好きなもの。OKOJO。
たまに予定よりも早く目的地に着く事がある。たまに予定していた電車に乗れなかった事がある。イヤホンから流れてくる音楽に合わせて歩くから。
音楽を聴きながらそれに合わせて街を歩くと、その曲が主題歌の映画の主人公になれる。出来る事なら思いっきり唄いながら歩きたい。みんながみんな、Carly Rae Jepsenの 「I Really Like You」のMVのトム・ハンクスみたいになれたら今よりも少し、幸せになれる気がする。
そんな事を考えながら歩いていたら今日も予定していた時間よりも早めに新宿に着いた。そんな時は決まって行く場所がある。タワーレコード。
CDショップには「試聴」という、販売しているCDを丸々聴けるクレイジーなシステムがある。東南口を出て斜向かいのビルに入ってエスカレーターを駆け上る。近づくと同時に見えてくるお馴染みの黄色。嗚呼、幸せの黄色いタ(ハ)ワ(ン)レ(カ)コ(チ)。
8階。エスカレーターを降りて正面、最新のランキング紹介やタワーレコード新宿店がおすすめするアーティストごとに店員さんが紹介文を書き、作り上げてくれた楽園。
Make you free 永久に碧く。
そこにあるほぼ全てのCDが試聴出来てしまう。お金はどこに払えばいいですか?
その中でも特にお気に入りなのが、全国初流通盤や新宿店にしかまだCDを置いていないアーティストを紹介しているコーナー。
この場所で片っ端から試聴していって、上手に言えないけれど聴いた瞬間に「ああっ!!」と感じるアーティストと出会うために通い続けている。
理由も特にないけれど「多分僕はずっとこの人たちの曲を聴き続けていくんだろうな」と何故か確信出来る人たち。写真やCDジャケットを見て、勝手に頭の中で先に曲を想像してしまっている僕を、両耳からぶん殴ってそれを簡単に覆してくれる人たち。よくぞ紹介してくれましたありがとう、と店員さんを抱きしめたくなる気持ちにしてくれる人たち。
ああもう最後か。DISC10。今日はそんなだったかな。最後はこの3人か。オコジ、オコジョ?OKOJO?オコジョか。OKOJO。
OKOJO「能あるオコジョは牙を隠さない」
なんにもわかんないな。再生。
イントロで撃ち抜かれた。これだからやめられないんだ。この瞬間があるから。
一瞬で耳と心を掴まれた。初めて聴いたのに、まるで昔からプレイリストに入っていていつも傍に寄り添ってくれていたかのような心地よさ。
ソファ。
どれだけ自分が良いと思った曲を他人に薦めたとしても、それを気に入ってくれるとは限らない。
それでもより多くの万人に受け入れられる、好きになってしまってから言うそれは無論主観の塊以外の何物でもないけれど、そういう可能性を確かに感じさせてくれるグッドメロディ。それを初対面の第一声からぶちかまされた。
あとはデートを重ねてもっともっと知って大好きになるだけ。
”駅前の本屋はコンビニになったらしい
無くなってからしか思い出さない僕には
寂しく思う権利もないけれど”
(遮二無二に恋しない)
そんな事言うなよ。
恋人と離れ一人になっていろいろやっと気づいた彼の曲。メロディの楽しさ溢れるスーパーキャッチーさからは想像できないくらい未練がましく彼女のことを想いながら後悔してる。
そしていとも簡単に僕の心を掴んだ美しきイントロは、アウトロになるとその意味を変えて僕の心をまた掴む。
「もうわかったから。いろんな事があったのは知ってるさ。気持ちはわかるけどさ。切り替えていこうぜ」
最後のギターソロはまるでそう勇気づけてくれているように聴こえた。っていろんなことを頭の中で巡らせてたけど聴いてたらとりあえず笑顔にはなってたわ。みたいな曲。
”たまにでいいから思い出してよ 数ある中の一つとしても
君への想いに嘘は無いから
僕がいなくても寂しいとか これっぽっちも思わないんだろな
君は僕の殿堂入りさ”
(殿堂入り)
止まらないな。
でもこれこそがOKOJOの節だったりもする。もののふ。めちゃくちゃ爽やかでキャッチーなメロディが時には引いちゃうくらいの男の本音というか未練というか。も気づけば癖になってそれを行儀よく待ってる自分もいる。
「コンセプトは決めてはないんですけど、僕が作る歌が大体もう、なんというかラブソングというか、何かしらの恋愛だったりとか唄った曲が多いんで、そうなっていくのかな、そういう風に見られるんかなとは思ってます」(オコジョの生態Vol.20~松下ラジオ初出演編~・バンドOKOJO)
メンバー構成は、まつした(Vo/Ba)、でんでん(Gt/Cho)、ヤマトマン(Dr/Cho)。
ギターのでんでんさんは
その巨躯からは想像出来ないほどの繊細さで聴き手に泣きを喰らわせてくれる。
その巨躯からは想像出来ないほど虫が嫌いらしい。
ドラムのヤマトマンさんは
キックとスネアの両親から生まれて演奏したくてしたくてたまらなかったにも関わらず、とある理由から昨日まで全くドラムを叩けなくて、ようやく今日!やっと叩ける!いよいよだ!この瞬間を待っていたんだ!
ってくらいに楽しそうに演奏してくれるからこっちまで笑顔になる。
聴けば聴くほど心地よさを増し、これじゃないとOKOJOじゃない、と気づけば耳までどっぷり浸かっているのが、まつしたさんのその声。
少し鼻にかかったような、聴き手に話しかけるように唄うその声。
決して腐すわけではないけれど、彼よりも格好いい声、かわいい声、憧れる声を持つボーカルはいくらでもいると思う。
それでもただ聴いていたい、それでもただ耳元でずっと話していて欲しいような心地よさを持った声。たまらない。
まつしたASMRを僕は待っている。
”そう何度でも何度でも 君を惚れさせてみせるからさ
そんな寂しいことは言わないで僕のそばに来て 手を取り合い未来の話をしようよ
そう何度でも何度でも 君を惚れさせてみせるからさ
恋の期限は三年と言うけれど関係ない 記録更新しよう”
(何度でも)
決定した。
今までの人生の中で何回か決定した時がある。
「多分僕はずっとこの人たちの曲を聴き続けていくんだろうな」
あの瞬間。聴いた途端に目を閉じてヘッドフォンから両耳へ伝わってくるその音の一つ一つを噛み締めて、メロディに合わせて心臓が鼓動する度に体が熱くなっていって気づいたら何か確信を得たような笑みを浮かべてしまっているあの瞬間。
ふと芽生える「あ、これ好きかも」を探して僕は今日も、聴こえてくる音色に歩調を合わせながらタワレコに行く。
(バライッニットユゥテルユーサムシッ)
アイリーリーリーリーリーリーリーリーリーリーリーリーライキュー!!!
エナワンチュー!!ドゥユウォンミッ!!ドゥユウォンミットゥッ!!!!
けど外出は極力控えなければならないのでまだ行かない。
AppleMusic「能あるOKOJOは牙を隠さない」
OKOJO official