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【無料】あと232日:得意分野

10月12日
 渋谷らくご。前半出番ということもありまだシブラクでやっていない『おしくら』を勉強しようと思い会場へ向かう。自分らしさを全投入した新作落語と違い、古典はあまり自分らしさを入れることなく、型通りにやりたくなる傾向がある。それは自己表現は普段しているから、そんな
中古典をやる意味合いは、技術習得への期待が大きい。だから、自分らしさで工夫してウケやすくするんじゃなくて、従来通りの型へ自分が合わせることで演者としての幅が広がるだろうと思って。ということで、何が言いたいかと言うと、僕の古典はスペシャリストのそれと比べて明らかに面白さが見劣りする。新作に関してはいっぱしにも自分らしさというのを会得しつつあると思っていて自信もあるけど、古典に関してはもちろん面白くやるつもりで頑張っているけど、それ以上に修行としての一面が強い。
 だからトリなどしっかり結果を出すべき場ではもちろん自分らしさが色濃く出る新作をやるけど、今日は前半出番で、後の師匠方が絶対に盛り上げてくださると分かっていたから、だったら勉強させてもらってもいいんじゃないか、と。

 が、いざ会が始まって志ら乃兄さんの高座を聴いているうちに、シブラク目当てで、初めて落語会に来た方がそれなりにいそうと思えてきた。もしかしたら少し名前は知ってくださっていて「名前は聞いたことがある立川吉笑って面白いのかな?」と来られた方さえいそう。となったら、そこで自分でもまだ勝負ネタと思えていない『おしくら』をやっていいものか。もしかしたら今日が最初で最後の機会かもしれないのだから、だったら自分らしさを爆発させるべきじゃないかと悩みに悩んで結果『ぞおん』をやった。終演後エゴサーチをして、やっぱりその判断は間違っていなかったと思えた。演者として諦めたくないから、あれもこれも演ろうとしてしまうけど、もしかしたら僕は僕にしかできないことを突き詰めた方がいいのかもしれないな。

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