エスキスの型 RC SLAB T400
RCのスラブを400mmで設計することはおそらくありませんよね。でも、RC SLAB T400に従ってエスキスを進めれば、必要な情報を速く整理して合格に近づくことができます!
知識と作図スピードとともに必要なエスキスを速くまとめる技術を身につけましょう。
ある方法論があって、数をこなせば自ずと次の手順がわかるようになるかもしれません。しかし、そんなに記憶力のよくない私には無理でした。そこでエスキス方法にRC SLAB T400という名前をつけて、それを手がかりにしておけば緊張していても手順を簡単に思い出せます。
エスキスの方法論を色々なものから学びましたが、そのままやると身につけるにも時間がかかり、実践するにも時間がかかりすぎる場合があったりと疑問がありました。それをなんとか克服しようと、すぐに覚えられて最短でプランニングできるように独自に改良したものです。
試しに真似してみて下さい。
RC SLAB T400 ・Read
課題文を3周します。
全体像をつかむだけです。1週目は数字をオレンジにすることだけに集中します。わりと満遍なく、設計条件から要求図面to数字が出てきます。2週目に注目すべき条件と記述のキーワードをピンク、3週目に動線はブルー、作図時のチェック項目はイエローとマークしていきます。
目標15分
1周目に数字だけを追うのは、字面を区別し易いからです。
2周目はちょっとだけ中身を知っているので、少し読みやすくなっています。注目すべき条件がないかだけを気にしながら読み、要求室と要求図面の細かいところは読みません。R4では最上階に屋上庭園、階数及び構造種別は自由、地階は設けない、ペリメーターゾーンだけをマークしました。
3周目の動線条件は要求室の特記事項やその他の施設等にあります。作図チェックは要求図書のほぼ全部に読み落としがないようにチェックして、作図後のチェックに使います。記述のキーワードは作図にも考慮すべきことがないか確認します。
RC SLAB T400 ・Condition
敷地面積、建蔽率から建築面積限度、容積率から床面積限度、構造、階数です。
目標1分
ここからエスキス用紙に書き始めます。
漢字で書いていたら時間がかかるので、
シキチ 1536㎡
ペイ 90%→1382.4㎡
など、自分にわかるようにハショリます。
R4では屋上庭園の面積もかきました。
RC SLAB T400 ・Section
仮定する各階の高さと階数を確認し、最高高さと斜線制限に必要な距離を割り出します。近年は地盤断面図が問題文に記載されるので、2階建ての場合はざっくりそこに書き出すこともできます。それ以上の場合も地下や基礎がどうなりそうか書き出しておくとわかりやすくなります。
3階建て以上はエスキス用紙にグリッドを階と見立ててモデル図を書きます。このとき地下も書きますが、最高高さに含まないよう注意です。モデル図の右側は後で書き足しますので空けておいてください。
最高高さから斜線勾配の確認もします。GLからの最高高さを書いて、斜線勾配で割り算をします。その数値から道路幅を引いた半分が後退距離です。さらに柱を0.8mとして0.4を加算して計算しやすく少数を切り上げると、道路から柱心までの必要な距離を算出できます。
例えば5階建て、各階4mで、パラペットを足して20.6mが最高高、住居系の道路側で1.25の勾配ならば、20.6÷1.25=16.48mから道路幅6mであれば10.48/2=5.24が後退距離、芯まで5.64となりますが、わかりやすく切り上げて6mを道路から柱心と計算します。念のため塔屋を含む場合と含まない場合を出しておくとよいかと思います。
目標5分
プラン時にセットバックの対象外となる庇(敷地間口1/5超or道路中心高から5m超or境界から1m未満)をつけると後退距離が変わってくるので法令をよく覚える必要があります。
RC SLAB T400 ・Line
ここで要求室を再読し、空間要素の繋がりを可視化して、各室の配置をイメージします。特記事項などにいくつかの空間について直接繋げるよう指示があります。
問題用紙の室名にそれぞれ丸をして線で結びます。直線でもいいと思いますが、私はぐにゃっと書いちゃいます。自分がわかりやすい線でいいです。
また、吹抜けや階の指定のある室、主要な室の想定階は先ほどのSモデル図右側に書き加えます。
目標15分
要求室をエスキス用紙に並べ直して…という方法がよく紹介されていますが、私はそれだけで30分くらいかかってしまうので、それをやめることによって大幅に時間が短縮できました。
エスキス用紙にはチェックのための経過時間だけ書いておけば十分です。
その他に個人的な注意点としては、屋上がどこを指すかです。R4なら普通は屋上庭園は他に用途室がある最上階で、設備スペースは利用者が立ち入らないテッペンです。普通は間違わなそうですが、読み間違うアホがいます(恥)
