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「ヘンリ・ライクロフトの私記」を読んだ。

「ヘンリ・ライクロフトの私記」を読んだ。

興味を持ったきっかけは、北方謙三氏が旅先に持って行って読む本として挙げていたからだ。ハードボイルドや水滸伝、三国志のような人の生き様を描く作者が読む本としては、意外に感じられたからだ。

そして、もう一つ興味深かったポイントが、「かつて貧窮で生活にも苦しんだヘンリ・ライクロフトさんが、知人の遺産を相続した事からまとまった金銭が入る事となり、安息の生活を送っている」という設定。この人は架空の人物で、ギッシングさんの創作。

ギッシングさん自身は、若い時から亡くなるまで貧窮に苦しみ、家族との縁も上手く行っていなかったようだ。だからイギリスの風光明媚な田舎で優雅に暮らしている架空のヘンリライクロフトさんに、夢を託して書いたように思える。

春・夏・秋・冬の4つのパートに分かれていて、文章もそれに合わさるかのように、春は周りの樹木や鳥のさえずりへの愛情等の自然賛歌的なものが多く、読んでいて心が和む。秋以降は、思索的な文面が多いように感じて、言葉が理解できない所も多かった。

春・夏のパートでは、自然を愛する気持ちがあふれていて、とても気持ちがよく、所々で感動的な言葉に出くわす。

秋・冬は、正直あまり記憶に残っていない。しかし最後に冬から春の訪れを書いている際には、やはり感動的な言葉が出てくる。

「私は、自分の生涯を着実に完成された長い1篇の作品ー1篇の伝記、欠点は多いかもしれぬが、自分の最善を尽くした伝記、と願わくは眺める事が出来たらと思う。そして私が「終わり」という最後の言葉を吐くとき、やがて来るべき安息を、ただ心中満足の念のみをもって喜び迎える事が出来たらと思うのである。」(本からの引用)


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