【無料】あと262日:トーキョーギタージャンボリー
9月12日
入門して5年目の頃。J-WAVEが主催の『トーキョーギタージャンボリー』という音楽イベントの開口一番として落語をやって欲しいとオファーが届いた。「なんで落語を?」と自分でも思ったけど、聞けばこのイベントはバンドのフロントマンが全員弾き語りでパフォーマンスするというコンセプトらしく、1人で舞台に上がる形式と落語家とを重ねてもらったようだ。そしてその会場は両国国技館だった。国技館。キャパ8000人くらい。もちろん自分にとって一番大きな規模の仕事だった。
当時はちょうどhow to count one to tenというポストロックバンドと作品を作っているタイミングだったので、せっかくだったら普通に落語をするんじゃなくて、音楽を使ったパフォーマンスをしたいと思って、アコギにルーパーを使ったスタイルでこのイベント用のネタを作って挑んだ。といっても、冒頭は地力でどんな感じになるか試したかったから小噺やった。ドカーーーーン!という波のような笑い声が身体を通り抜けていって、鳥肌が立ったのを覚えている。
このとき初めて生でライブを見た玉置浩二さんのとんでもなさに心撃ち抜かれて、客席全体が完全に心掴まれたままの直後のトリ出番、トータス松本さんが「バンザイ」の出だし、「イェーイ!」という第一声で一気に自分の空気にグッと持って行かれた様子と合わせて、痺れた一日だった。
早い二ツ目昇進から独自路線のネタを全面に押し出した活動を展開していた。もちろんなんの実績もなく、落語界の中では「ただ奇抜なことをやっている飛び道具」くらいに認識されることが多かった。たくさん揶揄されたりしながら、突っ張って自分が思う道を進み続けていたからこそ、こうして普通のルートだと体験できないような、ご褒美みたいな夜もたくさん経験できた。