読み違うと課題が求めるプランニングからかけ離れてしまうので十分にご注意を。
RC SLAB T400 ・Access
敷地への各種入口や周辺との関係性を検討します。上記のSから境界からの距離が決まっていればいいですが、そうでなければ経験上、隣地からは敷地内通路のため2m(設備更新が必要なら3m)、道路からは駐車スペースのため4m空けて計画してみるのが無難です。
タテヨコ何mの建物になりそうかを計算して、建蔽率に納まるかを確認します。いくつかパターンがありそうならばそれを洗い出します。
目標5分
このときグリッドマスは10mで検討するとコンパクトに用紙を使えます。
配置を考えるのでArrangement でもいいし、周囲からのApproachと覚えてもいいと思います。
RC SLAB T400 ・Block
スパン割を考えて、容積率を確認します。こちらもパターン出しです。
まずスパン割は前のAによる建物のタテヨコ寸法に納まるには、6,7,8mで計算するとそれぞれどうなるか確かめます。
例えばヨコ40m×タテ25mなら、40=6×6+4, 7×5+5, 8×4, 25=6×4+1, 7×3+4, 8×3+1 となります。
このとき、基本はやはり7m×7mのブロックとなりますので、端数を除いたヨコ7×5、タテ7×3でクリアできそうかを考えます。
ざっと床面積を計算してみて最大を少し下回るくらいならいいですが、最低に近いと要求室が納められなくなると考えたほうがいいです。
足りなそうであれば6m×8mのスパンを1ブロックが次の候補に挙がってくるでしょう。
検討すべき手がかりとしては、RCやSRCで無柱空間が必要な場合、梁が大きくなりすぎないよう2スパンで16m以下に抑えるのが賢明です。
また、双子のような空間が求められれば、それらが並ぶ方向のブロックの数が2で割り切れるようにします。
目標5分
このとき用紙の5mmは1スパンと見ます。
容積率がオーバーしていれば前の項目から見直すことになります。R4のように収益性が求められれば、小さすぎても問題があるといえます。過去問ではAccess以降を見直せばよかったのですが、R4は階の指定もなかったのでSectionから見直しました。
RC SLAB T400 ・Tiny
極小プランを考えます。
前のBに対してコア、管理導線、大きな要求室が入りそうかどうかを見極めて、庇を含めてできる限りすべての室が納まるか検討しておきます。前のLの繋がりが成立できるかも重要なので、ここで確認します。
目標20分
小さい要求室を検討しない…と最初描いていましたが間違いでした。
この段階でなるべく詰めてしまう方が1/400でなんとか納められるようになり、手戻りが少ないです。むしろこのTの時点で、要求室を網羅しているかチェックして、無理そうであればBで出した別パターンを検討したほうが良いでしょう。庇を検討するのは後退距離に影響するからです。
手戻りにはなりますが、一度検討しているので時間はもっと短縮できるはずです。
ここまでの合計時間が60分以内であればとても順調です。90分以内なら良いです。
RC SLAB T400 ・400
Tまで整理ができたらいよいよ1/400プランです。Tまでできていないのに1/400に手を付けると大幅な手戻りが発生しかねないので危険です。逆にTまでできているのなら、無理矢理そこに押し込む覚悟を決めます。試験なのでいつまでもやっている時間はありません。
あとはそのときの課題条件に従って、知識と経験を元にプランを詰め込んでいくだけです。
この1/400を見ながら作図になるので柱の位置をはっきりさせて、要求室が漏れてないか、室の繋がりが守れているか、トイレや外部スペースを忘れてないかをチェックしましょう。
目標30分
各項目の目標時間は短めに設定しています。途中で考え直す必要が出てくることもあるので、エスキス全体で120分以内にできれば少し余裕をもって作図に進めます。R4は記録し忘れていましたが、100分少々でできたと思います。
そもそも納得できないことを丸呑みできない性格ということもあってエスキスに関しては、独自方法をまとめることになりました。部分的なことですが、達成感があり満足しています。
230813修正
自分で書いておいて各項目で何をしていたか忘れたのと、過去問をやってみて気づいたことがあったので部分的に見直しました。
230830修正
主にSとLを見直しました。Sは斜線高さの計算がおかしいことに気づき修正です。Lは基準階だったR4に比べ、R5の課題をやってみると要求室が複雑になる傾向から、もう少し課題文の理解が必要だと感じたことによるものです。
240622修正
周を週と書いていたことにやっと気づく。その他にもちらほら誤記訂正。