職場は歩いて数分の場所にあるのだが
職場は歩いて数分の場所にあるのだが、その数分歩くのさえも躊躇われるような雨が昼過ぎに降った。文字通りの土砂降りで、止み間を待ってはみたものの埒が開かない程の降りようだった。仕方なく外へ出る。古いマンションの玄関は些か滑りやすい。慎重に足を運ぶ。建物を出てまもなく水たまりにぶつかる。というより歩道全体が既に水たまりで、避けようがない。ビニールで出来たカーキ色のビルケンは、これで音楽フェスに行こうとしてコロナ前に買ったものだ。結局運営側からの「出来れば履き慣れたスニーカーなどで」という注意書きに従ったため普段履きになったが、こういう日には実に役に立つ。ぎゅむ、ぎゅむ、と歩く度に、ビルケンを踏む度に水の中で音がする。子供の時以来だろう。信号待ちの間も雨は容赦なく全身を包む。プールだと思えば大したことはない。ぎゅむ、ぎゅむ。濡れたって一向に構わなかった頃。濡れること自体が遊びだった頃。あ、今自分少し笑ってる。こんな雨の中で。
職場のエントランスで傘を払うと滝のように水が落ちた。クロップド丈のジーンズは膝から下がずぶ濡れだ。この後15分もすればきっと晴れてくるのだろう。いよいよ梅雨明けだ。