戦隊ロゴと全力で向き合ってオリジナル戦隊ロゴを作った話
よくきたな🍑
スーパー戦隊好きが高じて、オリジナルのスーパー戦隊小説を書いています。コミケで本にして出版しようとしたけど予算の都合で断念して、今は次のイベントに向けてブラッシュアップやらを重ねているところです。
で、そのブラッシュアップ作業における目下の最大の壁。
それがタイトルロゴです。
過去に仮面ライダーのロゴを分析してオリジナルライダーのロゴを作ったことがあるのだけど、あれともまた勝手が違う。まぁ同じスーパーヒーロータイム枠とはいえ出自が違うから当然っちゃ当然なんだけど、とにかく悩ましい。
3月ごろからうんうん唸り続けているのだけど、いまだに正解が定まらずもう6月になってしまいました。迷走を重ね、今はこんな感じなのだけど、なんだろう、こう、どうしようもなく素人くさいし可読性も低い。
そういうわけでこの記事では、これまで考えたことや考察事項をまとめつつ、改めてロゴを考えていきます。「オリジナルの戦隊ロゴを考えたいけどどんなのが良いかわかんないよぉ」という方の知見になれば幸いです。
ちなみに記事内では端折ってる部分も含め、悩んでいる様子はこちらのmin-tにまとめてますのでお暇な方は合わせてどうぞ。
なお、僕はデザイナーでもなんでもなく、お絵描きも苦手なので最終的な出来栄えについては温かい目で見守ってください。
それでは行ってみよう。
既存のロゴを観察してみよう
模倣には観察が不可欠です。戦隊ロゴも試しに観察してみましょう……ということで、とりあえず過去二十年分の戦隊ロゴを並べてみました。
壮観!
仮面ライダーのロゴのときも同じこと思ってたんですが、なんか作品ごとに明確に個性がありながらも、どれもちゃんと“それっぽさ”があるんですよね。特にここ4、5年はかなり自由度高いですが、やっぱりぱっと見で「そう」とわかるなにかがある。
自由すぎる
さてさて、観察にあたり、とりあえず分類してみましょう。ぱっと見で感じるのは「文字の形状に類似性がありそうだな」というところですね。早速やってみました。
ロゴの形状によるクラスタリング
中央が窄まった、針吹き出しのような形状のロゴが多いように見受けられますね。上下どっちが伸びているかの差はあれど、4割程度はこのタイプに分類されます。僕の大好きな獣電戦隊キョウリュウジャーも針吹き出しタイプです。
また、全体的に奥に倒れているものも多いように見受けられます。というか、ゴーゴーファイブのロゴと「その他」に分類したロゴ以外は基本的にそうなっています。仮面ライダーが斜体がベースだとすれば、スーパー戦隊は奥に倒れた台形がベースであると言えそうです。
台形+針吹き出しでそれっぽく。
見えてきたところで早速実践。拙作『刻命戦隊クロノソルジャー』を針吹き出し方にしてみると、こうなります。
迸るコレジャナイ感。
原因のひとつとして考えられるのは、「ジャー」の部分の配置でしょうか。これも、既存のロゴを見てみましょう。
「ジャー」の処理
秘密戦隊ゴレンジャーから始まったスーパー戦隊シリーズは、そのタイトルの多くが「ジャー」で終わっています。実際の数で見てみると、シリーズ全体(ゴレンジャー〜キラメイジャー)では51作中28ジャー、平成元(1989)年以降(ターボレンジャー〜キラメイジャー)で見ると37作中27ジャーでした。平成でいえば7割以上が○○ジャーなわけです。ジャーの処理の知見は既存作にあり。
上述したように、針吹き出し型にすると「ジャー」の部分がめちゃくちゃ浮きます。そこで、先人たちは「ャ」と「ー」をセットにすることでバランスを取っています。
君の推しの戦隊はどの「ジャー」かな!?
今回観察対象の20作品のうち、「ジャー」で終わるのは18作品。この画像ではルパンレンジャーとパトレンジャーを分けてあるので、19ジャーあります。そのうち、14作品が【「ャ」の下に「ー」】、3作品が【「ャ」の上に「ー」】、そして1作品が【「ャ」と「ー」が同列】でした。
やはり台形にした時に座りがよくなるのは【「ャ」の下に「ー」】パターンですね。「ー」が台座のような働きをしてくれるので、特にタイムレンジャーやジュウオウジャーのように1文字めがどっしりとしている場合は効果的です。
一方、【「ャ」の上に「ー」】の3作品のうちキョウリュウとキラメイの2作については逆菱形のパターンです。針吹き出し的に元気の良いロゴであり、伸ばし棒も結構自由な形をしています。
そしてニンニンジャーのロゴですが、これは「同列」パターンのゲキレンジャーのロゴとも近しいように思います。
仮面ライダーでいうライダーズクレストが、左側に大きにバーンと入ることで、全体のバランスが整っている。このパターンの場合は台形になっていない、というのもポイントですね。
クロノソルジャーにおいてどれを採用すべきか?
