見出し画像

豆腐メーカーの新戦略、『豆腐バー』がヒット、その理由とは?

#ビジネス #アサヒコ
#池田未央 #豆腐バー

大豆製品は昔から何でも食べている。豆腐や納豆、がんもどき、豆乳などだ。だが最近発売された「豆腐バー」については知らなかった。今かなり売れているらしい。さっそく食べてみようとは思っている。

*豆腐業界、その現状とは?
日本社会は高齢化してきている。歳をとると誰にでも言えるのは食が細くなるということだ。あまり量を食べられなくなる。豆腐もその一つのようだ。毎年毎年、豆腐の売上げは5%ずつ減っている。まだスーパー等の量販店などではやたらとプライベート製品を売り出している。こちらはこちらでメーカーとしては利益が少なくなってしまうのだ。

ところが一方では、プロテイン飲料やサラダチキンのようなタンパク質食材は売れていると言う。健康ブームが後押ししているようだ。アスリートだけでなく、一般人にとってもタンパク質食品を毎日摂る人は多い。豆腐は和食の代表食材だが、よく考えてみれば、これもタンパク質食材。問題はどうすれば、この大豆製品の売上げをあげていくかだった。

*豆腐メーカーに入社した仕掛人
2018年に入社した池田未央(現:代表取締役社長)。マーケティング本部長として業務に携わる。入社して3ヶ月後、米国への出張となった。アメリカ市場で見たものは驚きだったようだ。スーパーにいくと、豆腐が3段階の硬さで分けられて売られていたと言う。日本人が食べているのが「S ILKEN)、少し硬くなったのが「FIRM」、とても硬いのが「EXTRA  FIRM」とされていた。そして、米国では豆腐の売上げが年々伸びているというのだ。

日本に戻った池田未央。この硬い豆腐が売れるのではないかと考えたと言う。さっそく社内でこのことを発表し、開発メンバーを募った。ところがほとんど全員から反対されてしまう。「豆腐を冒涜している」という社員まであらわれた。仕方なく、理解を示した1人の社員とともにイチから開発していくこととなる。

*コンビニへの売込みが契機?
試行錯誤のうえ、ようやく試作品作りに成功する。それをコンビニ大手のセブンイレブンに持っていったと言う。社内では誰も受け入れてもらえないだろう!そんな空気だったようだ。ところがセブンイレブン側が、面白いとみた。ただし2つの条件を付け加えた。

まず第一は、チキンサラダ並みに硬くすること。第二は、タレ汁が漏れないことだった。会社に戻り社員に報告すると、今度は全員が協力するようになったという。豆腐の硬さは、圧縮を強くすればできる。タレ汁は乾燥させることでクリアした。

*爆発的な大ヒットとなった!
2020年に販売を開始した豆腐バー。今年(2024年)には累計7500万本も販売したという。売り場は「サラダチキン」と同じ棚だった。手軽に食べられるタンパク質食材。あまり時間をかけらずに食べられるうえ、価格も「サラダチキン」より断然安い。そんなところが大ウケしたようだ。

開発をすすめた池田未央。アサヒコに入社する前は、お菓子メーカーでさまざまな製品開発をやった人物である。「のど飴」で人気1位となった「キシリクリスタル」や東京駅、土産物お菓子で5年連続ナンバーワンとなった「メイプルマニア」も、この池田が開発したものだった。

*ヒット商品開発のポイントは?
池田いわく、素人目線だからできたと言う。同じ業界のなかで、長く仕事をしていると、どうしても固定観念に縛られる。これが新たな発想や着眼を邪魔するのだ。逆に別の視点で捉えることで、全く違ったものができると言う。

社長になってからも池田は、以前通りのデスクで仕事をこなしているようだ。その方が周りの社員との意思疎通もでき、社員が何をやっているかもよくわかると言う。これはやはり女性の持つ頭の柔らかさにあったのではないだろうか。そんな考えに至った。

*アサヒコ、今後の展望は?
1972年創業、社員数480人のアサヒコ。直近の年商は126億円だという。すでに食堂もオープンしているようだ。恵比寿にある「豆富食堂」では、さまざまな豆腐料理を提供している。硬めの豆腐であれば、肉の代わりにもなり得ると言えるだろう。肉と違い、脂質がない分よりヘルシーとも言える。

社長の池田によると、すべての食材を大豆ミートにする考えのようだ。また最近では「飲む豆腐」も開発している。メリットは消化吸収が早いこと。さらにこれをレトルト化できれば、常温でも保存でき、災害時の非常食にもなり得るだろう。

*まとめ
「豆腐バー」のラインナップは11種にもなったと言う。さらに、豆腐そのものも付加価値をつけてつけようとしているようだ。青森県五所川原で獲れる大豆「おおすず」。これは香り豊かで、タンパク質も多いという。この大豆で作った豆腐により、旧来の価格より10円20円引き上げて売りたいと話していた。なにせ豆腐の平均単価は、100円を切っているためだ。

ビジネス成功の鍵は、頭を柔軟にした考え方と、積極的な売り込みあったのだろう。そんな池田未央の考え方は「目から鱗」だったと言える。たぶんアサヒコの社員全員がそう思ったのではないか。

いいなと思ったら応援しよう!