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qp「セルヴェ」展を見た:アール・ヌーヴォーとアニメーション

パープルームギャラリーで開催中のqpさんの個展「セルヴェ」を見た。セル画による作品の愛らしさには目を奪われる。テーマは「植物と鉱物の結婚。アール・ヌーヴォーとアニメーションの結婚」だという。

涼しくて気持ちのいい天気だったから、会場へは自転車で向かった。結果、片道一時間のサイクリングとなった。考える時間は余るほどあり、帰り道に色々なことが頭に浮かんできたので、痛くなったお尻を無駄にしないために記しておく。

写真 2019-09-21 16 54 54

写真.会場の様子と展覧会の冊子
(一度会場を素通りして、たどり着くのに15分ほど迷った)

ふたりの共通点

そもそもセル画を見るのが初めてだった。複数のセル画が重ねられてひとつの作品が構成されていて、レイヤー感が面白い。アール・ヌーヴォーの蔦の絡み合いが、セル画のレイヤーの重なりに変換されているみたいだ。

アール・ヌーヴォーは、いち早く自由な造形を生み出すも短命に終わった。そのせいか新芸術という名前には哀愁が漂う。セル画によるアニメーションも今では過去の技術だ。ふたりの共通点は過去の存在になってしまったことかもしれない。

永遠のすれ違い

会場で購入できる冊子には、通常版と豪華版が用意されている。豪華版は、セル画をスキャンしたものだけで構成されている。一方、通常版には、少し横から撮影された作品や会場写真も含まれている。

作品の背景はセル画ではないものの単色で均一に塗られたものが多い。それでも、セル画のつるっとした表面と比べると背景の素材感が引き立つ。その対比がとても綺麗だった。

それはスキャンされると失われるものだ。セル画と背景の区別もつかない。しかし、アニメーションとしてはスキャンされたものが完成品で、セル画もそれを計算して制作されるのだろう。アートにおける実物の作品と作品集の写真との関係とは真逆のものが、アニメーションにはあるみたいだ。

そんなことを考えていると、会場の真っ青な壁のことを思い出した。人間の目は、周りの色との対比で色の見え方が変わる。だから、自分が会場で見ていた色は本当の状態ではないことになる。

自分の見ていたものが、真なる状態なのか、不完全な状態なのか、繰り返し揺さぶられる。それを考えながら、気づけば自宅に着いていた。


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