そのためには、もうひとつ判断要素が必要な気がします。
頭文字ごとの偏りをみてみよう
悩んでいたところで、フォロワーさんからこんな示唆をいただきました。
確かに、頭文字の形状によってロゴの全体の形が決まることはありそうですね。試しに並べてみよう。
形状ごとにそれぞれありますが、注目すべきは針吹き出しパターンが「キ」のみであること。考えてみれば、カタカナのキは左上から右下に向かって傾いているので、当然外枠も\←こうなるわけですね。そりゃそうだ。
そして、タやクなどは、字そのものが/←こちらの向きです。なので、台形方と相性が良い。また、ト、リなどの縦線が基本のものや、ゴ、ボ、シなどの四角形のものは、戦隊ロゴにおいては/←こちらの向きに寄せる風潮があるようです。
今回ロゴを作るのは「クロノソルジャー」なので、クです。というわけで、/←こちらの向きで作ってみましょう。
試作①文字の形をみてみる
というわけで、試作です。頭文字によるパターンの考察結果を元に、頭の文字は/←こちら向きとして、台形と平行四辺形の2パターン作ってみます。そして、「ジャー」の処理の考察結果を元に、「ャ」と「ー」の位置を決めました。
まずは台形パターン。無難に落ち着いた感じ。
なんというか、すごいどっしりとしている。元のフォントのおかげもあって、クの安定感がすごい。ただちょっと古臭く見えてしまうのはフォントのせいか?
元にしているフォントそのものはもちろん、文字の間隔や角度などいじれば色々と個性もだせそう。
ただ問題があって、フォント(VDL ロゴJrブラック BK)のせいで、アメリカ横断ウルトラクイズみたいになってる。もう少しいじる必要がありそう。
もう一案。こちらの安定感も捨てがたい。台形パターンと比べてアメリカ横断ウルトラクイズ感も薄い。
ノの形をもうちょっとどうにかしたい欲が出てくるなぁ。クレスト部分含め飾り付け次第ではかなり良いものになるのでは、という予感がする。
ちなみに、
無理やり針吹き出し形式で作ったのがこちら。無理だこれ。アウトラインの取り方が下手というのもあるけど、そもそも「ク」の字はこの形に向いていない。ちょっと油断するとワとかケになる。アイデンティティが薄いぞ「ク」!!! 思春期のクリエイターか!!!
外枠で差をつけろ
文字のメインカラーは赤色として(グラデはあとで考慮)、外枠の色を分類するとこうなる。
やはり赤文字⇒白枠⇒黒枠と載せていくと、それっぽくなるらしい。というわけで。
そ、それっぽいぞ!!! ちょっと試しに裏になんか置いてみたらもう実質完成では!?!?!?
こうすると完全に魔法少女
良い感じですね。裏におくクレストは別で考えるとして、ここからはちょっとフォントをいじっていきましょう。
フォントをいじる
上の試作ロゴは、VDL ロゴJrブラックというフォントを使って作っていました。が、ちょっとまるっこいのとかが個人的に気になるのでいじっていきましょう。
これが
こうじゃ
めちゃくちゃ悩ましい。これで良いような気がするしそうでもない気がする。どうにもこう、「ロノソ」あたりの余白が気になるというか、バランスが難しい。
歴代の戦隊ロゴを見てみると、結構ギュムッとしているんですよね。やっぱりロゴっぽさを出すにはこのギュムッと感が鍵になるんだと思うんですけど……
この辺りのぎゅむっと感、結構好き
……ロノソって、ギュムッとしようがなくないですか。
伝わるかなこの悩み
他の戦隊ってロとかノの処理どうしてるんだろうって探してみたんですけど、なんと歴代の全ての戦隊でロとノは使われていませんでした。マジかよ。俺はなにを道標に生きていけばいいんだ。
とはいえ余白が増えちゃって困る戦隊もあるはずだ! どこかに! と思って探してみました。
例えば上述のタイムレンジャーの「タイ」の部分やジュウオウジャーの「ジュ」の部分などは結構余白が大きくなるポイントです。本家はそこをどうしているかというと……
立体にしていました。これはマジで先人の知恵。確かに戦隊ロゴ、立体になりがち。同じメソッドをクロノソルジャーでも試してみます。
おお!? それっぽいぞ!? とはいえこれだと消失点からどばーんと“生えてる”感じが否めませんね。はじめ人間ギャートルズみたい。
他のロゴと見比べてみると、消失点をもっと遠くして、かつ底面で切ってしまうのが良いようです。
というわけで整えてみたのがこちら。
僕の中の大泉洋が「良い〜〜ねぇ〜〜〜良い感じじゃないの君ィ!」と叫んでいます。ありがとう洋ちゃん。あとはとりあえず置いたグレーをどうにかしたいな。他の戦隊はどうしてるんだっけ? ということで、並べてみました。
メインカラーがオレンジに寄っている場合は青系、赤が強い場合は黒っぽくなる感じですね。メインカラーの補色の明度を落としたような色味になるっぽい? 黒が強い場合は青や白でノイズが入っているようにも見受けられます。
クロノソルジャーのメインカラーは、クロノレッドと同じ♯dc143cを使っています。補色にすると♯14dcb4。とりあえず明度を30%まで下げてみることにしました。
……うーん。ちょっと落ち着いた感じがするけど、なんだかのっぺりとした印象がありますね。
とまぁ、そんな感じであれこれ試行錯誤する最中で、僕は気付きました。グラデーションが重要だと。
♯dc143c単色だったメインカラーを、グラデーションに変更したのがこちら。上が♯dc143c、下が♯dc973c。G成分のみ足した感じですが、一気にそれっぽさが増しましたね。
そして側面の色にはオレンジ系の補色である青系のカラーを採用しました。これも黒へのグラデーションにして、奥行き感を演出。いきなり「それっぽさ」が増しました。ゴールが見えてきたぞ!!!
