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組織風土を変えていくには(8章)対話の重要性
経営層の皆さん、新任の管理職の方々、そして組織をより良くしたいという意志を持つ全ての方々へ。未来に向けて、現在悩んでいる方々に届けます。この第8章では、「対話の重要性」についてお話しします。第1章では「コミュニケーションの質と量」、第2章では「1on1ミーティングの進め方」など、対話に関連する内容を取り上げましたが、今回は「対話」に焦点を当ててお話しします。基本的な内容も含まれますが、改めて「対話の重要性」について考えるきっかけになればと思います。
まず、「対話」とは「相手と向かい合ってお互いに話し合うこと」を指します。日常的な会話とは異なり、「対話」はお互いの意見や立場の違いを理解し、その違いをすり合わせることを目的としています。「対話」のポイントとしては、以下の点が挙げられます。
相互に尊重し合い、相手の意見や価値観を否定せずに受け入れること
自分の考えや感情を客観的に捉えること
社会的な価値観と個人的な価値観を切り離し、自分の価値観を押し付けないようにすること
これらのポイントを理解していても、実際に実践できていないことはないでしょうか?私自身も、自分の価値観やアイデアが先に頭の中を走ってしまい、相手の意見を100%受け入れる余裕がないことがありました。「こうしたらうまくいくのに」「なぜこんなことで時間をかけるのだろう」と思うこともありました(コーチングを学ぶ中で修正してきましたが)。これらのポイントを押さえていないと、真の組織内でのコミュニケーションはできていないかもしれません。「対話」を通じてお互いの立場や感情を理解し合うことで、より良い関係性を築き、新しい協働関係へと進むことができます。
ホワイトカラーの職場では1on1ミーティングなど、しっかりとした「対話」の場を作ることが容易です。しかし、1on1ミーティングの目的に沿って実施できている組織は多くないかもしれません。オペレーショナルな製造職場では、そういった時間を作るのが難しいと聞きます。
製造職場の管理職の方々と意見交換すると、結果的に「対話」の重要性を理解してくれます。彼らからは「対話がなかなかできない職場だからこそ、対話の重要性を理解しなければならない」「職場に合った対話のやり方を工夫して考えなければならない」「1on1ミーティングが頻繁にできないのであれば、日頃のコミュニケーションで存在を承認するようにする」などのコメントがありました。このように、「対話の重要性」を理解するだけで、明日からの行動も変わるかもしれません。
経営層であれば、「対話の重要性」について皆で議論する場を作り、各組織に対して「対話」について考えることを促すことができます。
管理職ができることとしては、同様に「対話」について話し合う場を設け、どんな「対話」を良しとするかを話し合い、それによってチームがどのように変わるかを共有する、価値観を知るワークを行うなどが考えられます。
社員一人ひとりも、どんな「対話」を望むのかを意見として伝え、チームメンバーのお互いの価値観を知ることで、自分の価値観を内省し、今までとは違った「対話」による関係性が生まれるのではないかと思います。
現在、企業の中で組織を変革するうえで最初に行うべき基本の「キ」は「対話」であると感じます。そのためには、心理的安全性などが必要になるでしょう。少しでも組織において「対話」について考える機会を持てたらと思います。