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ささやななえさんの怖い作品(3)
先日お亡くなりになった漫画家のささやななえ(ななえこ)さんのホラー・ミステリー作品をご紹介しています。
水面の郷・水底の守
『たたらの辻に…』の道子と清美の再登場です。
清美は九州福岡に修学旅行。
山上教諭はひそかに清美に気があって、こっそり写真を撮っている。もちろん立場上、気取られないように気を付けてはいるのだが。
旅館の庭に祠があり、卵型の石が祭られている。霊感のある清美はその石から妖しい気を感じていた。
清美は旅館の従業員から、その石はエビスさんと呼ばれており、昔漁師だった旅館の先祖が、豊漁祈願に海から拾ってきたという話を聞いた。
石が血を流すという不吉な伝説もあるらしい。
山上教諭は夜庭に出て石の祠の前にいた女生徒たちを注意した。その時、石から赤い血のような液体が流れ出ていることに気づく。女生徒たちは悲鳴を上げて逃げ出すが、山上は庭石に躓き転んでしまう。
取り残された山上が恐る恐る石を見ると、血の吹き出た場所から光の塊が飛び出て彼女の体を貫いた。
近藤家に昔から伝わる霊剣が鳴動しているのに気づいた道子。霊剣の使い手の清美に異変があったか。不安になった道子は剣を持って九州に駆け付ける。
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何かに取りつかれた山上を追って、清美たちは玄海沖の外神島へ。そこで、謎の海底遺跡を発見する。あの旅館のエビズさんを大きくしたような謎の石がその中心に祀られていた。
その石に操られた山上は、霊能力を持つ清美の体を狙う。山上は石ではなく神の卵だという。その復活のために清美が必要なのだ。
宗像大社の沖ノ島のそばにあるという外神島はもちろん架空の島です。
九州だけで話が終わるかと思いきや、伊豆諸島の神津島の東に海底火山の噴火によってできた新島をクライマックスの舞台にするなど、スケールの大きな話になっています。
因みに九州の沖ノ島も神津島も、浜の石一つでも持ち去ってはならない禁忌のある島です。
さて、あの卵の正体とは…。
(プチフラワー昭和63年3~8月号掲載。単行本『水面の郷・水底の守』収録)
生霊
実は、この作品は好きでないのです。というのも、筆者の大嫌いな独りよがりな人間が主役だからなのです。(そんな人間、好きな人はいないと思いますが)
高校生の浅茅は独りよがりというか、他人の心を推し量れないタイプの女です。独りよがりの中でも始末の悪いストーカータイプの人間です。自分が好きなら、相手も自分のことを好いてくれるに違いないと勝手に思い込むタイプ。
ちょっと優しい言葉をかけてくれた同級生の男子を、自分に気があると勘違いします。彼には付き合っているガールフレンドがいることなど、まったく気にしないのです。邪険にされても、どうしてそんな態度をするのか理解できないのです。
そのうえ、なんと彼女は生霊を飛ばすのです。生霊ですから、相手がどこで何をしていようが、逃れることはできません。
見込まれた人間は全員もれなく不幸になります。そのくせ彼女は全く無自覚なのです。
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そんな最凶な女が出てくる本作品は、映像化したそうですが、筆者はもちろん観ていません。う~~~、やだやだ。
(ASUKA昭和61年9月。11月号掲載。単行本『生霊』収録)
鉄輪
嫉妬にもいろいろな種類がありますが、この作品では恋愛にまつわるもの。
水沢みどりは同級生の嵯峨和樹に片思い。自分の思いが届くよう心で念じている。
その嵯峨は従妹でやはり同級生の橋本ちえ子とつきあっている。彼女は美人だがとても嫉妬深い。嵯峨がほかの女生徒と口をきいただけで飛んでくる。みどりも嵯峨のことを見ていただけでにらんでくる。
そんなだから、みどりは自分から嵯峨に告白できない。いつも心で念じるだけ。テレパシー能力を開発しようと、家でトレーニングしたり…。
そんな片思いだけのみどりに対しても、ちえ子は許せないらしい。彼にちょっかいを出すのはやめろと言いがかりをつける。
橋本ちえ子なんて大っきらい!
あー、せめて夢の中だけでも嵯峨君がでてきてくれますように…
翌日、みどりは突然嵯峨から声を掛けられる。しかも、自宅にも電話をしてきて、つきあってほしいといわれたのだ。ちえ子は従妹だし、家が隣だから一緒にいるだけだとも…。
みどりと嵯峨は公然とつきあい始める。
すまないのがちえ子だ。嵯峨に拒否された彼女は、ある日とんでもないことをする。教室の窓に座り、嵯峨に声をかけた後、窓から飛び降りたのだ。
即死だった。
その日から、嵯峨は元気がない。毎夜、窓の外にちえ子が現れて、中に入れてと声をかけるのだというのだ。もちろん、それは夢の中のことだけれど。
そして、ある晩とうとう窓を開けてしまったのだ。
みどりは夢の中で嵯峨が眠っている姿を見る。嵯峨の体の上に座っている白い人影…。あれは橋本ちえ子?
嫉妬の心は誰にもあります。ちえ子の悋気は度を越していますが、それではみどりはどうでしょう。
水沢さん…
あなたの正体
わかっていたわよ
(ASUKA昭和62年10月。11月号掲載。単行本『生霊』収録)