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「おしゃもじさま」とは?
偶然出会った謎の神様
昭和のくらし博物館に行った帰り道、駅に向かう途中の閑静な住宅街にその祠はあった。
昭和のくらし博物館を訪ねて|土偶子|note
鳥居があるので、神社だというのは分かる。しかし、ご祭神を書いた額も看板も説明板もない。
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祠の中には石柱があるが、近寄って見ても何も彫られていないようだ。それとも風化により消えてしまったのだろうか。
榊が供えられており、なぜかしゃもじだか箆だかが石柱の前に置かれている。しゃもじに何か字が書きつけられている。
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答えは地図アプリが教えてくれた。ありがとうgoogle map.
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道祖神おしゃもじさま・・・だそうだ。
大田区のホームページによると、元々は風邪をひいたときなどに供え物の餅を食べると治るといい、完治したらしゃもじに名を記入して奉納するという信仰があったらしい。それが現在は、しゃもじが風邪に効くという風に変化したとか。
それで、祠にしゃもじがあったわけである。
しかし、なぜしゃもじが咳の神様なのだろう。
ミシャグジ⇒おしゃもじ
おしゃもじとはミシャグジという神と同一だという。ミシャグジは村落の産土神とか道祖神として祀られることが多い。多くはご神体が石であることから、「石神」ではないかという。
「サク」「シャグ」「サゴ」「ジョゴ」など、発音のヴァリエーションも多く、「おしゃもじ」もその一つ。漢字では「御左口神」「御射宮司」「御作神」「石神井」「尺神」など、これもいろいろ。
ミシャグジは縄文時代の石棒と石皿をご神体としていることも多い。石棒は男性のシンボル。石皿は女性のシンボルである。(石皿は失われて、石棒だけのことが多い)
ミシャグジの祭祀で有名なのは諏訪大社だ。諏訪大社の主神タケミナカタ神が祀られるよりも前から、ミシャグジは信仰されていたという。
ミシャグジは風邪、咳、夜泣き、安産、子授けなどにご利益があるという。
それにしても、ミシャグジとおしゃもじでは似ているようなそうでないような。なぜ「おしゃもじ」というのだろうか。なぜ風邪(咳)の神様なのか。
「石神」を「セキジン」と読んで、「咳神」という字をあてる。一方、「シャクジン」は「シャクシ(杓子)」になり、杓子は「しゃもじ」と読む・・・という訳だ。
おしゃもじさまの信仰は、元々のミシャグジ信仰とは大きく変化してしまっている。元々は性器を象った石棒なのだから、咳とは何の関係もない。でも、それは間違っているということにはならない。信仰とは信じる人の心の問題だからだ。咳にご利益があるといえば、それは咳の神様なのである。
参考資料
大田区ホームページ:道祖神(おしゃもじさま) (city.ota.tokyo.jp)
御柱祭と諏訪大社 上田正昭・大林太良・五来重・宮坂光昭・宮坂宥勝
(筑摩書房)