見出し画像

【無料】あと325日(たぶん):Bの壁を超えるために。

4月3日
 竹千代さんの会に呼んでもらった。NHK新人落語大賞に向けて11分尺のネタを4本試して、ゲストである僕に講評してもらうという企画。僕は結構大胆なことを口にすることがあるから、自信過剰で自分が大好きなやつと思われることもあるけど、そうじゃなくてただただ客観的に物事を見つめる人間だと思っていて、誰かに対してシビアな評を下すとして、その同じ目線かそれ以上に冷徹な目で自分のことを日夜見つめていたりもする。一方で「自分が想像できる範囲内のことしか実現し得ない」とも思っているから、極度に楽観的なものと、徹底的に冷徹なものを、妥当なラインと、何かをシミュレーションする時は幅広く考えるようにしている。それでもシビアな想定をする時間の方が長い気がしている。
 例えばコンテストに挑む時に、ネタの評価をS、A、B、Cで考えるようにしている。Sは圧倒的に勝てるであろうネタ。Aはまぁまぁ勝てるだろうなというネタ。Cは絶対に勝てないだろうなというネタ。Bはそれ以外。そのとき『ぷるぷる』は僕にとってA+。「まぁまぁ勝てる」というよりはもうちょっと強くて、「結構勝てそう」というような位置付け。ただ圧倒的に勝てるネタとは思えていないからSではない。『一人相撲』はB、『ぞおん』はB、『小人十九』はB、『舌打たず』はB-と、そんな具合で、解像度を粗めに設定していることもあって、つまりはほとんどがBに収束されることになる。
 もちろん持ち時間とか審査方法とか客層とかで条件は変動していくけど、いつもこれくらいの自己評価になる。要は面白いかどうかなんて主観がめちゃくちゃ作用するから、勝てるかどうか確証を持つのは難しく、大体はBになってしまう。見る人によるから面白いかどうかは分からないよね、ということ。そんな大量のBが並ぶなかから、少しでも自分のネタを選んでもらう確率を上げようと思ったら、ほんのわずかにでも引っかかりの助けになるような、何かしらのフックを用意するしかない。

 たぶん竹千代さんがガチンコ評を求めているだろうなと思ったからショーアップ用に10点くらい底上げした点数の他に、僕が自分の採点をするときにやるようなガチ採点の辛めの値と、S~Cの四段階評を伝えることにした。四段階評だとBが3つとB-が一つだった。Bしかないから、全然評価になってないじゃんと思われるかもしれないけど、逆に言えばほとんどがBに収束するなか、頭一つ抜け出られるかどうかがとてつもなく大きな分岐点だということだったりする。

 このS~Cという、めちゃくちゃ粗く点数をつけるシステムは思えばお笑い芸人になるべく毎月オーディションに通っていたbaseよしもとのシステムに影響を受けた形なのだった。合格3組、Aが5組、Cが10組、残りBが280組ぐらいという、採点としてはものすごい粗いバランスで、あの頃はあの手この手を尽くしても一ヶ月の試行錯誤がただ「B」という一文字に収束されていることがとてもしんどかった。そして、Bばかりが続く活動の中、「二つの軸を同時に走らせる」というちょっと新しい漫才のスタイルを閃いたことで初めてAをもらった時は心臓が飛び出るくらい嬉しかったな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?