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20190618 『痛みを感じない傷』

また
やっちまった。

親父と大喧嘩。

何故、僕は父に暴力を振るえないのだろう。
何故、僕は殺せないのだろう。

消えて欲しいと、
幾度願ったか。

全て、全て吐き出したか?

代償に

僕は最近、物に当たる。
物というか、

『家』だ。

きっと、
親父≠家なのだろう。

壁を殴って穴を開けた。

不意に振り回した右手はガラスを割った。

血に染まる腕で、

父に問うた。

「親父が守ってきたものはなんだ!?」と。

薬が回る。

父には酒が回る。

「こんな『家』壊れてしまえ!」

と叫んだ。

本心だろう。

バラバラになった方が『楽』だ、と。

家を飛び出す。

次男が僕の襟元を力強く掴む。

「家を出るな。怪我してるんやで」と言った。

その口調は優しさと怒りの混じった、実に弟らしい感情を感じた。

「家に居たくないねん」

車のキーを取った右手を見る。

商売道具だ。

今まで、
右腕をケアしてきた。

その大切な
『手』は血が流れていた。

「ごめん」と母と弟に言う。

手を離されて、家を出て、歩き出す。

暫くして弟の叫びが聞こえる。

ごめん。

夜中にふらふらと歩き出す。

気づけば広場にいた。

幼い頃から野球を辞めるまで、
毎日居た場所だ。

段々とその景色は変わっていく。

僕らの遊んだ入口の木々は切り株に変わっていた。

腰を据えて、空を見上げる。

月夜に涙をこぼす。

「死にたい」

働きたくとも、稼ぎたくとも、
コントロールの効かない軀。
こんなどうしようもない軀と心。

抑制が効かない。

「迷惑をかけている」

「生きている事が負担になっている」

それを必死に、どうにかしようと
40錠の薬と栄養剤3本で
足掻いてきた一週間。

つけが溜まっていたのかもしれない。

この広場には緑の大きな壁がある。
丁度、大人のストライクゾーンの高め一杯ぐらいの位置に
白いラインが引いてある。

遊ぶ相手が居ない時、ボールの壁当てをして、
段々とそのボールは緑に染まって、凸凹がなくなっていく。

コントロール無視で遠投を続けて、届いた時は嬉しかった。
次はその白いラインを狙って、投げ続けた。

どんな時もその壁は『受け止め続けてくれた』

壁に触れる。
思い出が僕を支えてくれた。

次がある。
明日が僕にはある。

『死なせて欲しい』と、

大地に風に月に祈った跡、

『生かせて欲しい』と願う。

右手の傷は深くない。

明日もまた絵が描ける。

そう、それだけでいい。

今はそれだけ。

言葉が小さな声でしか伝えられない。

父が待っていた。

「ごめん」

言えた。

穴が空いた壁に、

小さな僕のシルクスクリーンの処女作を飾った。

レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンのオマージュ。
モデルはパトロンの奥さんが死んだ時に描かれたものだとか。

やっちまった『家の傷』に「ごめん」と声に出さず言う。

感情の抑制が効かない。
拒絶したいものへ近づくと軀がピリピリする。

「明日、動けるだろうか」、と毎日動けない事への恐怖との戦い。

「きっと、多分、大丈夫。」

そう、願って夜を超える。

#gdgd日誌 #長文 #生存報告

#悲しみ


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