映画レビュー「グラントリノ」C.イーストウッド代表作。どのように見るべきだろうか!
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このグラントリノという映画は、3つのことを知らないと何をあらわしているのか!意味がぼやけてしまう。今のアメリカという国を知るうえでも、知識として身につけておいた方が良いだろう。
*知っておくべき3つのこと
⑴この映画の背景。それは「デトロイト」という町の歴史!
⑵映画の主人公が、朝鮮戦争に従軍していたこと。この朝鮮戦争とは!
そしてその後のベトナム戦争!
⑶死期を悟った主人公。彼が最後に求めたものは何だったか?
*あらすじ
(見た方は飛ばしてください)
デトロイトの町に長年暮らす主人公コワルスキー。自動車会社フォード車を定年退職していた。ある日のこと、突然妻を亡くす。葬儀があり、身内のもの.親族.友人.近隣者が集まった。妻は敬虔なクリスチャンで、カトリック神父に夫のことを「よろしく頼みます!」と言っていたようだ。
しかし、頑固者で、嫌われても平気なコワルスキー。息子や孫そして神父と馴染めない。そんななか隣に引っ越してきた家族がいた。見慣れぬ東洋人の一家。主人公は「嫌な奴らが来た」と思う。彼らは、ベトナムやタイ・ラオスに住むミャオ族の一派「モン族」の人たちだった。
主人公の住むデトロイトも、経済は空洞化し、衰退の流れはどうにもならない状況。貧しい人たちの流入が増えつづけ、スラムといえるような状況となっていた。
隣家の息子タオ。そのイトコに「半グレ」がいた。この悪ガキが、タオに仲間にはいれと言う。イトコは、コワルスキーの愛車「グラントリノ」を盗みだすようそそのかした。押しいったタオ、主人公に見つかり逃げ去ることに…。
しばらくして、親に説得され、改心したタオ。コワルスキーに謝りに行く。タオに、様々な仕事をさせ、それができたら許すとした。なんだかんだで、キチンと仕事を済ませたタオ。それをみて、少年を見直したコワルスキー。
コワルスキーは、タオが将来働ける場として、建築会社を紹介する。しかし、しつこくタオを仲間に引き込もうとするイトコたち。最後に、コワルフスキーがとった解決策…。それは何だったか!
*基礎知識⑴デトロイト
アメリカの中西部五大湖に面した地域は、かつてはアメリカ経済を牽引してきた製造業・重工業の町だ。人々は、この地で真面目に働ければ、高卒でも庭付き一軒家を手に入れることができた。そんな街に、1980年代になると陰りがでる。経済のグローバル化の流れで、徐々に仕事はなくなり、貧困層が目立つようになった。
デトロイトも、1950年は人口185万人の都市だったが、2010年には70万人に減ってしまう。空き家が目立つようになり、そこに移民として入ってきた人たちが住むようになった。
車のフォード社も、世界ナンバーワンの自動車メーカーだったが、この時には既に海外の車との競争にも破れてしまう。かつての労働者たちは、そのプライドを傷つけられた。この映画のタイトル「グラントリノ」は、最もフォード社が力を持っていた時代の象徴ともいえる大衆車だった。
*基礎知識⑵朝鮮戦争とベトナム戦争
北朝鮮を支援した中国とソビエト(現ロシア)。社会主義陣営の拡大を阻止しようしたアメリカとの戦い。1950年にはじまり、1953年に南北間で休戦協定が成立したが、いまだ決着していない。
インドシナ半島のベトナムで、1955年から20年続いた戦争。社会主義勢力が、ベトナムを支配することに対し、アメリカが対抗した戦いである。ソビエトと中国が、北ベトナムを支援し、アメリカが南ベトナム軍にアメリカ兵を送りこみ、社会主義陣営の拡大を阻止しようとした。
多くのアメリカの若者たちが、朝鮮やベトナムに送り込まれ、犠牲となった。生き残ったものも、その大半は精神を病んでいるという。
*基礎知識⑶死期を悟り…
少年の名前「タオ」、これには深い意味がある。道教でいうところの「Tao」は哲学用語だ。道徳的な規範や、真実の根源を意味している。
主人公コワルスキーは、重い病いを患い死期を悟った。隣家の少年タオにたいし、人としての道を示したと見ることができる。
まとめ
デトロイトを含め、アメリカ中西部一体を「ラストベルト」と呼ぶ。ラストとは、サビついたという意味だ。主人公は、かつて仕事で築いた誇りを失い、また朝鮮戦争で子供をあやめたことを引きずって生きてきた。
東洋人の少年タオに、社会で生きる術を教えること!それが主人公コワルスキーの最後の道だったといえるだろう。この悟りを得たことが、主人公の何よりの救いだったことに間違いはないと言える。
この映画「グラントリノ」、今現在のアメリカ社会の問題を、我々に投げかけている。また主人公が、次世代の若者に手を差しのべている姿には、感動を覚えた。やはりこの「グラントリノ」は、名作と言っていいだろう。