製図試験の独学方法1
自分は基本的に独学と決めていたものの、製図に初めて取り組むので、教材を手に入れても焦るばかりで何をするべきかあまりわかりませんでした。反省しながら、独学するならどんな手順がよいかを整理します。
独学の方針
製図試験で合格するために必要な能力は何か。本番では、次の3つのステップを踏むことになります。
1.課題内容を正確に読み取る
2.合格できるプランをエスキスでまとめる
3.解答を作図、作文する
加えて、すべてに"スピード"が求められます。
各ステップを確実にこなす訓練をする前に、どんな学習でも、まずぼんやりと全体像を掴んで後からその解像度を上げていく、というのが効率的であるようです。製図試験の全体像がどんなものかから始めて、上記各ステップの学習により解像度を上げていくというプロセスになります。
過去問でわかる全体像
学科試験の場合には少なくとも10年分の過去問に目を通せば全体像をつかめます。製図試験の場合にはどうなるでしょうか。学科と同様に過去問にあたるとして、問題文を読み、解答例も読めれば、ぼんやり全体像をつかむことになるでしょうか。一問一答形式とは違うので、もう少し俯瞰的な見方をしてみます。
R4の場合、学科試験の前から製図試験は事務所ビルと発表されていて、事務所ビルはH21以来だとわかりました。まずはH21に目を通し、学科同様に10年分の過去問にも目を通します。Ⅰ.設計条件とⅡ.要求図書があり、Ⅰには主旨、敷地、建築物、その他施設、Ⅱには、図面、面積表、要点(記述)という構成は変わっていません。しかし要求している中身はH21当時とは違ってきています。
・解答時間が1時間伸びる。
・問題用紙はA3からA2になる。
・記述問題に図示も求める。
・伏図に代わって、断面図が要求される。
・道路斜線や延焼ラインに防火戸など、書き込み要素が増える。
ついでに標準解答例も手描きからCADに変わりました。またどういうわけか記述の解答例は提示してくれません。独学者には困りもので、TACの解答例もありますが、1年分だけのようです。おそらく一番安く手に入る暦年の解答例は雲母未来さんの独習合格過去問集です。電子書籍をおすすめします。
全体像のためのトレース
問題文と解答例には目を通したとして、これで全体像を把握できたと言うにはまだ早く、作図する試験なので描いてみる必要もあります。
私は過去問でR4と同様の課題だったH21の貸事務所ビルにあたりました。でもこのとき解答したくなってしまい、その衝動に抗えませんでした。どうにかエスキスをまとめても、作図しながらあれこれ疑問が浮かんでしまい、さっぱり先に進めなくなります。衝動の根源は、初めて見たH21を解くことが二度とできないという卑しさです。自律の精神力を養うことも必要です。
また、発表された課題と似た過去問よりも、記述問題の解答例が手に入る問題を選んだほうが、解像度を上げるには適していると思います。理由は読み進めてもらえればわかります。
全体像を掴む段階では、ある程度信頼できる図面を書き写せばよいので、標準解答例を見ながら描いてみます。つまりトレースです。横に並べて見ながらというのはスペースがキツイし、すごく時間がかかるので、ある程度覚えて描くと、後にエスキスから作図するときの練習になります。書き写すだけとはいえ、どのように線を引くのがよいかなど気になることは出てきてしまいます。疑問を抱くことは大事ですが、それは別にメモしておいて、とにかく書き切ることを目指します。時間制限はせず、計っておくと2ヶ月後の自分の成長を確認できます。
いきなり課題を自力でエスキスするのもトレースも大差ないように思われるかもしれません。しかし、よくわかっていない自分が考えたものと標準解答例の差は、法令をクリアしているかどうかだけでも大きく違います。わかっていないと無駄な間違いが非常に多く暗中模索になる一方、解答例の通りなら、なんだかんだ終わりが見えています。私の失敗をトレースしないでください(笑)
描ききったと思ったら、ちゃんと全て描けているかどうかの見直しです。本番でも描き上げたら見直す時間が必要になります。本番の場合は問題用紙をチェックしながら見なければなりませんが、トレースなので解答例の通りに図が描けているか、文字の書き込みや面積表、受験番号と名前も忘れずに書いておきましょう。
上記の通り、全体像を掴むためのトレースでは、2のエスキスは全く出番なしです。というのも、作図するにはエスキスは必要な過程で、半分は作業でこなせますが、半分は考える必要があります。標準解答例のエスキスは公開されていません。(やろうと思えば解答例から逆算でエスキスを導き出すことはできそうです)
記述問題は標準解答例にないためトレースできません。作図してみた問題をもとに、自分なりに書いてみてもいいと思います。学科で学んだだけではなかなか言葉にならないことに気づきます。
そこで、前述した独習過去問集から同じ問題をトレースします。標準解答例とは少し違う解答例ですが、合格できる解答例であるはずです。記述も解答例があるので書き写してみます。これだけで少なくともその年の問題に対する解像度はかなり上がります。記述文は図面に表現しきれないことを言葉にしているので、記述内容は標準解答例の図面と合わなくてもおかしくない、というかそれが自然です。
以上、全体像をつかむまでとして、目標はできれば3日、現実仕事が忙しくて休日だけやるとしても2週間以内ぐらいです。
続きは別の記事とします。