Charles Brewer
ジャングルの中からカラカスに戻ってきました。少しホッとしています。
エンジェルフォールへの山登りは、想像していたよりも危険でした。山小屋には怪我人が3人、足を11針縫った人、足を踏み外して捻挫した人、滑って岩から落ちて骨折した人。彼らはここからどうやって帰ろうかと、途方に暮れていましたが、それでも皆明るい!
ホッとしているといっても、ここはカラカス。世界一危険な都市と言われているので、最後まで油断大敵です。
Charles Brewer(チャールズ・ブリュワー)氏に会いに、山の上にある山小屋風の自宅に行ってきました。
85歳の彼は、入口で僕を迎えるとそのまま、カラカスの街が一望できる庭に案内してくれ、アジアから来た見知らぬ男の気持ちをリラックスさせてくれました。
大きなハグをすると、85歳とは思えぬがっしりとした身体が、今までの彼の偉業を支えてきたのを感じました。
リビングには、彼の蒐集した虫やクモや蝶、数百のコレクションが壁一面に飾られ、「この名前を知っているか?」と、一つ一つ全ての名前を僕に説明しました。
そのまま手を引っ張り、本や書類で埋められた彼の書斎に行き、PCを開け、次に出版される彼の写真集について、イントロダクションから楽しそうに説明してくれました。
彼はジャングルで29もの新種の植物や生物を発見しています。それはいつどこで、どんな状況だったのかを話し、その中で「discovery / 発見」の意味を教えてくれました。
「見つけるだけではダメだ、それは発見したことにはならないんだ。その写真を撮り、調査し、文献を調べ、文章にまとめ、発表し本にする。そこまでが発見なんだ」
彼は今まで18冊の本を出版し、19冊目を印刷中です。
「いつから、あなたのナチュラリストとしての人生が始まったのですか?」
と聞くと、
「生まれた時からさ。近くにあったもの、見たもの、触ったものに興味があったんだ。それを学び追求していったら、今だよ」とニコニコしながら、PCの次の写真を見せながら、この植物を発見したのは、ここなんだよ、分かるか? と分かるわけない僕に話し続けます。
巨大な洞窟を発見した時の逸話があります。
セスナに乗っていた時に、普段とは何か違う光が見えたので、パイロットに引き返してくれ、と頼んだそうです。しかしパイロットはそのまま飛んでしまった。
その事が気になっていたチャールズは、2年後その場所を訪れ、謎の光がどこから来ていたのかを探すと、近くの湖に太陽が反射し、何かを通して角度が変わり、空に向かっていたことに気付き、探索を続けると巨大な穴を発見したのです。
彼はカラカスに戻ると、各分野の専門家(気象、爬虫類、岩や地層、考古学など)を集めた調査隊を組織し、再度洞窟を訪れ、全てを計測し、徹底的に調査し、一冊の本にまとめたのです。
様々な冒険話を聞いていると、いつの間にか彼の家にいろいろな人たちが集まってきて、みな仲良くなっていきます。最後に彼は、子供ほどの年齢の僕に「なぜ私に会いに来たのか?」と聞きました。
僕は、少子化や将来への漠然とした不安が蔓延する今の日本の現状を伝え、日本の若者達へ、世界にはあなたのような、自分の力で世界の問題を解決している人達がいて、様々な独自の方法があることを伝えたい、と話しました。
「君は良い目をしている。やりたい事もはっきりしている。そういう人にはたくさんの協力者が集まるんだ。僕も君のやる事に協力しよう」と、大きな笑顔で伝えてくれました!
彼からの教えである、見た事、知った事、学んだ事を記録し、まとめて発表することを引き継いでいこうと思います。
そして、周りの人たちをハッピーにしていきたいと思います。
現代のインディアナ・ジョーンズ、Charles Brewer氏は、冒険家ではなく、準備し組織し実行し、一つのプロジェクトを中途半端には終わらせない、素敵なナチュラリストでした。