
緒方恵美さんの「再生(仮)」を読んだ
緒方恵美さんの自称ファンの自分が、緒方さんのエッセイ「再生(仮)」を拝読して、色んな感情が止まらなくなったので気持ちの熱いうちにノートに登録して今ここに綴ろうと思います。
皆さん、シン・エヴァンゲリオンはご覧になられましたか。
8月13日にAmazon primeでも配信が開始されましたね。
このノートはシンエヴァのネタバレを含みます。
なんならちょっとエヴァへの不満も含みます。
根強い緒方さんファンが多いはずなのに私のような感想を見かけなかったのは、そう思ってもみんな大団円のシンエヴァを賞賛する雰囲気に水を差したくないからかもしれない。
そんな感想を受け入れなくてもいいので聴き流して下さる方は、この下も読んでみてください。
なんかいにしえのHPの注意書きみたいですけど、どうぞお願いします。
まずは私の自己紹介をちょっとしとこうと思います。
漫画家志望のシングルマザー、もうすぐ30歳。
なかなかロックでしょ。
漫画アシスタントをレジ打ちパートを掛け持ちしながら自分の漫画を作ってます。
お金にならない、画面に向かう時間とネームの山、水の中を歩いてるような、夢の中で何かに追いかけられた時に走ってる時のような、進んでるはずなのに全然進んでないみたいな感じで20代最後の年を迎えました。
そんな感じの小二男児と二人暮らしのアラサー。
全然進んでないのだから、もっと足を動かさなければならない。
そんな気持ちのときには「尊敬する人、こうなりたい!」と感じる人のお話を聞くのが一番の刺激になる。
緒方恵美さん。
とにかく憧れの声優さんで、アーティストのお方。
緒方さんの声に惚れた一番のキッカケは、エヴァのシンジくん。
同人誌出したりするくらいにはエヴァとシンジくんのことが好きだ。
一番好きなセリフは「本部の半分は壊せるよ」
時折聞かせてくれる普段のシンジくんとはギャップのある、迫力あるドス声。
新劇場版エヴァでシンジくんをすっかり好きになって、緒方さんについてネットで調べてみれば、ウラヌスに雪兎さんに、子供のころ大好きだったキャラの中の人ではないか!
ワーと嬉しくなって、Twitterをフォローし、楽曲買って聴き漁った。
私が息子を出産した年に、地元福島県にある某大学の学園祭ライブに緒方さんがやってくると知った。
すぐに友達を誘ってチケットを取った。
緒方さんがTwitterで「学園祭で歌う曲のリクエストを募集する」と言っていて、緒方さんに見られても大丈夫そうなアカウントから「桜流しをお願いします!」とリクエスト。
なんと「候補に入れる」的な快いリプライをいただきめちゃくちゃ喜んだ。
義母にどうしても行きたいライブがある、とまだ母乳を飲んでいた1歳にもならない息子を数時間預けて、いざライブへ。
体育館のようなホールで立見だったが、なんと最前列をゲット!
