンを付けて音楽を聴いても、公共の福祉の範囲内においては何をしても問題ありません。一方で、自家用車のような搭乗主体=運転手となる「プライベートモビリティ」では、搭乗主体に上記のような行動の自由はありません。

しかし、完全自動運転が実現した場合、運転手=機械へと代替されるため、プライベートモビリティにおいても、搭乗者≠運転手が成立します。したがって、搭乗主体の行動制限がなくなり、モビリティ空間での行動が自由化されます。

テクノロジーがスポーツクラブにもたらす影響

前段で抽象化したテクノロジーの機能を、スポーツクラブへの影響の観点から再度具体化していきます。本テクノロジーがスポーツクラブをどのように変容させるのか、具体的に妄想していきます。

①四輪車によるモビリティの自動化

本機能によって、スポーツクラブの特定領域における無人化・業務効率化、及び、ファンに提供するエクスペリエンスの高度化が見込まれます。

無人化・業務効率化は、当然「運搬」に関する業務において進むでしょう。本業務に携わるドライバーの仕事は取って代わられる可能性が高いと考えます。被雇用者にとっては代替の脅威になりますが、雇用者であるクラブにとっては経費の削減、業務の標準化・効率化を意味します。

■試合日における設備・備品運搬の無人化、設営作業の効率化
■選手が利用する用具(ユニフォーム、スパイク、飲料など)を運搬する用具車の無人化

また、現状はオフィシャルショップやスタジアムブースがメインの販売場所となっているグッズのリアル販売も、その形式を変容させるでしょう。欧米で実用化が進みつつあるAmazon Goのような無人店舗や、Robomartのような無人ワゴン販売車といった技術と組み合わさることで、街中を無人グッズ販売車が走行する未来も想像できます。

■自動運転車による無人移動型グッズ販売店舗の稼働

最後に、上記の無人グッズ販売車もファンエクスペリエンス高度化の一種ですが、他にも、シャトルバスの無人化によって、下記のようなファンへの価値提供、及び、スポーツクラブの新たな収益機会も見込まれるでしょう。

■駅〜スタジアム間の自動運転シャトルバスの運行
■同シャトルバスの広告枠販売(バス外観・内装への広告掲載、バス内部での宣伝上映など)

②プライベートモビリティ空間の自由化

ポイントは前述の通り、従来は運転手として行動が制限されていた搭乗主体が、移動車内で自由な行動を取ることができる点です。

搭乗主体=ファンを想定するのであれば、当然、スポーツクラブはメディアコンテンツの充足を図る必要があるでしょう。多くの人がライブ映像を自動運転車内で視聴する未来も想像に難くありません。

■自動自動車内での動画視聴機会の増加、それに伴う、コンテンツ拡大・リッチ化の必要性の増大

搭乗主体=選手、または、監督・コーチを想定するのであれば、これまでクラブハウスで行われていた作業が、モビリティ空間に移行することも考えられます。

■自動運転車内での監督・コーチによるミーティング機会の増加、それに伴う設備拡充の必要性の増大

■選手の通勤車内でのコンディションケア機会の増加、それを実現する車内パーソナルトレーナーの登場

これらはあくまで本テクノロジーがスポーツクラブにもたらし得る未来を妄想したものです。果たして本当に、このニューテクノロジーによって上記のような世界感が実現するのか。答え合わせの結果は、数年後・数十年後まで気長に待つこととします。

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