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【無料】あと234日:14年前の今日、師匠に面接して頂いた。

10月10日
 2010年10月6日、師匠に弟子入り志願した。その4日後である2010年10月10日の午前10時、師匠と初めてちゃんとお話しさせてもらえることになった。その時の日記。

10月11日、正午すぎ、大和町の自宅にて。晴天。

 師匠に「いつでも大丈夫です」と送信したあと、ラウム(バイト先のネットカフェ)の店長に「土曜日の深夜、入れるようになりました」と伝えた。「来週から再来週で」という師匠のメールから、早くても面接は来週の独演会終わりくらいになるだろうと考えたからだ。
 しばらくして送られてきた師匠のメールには「じゃあ近々ですが10日(日)の10時AMにしましょう」と書いてあり驚いた。色々あってバイトを休めそうになかったから、バイト終わりで直接お会いすることに決めた。面会場所がたまたまバイト先がある新宿だったのも要因だったが、そもそも寝坊が怖くて寝れる気がしなかった。

 約束した時間の1時間くらい前にはすでに待ち合わせ場所にいた。喫茶店の前。雨が降ったり止んだりしていた。久しぶりにひどく緊張していた。胸に手を当てると鼓動が早くなっているのがすぐに分かるくらいに。
 「もしかしたら断られるかもしれない」という不安はもちろんあったが、何故か大丈夫だろうと思っていた。2010年10月10日午前10時。しかも大安。師匠が指定してくださったこの日、この時間が、ただの偶然とは思えなかった。確信を持ってAUの星占いをチェックしたら、始めてご挨拶させて頂いた6日と同じくかに座が1位だった。やっぱり大丈夫だと思った。

 念のため早く来たものの、師匠は早くとも約束時間の10時ちょうどに来られると思っていた。優しさとして、目上の者としての振る舞いをわざとやられる、そんな人柄だと思っている。とは言いつつこちらが待たせる訳にはいかないから、30分前からはいつ来られても良いように、店の横で直立していた。下にあった空き缶を捨てたりもした。とにかく師匠をしくじるわけにはいかないと思っていた。
 15分前になった時点で傘を畳み、店の入り口にあったビニール袋へ傘をしまった。師匠が店に入られた後、ビニール袋へしまうのに手こずってしまうリスクを回避するためと、師匠のホームページに、滅多なことでは傘を使わない、と書かれていたから。自分だけ傘を差している訳にはいかない。

 緊張感が最高潮に達した10時すぎに、師匠が来られた。すぐに近づいて一礼すると、師匠は中へ誘導してくださった。席に着くやいなや、コーヒーを頼まれたので、同じものを頼んだ。

 師匠は「いつも言うことなんだけど・・・」と話し始められた。
 とにかく止めておいた方がいいと思う、というのが師匠の意見で、「その理由は・・・」と何故かを続けてくださった。就職先は安定的な方がいい・家元が亡くなった後、自分がどうなるかまだ分からないなどなど。論理的に説明してくださった後「ただ、やってみないと分からない、という気持ちも分かる」と、ご自身の事や周りの事を本当に明け透けに話してくださった。曰くギャラの話や前座の話、協会の話や歌舞音曲などの話などなど。自分の思いを伝えようと意気込んで行ったにも関わらず、ほとんど自分の話などできなかった。談春師匠が家元に接される時の心持ちがよく分かった。

 師匠が「とりあえず見習いというかインターンというか、しばらく一ヶ月くらい楽屋周りの様子を見てみて、それからまた話をしましょう」と言ってくださった。一般的にいう、前座の前段階としての”見習い"よりももっと下の感じではあるけど、それでも嬉しかった。

 「では行きましょう」と師匠が伝票を持って出口に向かわれたので、急いでついていった。支払いを済ませた師匠に「ごちそうさまです。」と言う。外に出ると師匠は来た方向とは逆へ歩いて行かれた。
 今になっては何故そう思ったのか分からないが「着いていくべきではない」と勝手に思ったので、師匠の背中に「本日はありがとうございました」と声をかけたら意外なほどの笑顔で(お客様に接する感じで)頭を下げてくださったので、逆に不安になった。もしかしたらあそこは着いていかなければならなかったのかもしれないと今、思っている。
 今後、師匠と別れる際はお見送りする意味でもとにかくいけるところまではついて行くくらいの了見の方がいいかもしれない。師匠が「もうここでいい」というような事をおっしゃるまでは着いて行く方がいいのか、それとも恩着せがましくなるから空気を読んでそれ以前に別れた方がいいのか。

 師匠は協会の方へ弟子入り志願する道を完全には切り捨てずに、ニュートラルにいた方がいいとおっしゃってくださったけど、お話してさらに師匠の下で修行させていただきたいと思った。あれだけ誠実な方を裏切りたくないし、悲しませたくないし、師匠が迷惑だと思われてもとにかく師匠のために頑張りたいと思った。

 14年前の今日、師匠に面接して頂いた。

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