ニワトリ使いデビュー
見事、オーボエの座を勝ち取った僕は必死になって練習した。
楽譜は読めない、クラシックなんて聴いたことない。
リズム感も無ければセンスも無い。
そんな高校一年生。
入部した吹奏楽部は、楽器経験者だらけで、みんなの話している音楽用語はドイツ語だったりイタリア語だったりで最早、外国にいる気分だった。
もちろん楽器も上手い人がいっぱい。
オーボエという楽器は、木管楽器で最も演奏するのが難しい楽器としてギネスブックにも載っているらしい。
つまり。
初心者が吹くと悲惨な音が出るわけ。
ニワトリの首を絞めたような音
発情したコアラがメスを追いかけるような音
チャルメラの方がまだマシなのでは、と思うほど地獄のような音しか出ない。
「嘘だろ、、、」
ギターはある程度の音作りを学べばそれなりの音が出せる。
けど管楽器は違う。
身体や口の形
息遣い
イメージ
楽器の状態
そのどれが欠けても良い音にはならない。
難し過ぎんだろ。
なんだこれ。
リコーダーの方が遥かに簡単なんだと気づいた。
オーボエを始めて数ヶ月経っても、全く音は良くならないし音程も合わない。
そのころサックスやフルートを初心者で始めた同級生は、それなりに吹けるようになっていた。
他の部員と一緒に音を出すのが恥ずかし過ぎる。
渡された曲はどれも意味不明な程に音符が並び、楽譜を読む前に目玉が真っ黒になった。
唯一なんとか練習できたのが、運動会で演奏する『得賞歌』(特賞歌だっけ?)
ちゃーんちゃーちゃちゃーちゃー
という荘厳な音のはずなんだけど、僕のオーボエからはニワトリの音しか出なかった。。。
「このままではニワトリ使いになってしまう、、、」
焦る焦る。
ただただ焦ってひたすら練習した。。。
それでも
夢のオーボエ生活は一向に訪れる気配もなく、夏になってしまった。
夏は吹奏楽の本番。
夏のコンクールが開催される。
続く。
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