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アートスポットを巡るバス旅(前)江之浦測候所
友人に誘われて日帰りバスツアーに参加しました。
新宿西口を出発して最初に向かったのは、小田原市江之浦にある江之浦測候所。測候所?変わった名前。初めて聞いたときは、何かを観測している所かと思いましたが・・・。(富士山測候所みたいな)
小田原文化財団 江之浦測候所は美術家杉本博司氏の構想を元に造られた野外型の美術館です。展示物だけでなく、建物そのものもアートの一部になっていて、それを散策しながら楽しむことができるようになっています。
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鎌倉建長寺の明月院の門だった
関東大震災で倒れ、解体されて人手に渡り
根津美術館の正門として長くあったが、美術館建て替えを機に
平成十八年に江之浦測候所に寄贈された
入場するときに立派なパンフレットが手渡されるのですが、それを見ると敷石一つにまで様々な来歴があり、これを一個一個確認していたら、一日たっぷりとかかってしまうでしょう。
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杉本博司書
元はミカン畑だったという山の斜面に造られた美術館は、当然日当たり良好で眼前に太平洋が広がります。朝はこの海から太陽が昇ってくるのですが、この日の出を取り入れたアート作品が江之浦測候所を代表しています。
例えば一番大きな施設である全長100メートルの細長いギャラリーは、夏至の日の出の方向に延びています。
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右の壁は大谷石
ガラス面は柱が一つもない
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全て海と空のモノクロ写真
(ガラスが入っているため外の風景が映りこんでいます)
このギャラリーの下を交差して造られているのが「冬至光遥拝隧道」。江之浦測候所の多分一番重要な施設だと思います。
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手前の円形石舞台の中心石は石灯籠の礎石
周囲に放射状に敷かれている石畳は京都市電で使われていた
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上から自然光が注ぐ
この石井戸は中世の頃の物らしい
中に光学ガラスの破片が入っている
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光が強くて見えないが、海と空が見える
冬至の太陽はこの隧道に光を投げながら登ってゆく
このほかにも太陽を遥拝する作品があり、これが測候所という名称の由来なのかなと。
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上から見ると三角形に見える
海に向いている三角の頂点は春分秋分の正午の太陽の方向を向いている
石組の下が古墳の石室のようになっている
この中に本物の古墳の石棺の一部が入っている
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この石舞台は能舞台と同じ寸法で作られ
舞台に続く石橋は春分秋分の朝日が相模湾から登る方角に一致する
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この舞台は冬至の日の出の軸線上にある
懸けづくりの木組みの上に光学ガラスの板を敷き詰めている
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アーチの上のレリーフはベニスの商館のファサードの飾り
生命の樹を表す
12~13世紀ごろ
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た、高い!コエェェ~
かなりへっぴり腰ですが・・・
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これは根府川海岸の海中に沈んでいた石
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その右は内山永久寺にあった十三重塔
内山永久寺は大和の石上神宮の神宮寺だったが
明治の廃仏毀釈令により廃寺に
日本の庭園や古い家屋、またはこの美術館のために造られた茶室もあります。斜面や曲がりくねった小路、樹木の影に隠れ、進むことによってそれらが現れてくる仕掛けです。
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鎌倉時代
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鳥居の踏込石は古墳の石棺の蓋
柱には古代の矢の跡があるらしい
この茶室や石の鳥居の方角も、春分秋分の日の出の方を向いています。太陽を遥拝できるように、その方向にはさえぎる物が無いように配置されています。
藤棚の先から細い山道を下ってゆくと蜜柑や檸檬のなる畑があり、その一角に昭和30年代に造られたミカン畑の農機具小屋があって、「化石窟」と名付けられています。
中には農具がそのまま残っている他、化石が展示されています。
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屋根の一部は透明な天窓に変えられている
はがしたトタンは茶室の屋根に転用されている
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古代の彫刻みたい
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化石窟の下には竹林が広がっていて、さらに下っていけますが、帰りの体力や集合時間が気にかかり、やめておきました。(^^;)
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上の部分は原爆で吹き飛んだ
この宝塔は広島市の爆心地近くにあったという
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2022年に勧請された新しい神社
海を拝する
森の中にも石仏たちが。これらは大阪の実業家、細見亮市が収集しました。
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この日は十二月にしてはとても暖かく、風も殆んどない穏やかな天気でした。もっと時間があれば、石の上にでも座って、のんびりと海を眺めて時間を過ごすのも良いなぁと思いました。
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江之浦測候所は階段や飛び石の道が多いので、歩きやすい靴で行ってください。ヒールの高い靴はやめておいた方がいいです。
ツアーには杖を突いていらっしゃる方もいましたが、車椅子での観覧は無理です。
一部飲食自由ですが、ごみ箱は野外に無いので必ず持ち帰るようにしてください。
この施設はまだ未完成だそうです。どんなふうに変化していくかも楽しみです。