毎日マクラ「は」☆花火☆
言葉のね、順序を入れ替えると意味が完全に変わっちゃうって単語ありますよね。
流行りの言葉だと“ステイホーム”、ね、家から出ちゃいけない。これを逆にすると、“ホームステイ”。海外に渡航しちゃう! 意味が逆転しちゃいますけど。
やっぱりダイナミックなものだと、花火。暗い空に、ドーンと広がるのは壮大なスケールですけど、これをひっくり返すと、火花。とたんにスケールが落ちますね。パチッてなってすぐ消えちゃう。冬にドア開けようとして、アッて、静電気がくるみたいな。なんだこれ!って腹立つだけの(笑)
話は少しそれますけど、落語ってのは花火みたいなもんだと堀井憲一郎さんが本に書いてまして。堀井さん、ご存知ですよね。日本テレビのおじゃマンボウTVウォッチャーという肩書で出ていた方なんですけど(笑)
堀井さん、落語について文章を書く人の中で、唯一まともな方でした。最近はお書きになりませんけども、新書で『落語論』ていうタイトルの本を十年以上前に出してまして、これが見事なんですね。シンプルなタイトルが納得できるくらい。
今はもう、落語評論家みたいに名乗れる人はいませんよ。落語評論家というのは、突然変異を起こしたお客さんのことなんですね。観ることを突き詰めておかしくなってしまった人のことです。今は昔と違って、落語界の渦に巻き込まれてしまって、評論家が仕事をしなくなった。普通のお客さんなんですよ。インターネットにはもっと凄い評論家レベルの人がゴロゴロいるんです。落語の評論がいちばん弱い。超えてきてほしいですね。新しい書き手を求めます。
どうしたんですかね(笑)
ぜんぶコロナが悪いんですけどね、ほんとに。
で、件の花火ですけど。どれだけ空に広がっても、あっという間に消えちゃうというのでは、その儚さは火花と一緒ですね。一瞬、輝いておしまい。
花火大会なんてなると、費用もだいぶかかるイベントになるわけですが、空が舞台だから無料でやるしかないです。スポンサーを募るわけですけど、その人たちも、自分がこの花火の一部なんだという楽しみがある。花火師が命をかけて、それこそ命の危険を冒して花火を上げるわけです。
江戸っ子の一大イベントですよ、すべてが表現されているように感じるんですよね。パッと咲いて散っちゃう。
これが粋なんですよ。江戸っ子なんです。
「宵越しの銭は持たない」って言葉がありますけど、そんなイメージですね。
あと「火事と喧嘩は江戸の華」なんてこともいいますけど、火事は光で、喧嘩は音なんです。光と音、江戸っ子が好きなもの。これが花火において最高のカタチで合わさるんですよ。
今年は、花火無理そうですね。