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「正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい」

正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

   ─ 吉野 弘 ─ (『祝婚歌』)

「20世紀の名言」


これは本当に気を付けないといけないと分かっている。
でも、気を付けていれば実行できるということでもないなと思う。


例えば簡単なものでいうと、「歯に青のりがついてる」ことを伝えるか。街頭インタビューなどだと、「友達なら指摘する」とか、「青のりだと言えるけど鼻毛や鼻くそだと言えない」という声があるらしい。

指摘する人も、「トイレに行くように仕向ける」とか「こっそり教えてあげる」という声が大多数。

そうでないと、相手が恥をかいて、傷ついてしまう。

指摘する相手が友達でなくて会社の人だったり、指摘する内容が相手のミスを注意するものだったら、言い方にもっと気を付けるだろうし、できることなら言わないかもしれない。


仕事は「正しいこと」で進めていかないといけない。だから、自分が間違っていたら直さないといけないし、他人が間違っていたら指摘しないといけない。

「正しいこと」が数字であれば、指摘もしやすい。1+1が3になっている時は、そう伝えたらいい。もちろん、いら立ちながら「普通、1+1は2でしょ!」とか「1+1の計算すらできないのか!」などという言い方は良くない。だけど、そんな言い方でなければ、言われる方も気を害することなく、素直に聞いてくれるだろう。

数字は便利だけど、都合の良い事実を作り上げてしまうことができる。数字は絶対的なものではないから、扱いには注意しないといけないけど。


さて、基準が明確でないものを指摘する場合は、伝え方を工夫する必要がある。使う言葉も選ぶ必要があるし、相手の性格や、相手のその仕事に対する思い入れ具合も気にする必要がある。

例えば、あるプロジェクトのコンセプトについて、前回の会議で話し合って決まったはずなのに、担当者がみんなの認識と違う方向でプレゼン資料を作っていて、上司が指摘した場合。

担当者が前回の会議の決定事項を理解できていなかったとしたら、急に思いもよらぬ指摘を受け、混乱してしまう。他の人は理解できていたのに、自分だけ理解できていなかったのかと自信喪失してしまう。次にプレゼン資料の修正を見てもらうのが怖くなる。次の会議に出るのが怖くなってしまう。

一方、担当者が決定事項を理解しているのに、自分のアイディアがいいからといって社の方針と違うコンセプトにしていたとしたら、最初から指摘されることは覚悟はしている。でも、人によっては「やっぱりダメかぁ、直そう」とすんなり直す人もいれば、「絶対にこっちのコンセプトの方がいい。なんで分かってくれないんだ。うちの会社の連中はみんなバカだ」とモチベーションをなくしてしまう人もいる。

いずれにせよ、「こんなに頑張って資料作ったのに」と、努力すらも否定されたと感じて傷つく人もいる。

しかも、「1+1=2」という答えがはっきりしていることでも、指摘される側からすると、「こんな単純なことを間違えて、仕事ができないと思われてしまう」と傷つくことだってある。


私もこれまで十二分に気を付けても、うまくいかなかったことが何度もある。

計算ミスを指摘する時は、「ここ、間違ってる」ではなく、例えば「ここ、こうなるんじゃないかな?」という言い方をするようにしている。

資料の方向性が間違っている時は、やはり「ここ、違うよ」ではなく「こういう感じにしてみたら?」とか「上司はこう考えている気がするよ」など、自分なりに言い方を工夫している。

相手の気分が良さそうな時とか、声のトーンにも注意しながら。


うまくいったりうまくいかなかったりするけど、これからも気を付けていくことが大事なんだろうな。いつか部下を持つことになるかもしれないし、鍛え続けていこう。




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