○○戦隊の処理
既存の戦隊の○○戦隊部分を見てみると、メインの文字と同じく立体で、グラデーションがかかったものが多いようです。やはり立体とグラデーションがカギだ! そして色は黄色系、もしくはメインカラーの補色(オレンジに対する青、赤に対する緑)となるっぽいですね。あと、フォントはゴシック系がメインのようです。更に、トッキュウの列車、ハリケンの巻物、ゴセイの天使の羽のようにメインモチーフをここに含むこともある……と。
とりあえず、文字を立体にしてグラデかけてみよう。
お気に入りの鉄瓶ゴシックで「刻命戦隊」を作って、押し出し効果をかけたりグラデーション載せたりなんやかんやして、えいやっと。
そ、そ、それっぽいぞ!?!? 刻命戦隊が立体になって重厚感が増しましたね。すごいぜ!
ここからさらに装飾を増やしてみましょう。
背景を置こう
クロノソルジャーには、主人公が戦うきっかけとなるキーパーソンがいます。彼の名は鳥居夏彦。それにあやかって、鳥居⛩をつけてみよう。えい!
悪くないバランスです。一瞬ゴセイジャーみたいになった時は焦りましたがそれでもなんとか納めました。
が、作ってる最中に思ったんですが、鳥居って「刻命戦隊クロノソルジャー」の名前となんら関係性がない上、よくよく考えたら夏彦さんがキーパーソンになる前(劇中時間軸的な意味で)から刻命戦隊クロノソルジャーは存在しているわけで、鳥居をモチーフにするのもちょっと違う感があるんですよね。
じゃあ名前の由来である時の神様クロノスにあやかってみるのはどうだろう。クロノスといえば砂時計。なので、クロノレッドの顔も砂時計みたいな意匠が施されています。
顔の中心が砂時計。
というわけで、装飾に使うならちょっとゴテゴテした砂時計とかどうだろうか。いやせっかくだしこのまま鳥居も混ぜて……と、あれこれ試行錯誤するも、うまくいかない。
ビジュアル系バンドかよ
いやーダメだこりゃ。ていうか砂時計、真ん中のクビレがないと砂時計に見えない。普通にやるとロゴとクビレが被っちゃってなにかわかんなくなっちゃう。
ちょっと砂時計から離れて考えてみよう。クロノレッドの胸元には砂時計の砂をあしらった模様を入れていたな。あれを使うのはどうだろうか。
初期デザイン画より。
というわけで、それを置いて作ってみつつ、何回かあれこれやった結果……
それっぽいのが!!! できたぞ!!!
そしてこのタイミングで、横書きロゴの方はどっちかっていうとウルトラマンに近いことに気づいてやめました。
こういうウルトラマンいそう
並べてみよう
ここまで来ればあとは微調整だ! 主に色味の!
試しに既存ロゴと並べてみました。恐れ多いぜ。
なんかくすんでるな? 赤さが足りない気がする。あと、背景がすごい薄い。
とりあえず赤くしてみよう。
あと、背景が薄い。色がっていうか、影が薄い。もうちょいメタリックにしてみる。
くっきりはっきり! これはイケるのでは!?!?
良い感じだ!!! というわけで!
完成
刻命戦隊! クロノソルジャー!
というわけで、無事に完成しました!
かっこいー! 最近の若くて元気な感じとはちょっと違う、90〜00年代の戦隊って感じですね。その辺は育った世代が原因な気がします(ジュウレンジャー育ち)
なにはともあれ無事にできてよかった!
今回の学びとしては、
① ロゴの概形は頭文字によって決まる
② ライダーは斜体ベースだが戦隊は台形
③ ジャーの処理は伝統の技
④ しのごの言わず立体化せよ
⑤ 最終兵器グラデーション
⑥ 赤けりゃ赤いほど良い
⑦ 背景はゴテゴテ&メタリックが正義
めちゃくちゃ時間がかかったけど満足のいく物が作れて嬉しい限りです。さて書籍化作業ガンバルゾー。書き下ろし書き終わってないからガンバルゾー。
note本編での連載も続いていきます。興味持っていただいた方はぜひこちらへ! ついでにフォローしたり拡散してくれたら嬉しいな!
それではまたお会いしましょう! ちゃお!