間近で緒方さんの歌う声、話す声を聞くことができた。
一生言い張る。私、あの日絶対推しと目があったもん。
しかも、なんと、桜流しのリクエストが通っていた。緒方さんの声で歌われる桜流しだ。
エヴァQを観た後の心にめちゃくちゃに染み渡った。泣いた。
ライブのあと興奮してたら、外でどこかのラジオ局の人に声をかけられた。
緒方さんのどこが好き?とか聞かれた気がするけどあまりのテンションで喋った事何も覚えてない。
てな具合に、私は緒方恵美さんが好きで、エヴァが好き。
緒方さんのファンならばもう皆さんお手に取られた方も多いのではないでしょうか。
エッセイ本「再生(仮)」
Amazonで発売前に予約して、発売日には受け取っていたんですが一気読みしたくてなかなか開けずにいました。
そんな中冒頭で申し上げた「なんか進んでる気がしねえ」期に突入したので、読むなら今だと。
発売前に緒方さんがちらほら色んな場所で話していた「順風満帆ではなかった」という言葉。
多分読んだら良くも悪くも、ものすごく揺さぶられるので、覚悟を決めてページを開いた。
緒方さんの楽器を聴きながら。
読みました、一気に。
読んでると、本の内容、私のiPhoneにバレてる?ってくらいいいタイミングで、いい曲が流れる。
まぐれなんだけど。
本の中でやっぱり何度か出てくるエヴァに関するお話。本の締めくくりのあたりも、当然エヴァの話だった。
「再生(仮)」が発売されたのはシンエヴァ公開直後のこと。
エヴァの話は読んでるこちらも期待していたことだし、緒方恵美さんとは切り離せないもの。
イヤホンから桜流しが聴こえてきたタイミングで、本の終盤でシンエヴァに関するお話。
もう感動的じゃん、と思って読んでた。
けど。
けどけど。
一旦シンエヴァの話をする。
シンエヴァのシンジくん。
ようやく幸せになれたんだなって思えるラストシーンだった。
でも。
でもでも。
私は前述の通り結構「緒方さんのシンジくん」に入れ込んでる人間。
もう観劇中ずっと泣いてたんだけど、ラストシーン、別な涙と共に嗚咽した。
声あげて泣いたのなんていつぶりよ。
一緒に観ていた友達と劇場を出て、ネタバレに配慮して自分の車に乗るまでは感想をこぼさないようにした。
車に乗った。声あげた。友達引いてた。
「なんであそこが緒方さんじゃないんだ」
いやあもう、泣いた。そりゃ泣いた。
25年。
緒方さんはシンジくんだった。
エヴァの新作が出ない間もずっとシンジくんだった。
それに緒方さんが大人の男性の声を出せる事だって知っている。
なんでだ。
シンエヴァに対する唯一の不満だった。
その唯一が大きすぎた。
なんてつらい。
でも受け入れなきゃならないよな、庵野監督がこうだ!と思って出来上がった最後のシンジくんなんだから。
私は「シンジくんは、緒方さんから卒業した。緒方さんなしでも歩けるようになったんだ」とポジティブに解釈することにした。
そうでもなきゃ受け入れられないから。
だって「成人男性になったから女性声優さんではなくした」なんてありきたりな理由なわけがないでしょ?あの、エヴァなんだから。
なんとか受け入れた。
飲み込んだ。
そしてまた「再生(仮)」を読み終えようとしている私に戻る。
お読みになった方々ならご存知だろう、緒方さんの言葉。
あのラストシーンのおかげで(言い方が悪いが)、緒方さんの中のシンジくんは、シン・エヴァンゲリオンをもってしても、大人にはなれなかったと。
どこまでも呪いだった。
緒方さんの中のシンジくんがまだ14歳のまま、緒方さんの中にいる。
さながらエヴァの中にまだ眠ってるよう。
呪いのキャスティングは、ハッピーエンドに思えた。今度こそ終わったはずのエヴァだけれど、やっぱり終わってない。
続編があるかとかそういうことではない。
あの世界の中に残された「まだ続いてるよ」という呪いみたいに思える。
緒方さんのエッセイを通して、私はあの大人になったシンジくんを、無理に受け入れなくてもいい気持ちになった。
なんかちょっとスッキリした気もする。
緒方さんのシンジくんはまだ緒方さんの中にいるんだ、それでいいじゃない…。
たぶん呼びかけたらいつでも出てきてくれるんじゃないかなって期待してしまうけど、いいよね…。
自分のモチベーションを上げるために、憧れの人の御本を手に取ったはずなのに、全てエヴァに持っていかれて作業もせずにノートに登録してここまで綴ったのでした。
いや、それにしても、「再生(仮)」は憧れを仕事にしようとしている人間にはめちゃくちゃに染み渡る内容でしたので、声優さんやエヴァに詳しくないって人でも、夢追人には読んで欲しいなと思いました。
ひっそりと、漫画を商売にできたら地方創生に貢献できるような内容にしたい、と思ってずっと描いてきた。まだまだ芽は出ない。
けど、「再生(仮)」で触れられている、コロナに影響を受けた業界の話を知り、もしかしたらこの長〜い疫病との戦いが空けて、みんなが色んな場所にお出掛けできる世界線になったころに、私の目標が叶って、出番もやってきたりするのかもしれんなってちょっとポジティブになった。
さーて風呂洗って原稿するか