まだ誰も見たことのない世界
タンザニアでの撮影は、早朝と夜間の2部構成、3日目からは早朝5:30出発で進んでいます(なぜなら間に合わないから!)。
今回の写真集はテーマが夜なので、撮影時間は夕暮れ時から早朝までと決まっています。
この様子はインスタグラムでも見ていただけます。
朝の狙いとしては、朝陽バックのライオンです。
前日の夜に撮っていた、ライオン家族を探すため、熱を感知するサーマルドローンを飛ばして周辺をくまなく探します。
数頭の動物の群れを発見したので車で向かいます。はげしいブッシュで目視が困難なため、通常のドローン(Mavic 3)を飛ばし、カメラでの確認を試みますが、発見に至らず。
朝陽の風景写真を収めて帰ろうとした時、少し離れた所にチーターがいるという情報が入り、現場に向かうと、そこには2頭のチーターが!
そこから1時間、狩りを試みるチーターと共によい時間を過ごすことが出来ました。
肝心の夜間撮影ですが、問題と課題が次々と出てきています。 1冊の写真集を作るのに必要なOKカットは70~80枚。そのカットを撮るには、100倍以上の10000枚を撮ります。
今回は夜間のライオンなので、まず動物を見つけることが難しく、見つかっても逃げてしまったり、なかなか動かずに朝になってしまったりするのです。 ライオン達が移動しだすと、車で追いかけながら撮影していますが、暗闇で車が穴に落ちたり、土手に乗り上げて動けなくなってしまったりと、毎日何かしらのアクシデントが起こるのです。
その度にライオン家族を見失い、ドローンでの探索を繰り返し、運が良ければ見つけることが出来ます。
夜間なので当然、光がなくカメラの感度(ISO)を上げて対応しますが、
少しでも揺れると手ブレを起こしますし、AF(オートフォーカス)を使うこともできません。
夜、動く動物をマニュアルで撮るのは難しい!
動物を探すのも、写真を撮るのも、昼間の撮影に比べると難易度が高く、とてもチャレンジングなプロジェクトです。
残り時間が少なくなってきたので、チームに焦りが出始めました。
撮影8日目、とても不思議な事が起こります。 夕方見つけたライオンの群れを追いかけていると、雄が2頭平らな大地で寝ていました。 まずは、ラジコンバギーの登場です。よいタイミングで夕陽も重なります。だいぶ撮ったところで、子供を連れた象の群れが現れます。
その後、陽が暮れると、ライオン8頭が、なんと平らで大きな岩の上に集合したのです。 すぐにLEDライトを搭載したドローンを飛ばし、照明をあてたライオンを撮ることに成功しました!!
撮っていて、ぞくぞくするほどの光景で、まるで僕らのために、皆で舞台に上がりエンディングの挨拶をしているかのようなライオン達。無心にシャッターを切り続けます。 本当にこんな事が起こるのか??とスタッフ全員が別の世界に迷い込んでしまったかのような時間で、この後は、何をやっても上手くいき、ライオンたちが僕らのやりたい事が分かっていて、そこに連れて行ってくれているのかと思うような体験でした。
きっとZONEに入っていたのだと思います。
奇跡の1枚とは、このことを言うのでしょうか? 1月の写真展では、写真を最大限大きく引き伸ばし、「まだ誰も見たことのない世界」をお見せしたいと思います!
好天を祈り、体調を整え、何が起こっても動じずに運を味方に付けたいと思います。