R1.11月1~10日
①母校の先生が関わっておられる中央区の催し物で、あの三遊亭円朝師匠について一席申し上げる機会を頂きました。
大円朝といえば怪談で、円朝怪談にみられる表現が現代の稲川淳二怪談にまで生きているという説をマクラで語りました。
それは、日本の幽霊には足がないということに代表される慣習を超え出でるようなオノマトペを話芸に落とし込んだことの重要性です。
下駄のカランコロンという音は、現代では旧日本兵の軍靴の音になったり、子どもがピタピタ走り回る音になったりする。耳から身体のなかに入り込む話芸は、ソレを聴かせます。
幽霊という観念的なモノが物質と交わる点が、音として響く。そこにリアルなものが立ち上がります。
②ちょうど学園祭シーズンなので明治の学園祭に顔を出し、立派な大人になれなかったことを再確認しました。OBの先輩方と現役の皆にお手伝いして頂いた先月の明大落語会からまだ一週間。皆さまお疲れ様でした。
さてその翌朝にスマホをなくしてしまったのですが、何が凄いかというと、僕がスマホをなくすのが令和になって2回目だということです。平成では一度もなくしたことはありませんでした。疾風怒濤の令和の到来です。
すぐに遠隔ロックをかけて電波をとめて…と色々と大変。データのクラウド化は本当に助かります。未来には、スマホを持たなくても直接クラウドに飛び込めるようになってほしいです。
③映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、 終わり。』を観に行きました。たまたま映画館の近くを通るのでレイトショーでも、と思いタイミングが合ったので。
人を笑わせるピエロが同時に怖くもあるというのは、あのメイクが定着した頃からあったのかな。個人的には小学生のとき読んだ江戸川乱歩『地獄の道化師』がファーストピエロインパクトでした。乱歩で最初に読んだのが二十面相ではなく不気味なピエロ。自分は結果として芸人になったわけで、社会的にはピエロとして機能しています。僕はピエロでしかない。
さて今回のイット、映像をつくる技術が進歩しまくり、殊にホラーにおいては何でもできるようになった時代の恐怖のつくりかた。怖いものを突き詰めて、異形のものを生み出したら面白くなってしまうこともあると思う。そこで、イットは道化師が遊んだようなお化け/モンスターになって攻めてきます。あの老婆のお化け、日本の有名漫画家の先生のお描きになるキャラクターにそっくりで、むしろ納得してしまった。
前作をまったく知らないのですが、ペニーワイズってどういう人なんだろう。
④10日の夜は兄弟子の志ら玉師匠が音頭をとって第四回目の珍品噺研究会。歴史に埋もれてしまった噺を掘り出して少し磨いてお見せする会。僕の場合、掘り出して磨くというより、呪術を使って甦らせるというような気持ちでやっております。各々の創意が、噺の眠っている部分に思わぬ揺さぶりをかけ、第二第三の人格(噺格?)を目覚めさせるような、そんなことが起きないかな。魔法みたいな。それは言葉によってなされる、既に魔法といえるのかもしれません。
未明に、上方の桂三金師匠の訃報にふれました。
7月に横浜にぎわい座の花詩歌タカラヅカの裏方をお手伝いさせて頂いた際にお会いしたばかりでした。三度しかお会いしていないのですが、三度とも打ち上げでひとりだけいち早く丼ものを注文されるスタイルが大好きです。いつも面白くて優しくて、本当に突然のことでただただ悲しいです。
僕と同世代の関西の落研の皆もお世話になっていたようで、それだけ大きな方でした。御冥福をお祈り申し上げます。