season4 3話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
3.『アカデミーの4人の仲間』
翌日、第3観測ユニットへ歩き出す。
「ネモの親ってさ、どんな感じ?」
ペパー、おもむろに聞く。
「えー、普通だよー」
「でもお屋敷に住んどりんさるじゃろ?」
「ピッカ?」
首をかしげるヨーコとぴっかりさんにボタン、
「いや、うちでも知ってる。スマホロトム会社の役員」
「なんで知ってんの!?」
びっくりなネモ。
「あ、お父さんが前に言うとったような……?」
「普通に有名……。あと個人的に調べたし」
「いいとこのお嬢様だったのか……?」
「わーわー! ガラじゃないんだって!」
ヨーコ、ボタン、ペパーの言葉に慌てるネモ。腕を組み、
「んー、でも、そうだな……。お父さまもお母さまも、いい意味で放任かな? お姉ちゃんもいるし、わたしはやりたいようにやってるよー」
「お父さまって呼んでんだ……!?」
「どうりで仕草がキレイじゃ思うた」
「ピカ」
「お嬢様力、パない」
うなずくヨーコ達。
「もー! うるさいなー! そういうボタンのとこはどーなの!」
「えー……、うちは……」
むっすー! なネモに、ボタン、ため息まじりに、
「ドがつくほどウザい……」
「え」
「ピカチュ?」
「過保護ってこと?」
キョトンなヨーコとぴっかりさんとネモ。
「声はデカイしスキンシップヤバいし、ボタちゃんとか変な呼び方するし!」
(ボタちゃん……)
ヨーコ、(汗)。ぴっかりさんも同じ表情。
「とにかくウザいオヤジなの! マジウザい、ただそれだけ!」
「なんか、かわいそうだな……。ボタちゃんの父ちゃん」
なんか同情しているペパー。
「やーめーろー!」
「えーっと……! ヨーコのお母さまは優しいよね」
取り繕うネモ。ヨーコうなずく。
「え、あ、うん、そうそう!」
なおなぜかぴっかりさんはどや顔。
「会ったことあるのかよ」
「うん! 手作りサンドウィッチすっごくおいしそうだった! おまんじゅうも持たせてくれたんだよー」
「へー、いいなぁ……。すっげえうまいんだろうな」
遠い目になるペパーに、ヨーコは、
「うん。訳あって右手がないんじゃけど、色んな料理作ってくれるんよ。おにぎりもおいしいし。あと、たまにぼーっとしとる時もあるけど、強うて優しうてしぶといよ。血はつながっとらんけど」
「え、マジでか」
驚くペパー。
「うち、ジョウトとホウエンの間にあるクスノキシティの生まれなんじゃけど、ホントのお母ちゃんとお父ちゃんが死んで、色々あってすずお母さんと周作お父さん達んとこに引き取られたんよ」
「……ふたりとも、知ってたか?」
ネモとボタンに振り向くペパー。
「うん。この前スター団のみんなと聞いた」
「わたしは初登校の時!」
「ごめん、ペパーさんにはなかなか話せんで」
「ああ、いや、気にすんなよ。そうか……」
優しく笑うペパー。そうこうしている内に第3ユニット(途中でエーフィ見かけたりしてボタン大興奮。でも捕まえられず)。
「おっしゃ! 観測ユニットだ!」
「ひと休みできるねー!」
「ねー」
「ピカー」
「また何か出てくる……、絶対出てくる……」
ボタン、警戒度MAX。笑い飛ばすネモ。
「アハハ! ボタン心配症すぎ!」
「ん?」
何かに気付くボタン。
「ウィー! ルドン!」
テツノワダチ普通サイズバージョンが威嚇してきた!
「「うわ!!」」「ピカ!!」
同時に驚くヨーコとぴっかりさんとペパー。
「ほら見たことか!! ほら見たことか!!」
リズミカルにツッコむボタン。それをよそに目を輝かせるネモ。
「何か出た!」
「コイツって……、ヌシのアイツじゃん!! 未
来のポケモンだったのか!?」
「ペパー戦ったことあるの? すっごく強そうだけど!」
ウキウキ口調のネモ。
「ああ! ヌシならオレとヨーコにまかせろ!」
「ぴっかりさん、念のためネモさんとボタンさんお願い!!」
「ピカピカ!」
ぴっかりさん、ネモとボタンの前に陣取る。
「あん時は戦わせてやれんかったけえね。お願いわっぷるさん!」
「バルップ!!」
「行くぜマフィティフ!」
わっぷるさんとマフィティフ、テツノワダチに対峙。ネモとボタンは応援。
テツノワダチ、わっぷるさんにアイアンヘッド! でも平気。マフィティフ、ほのおのキバで効果抜群! テツノワダチがマフィティフにじだんだくらわせている隙に、わっぷるさんアクアステップで肉薄、とどめ!
「よっしゃ! 勝利だぜ!」
「ありがとうわっぷるさん!」
それぞれボールに戻す。
「ひでんスパイスのときのアイツも、もともとはエリアゼロにいたのかもな」
「うん。博士も言うとりんさった」
「いいなー! ふたりは大穴の外でも会ってたんだ!」
素直に羨ましがるネモ。
「いやいや、あんな未来100%、外にいたら大問題では……。フトゥー博士が管理? してんじゃないの? 何してんの?」
冷静にツッコむボタン。気付くヨーコ。
「言われてみれば確かに……」
「えら~い博士は何考えてんだろうな。ヨーコ、観測ユニット入ろうぜ」
「うん」
みんなでユニットへ。
*
「3つめ、到着ー!」
背伸びするネモ。
「歩いたり戦ったり、みんな体調は大丈夫?
疲れてる人ー?」
「うーん……」
何やら頭を抱えているボタン。
「ボタン、具合悪い?」
「大丈夫? ボタンさん」
「ピカピカ?」
「あ、いや、違くて」
ネモとヨーコとぴっかりさんに振り向くボタン。
「タイムマシンの話聞いてから、ずっと考えてた……。──エリアゼロにいるポケモンと一緒でさ、……ミライドンも、未来のポケモンだったり?」
「ほうかも。テツノツツミさんやテツノワダチさんと姿形が同じ感じやし……」
「うーん……?」
ヨーコの言葉に、ネモ、少し考えこんで、
「確かに未来な感じするする! ってか名前もそれっぽいし! 絶対そうだよー!」
ネモ、そこでハッ、と気付いて、
「っていうかそうじゃん! 忘れてたけど、ペパー! ミライドンのボール持ってたりフォルムのこと教えてくれたり、なーんか知ってんじゃないの!」
「ほうじゃペパーさん! 話してつかあさい!」
「うっ、記憶力さすがちゃんだな。わかったわかった。……教えるよ」
ふたりに詰め寄られたペパー、たじたじになりながらも、
「アイツ……、ミライドンは……、父ちゃんがタイムマシンの研究中に見つけたポケモンだ」
『……ここからは、ボクが答えよう』
突然博士から通信。
「「博士!」」
驚くヨーコとネモ。
『ヨーコに預けていたミライドンは……、タイムマシン研究で初めて、未来から転移できたポケモンだ』
「やっぱり、そうだったのか……」
つぶやくペパー。
『その遺伝子データや行動パターンを分析するに、パルデアにおける一般的なライドポケモン、モトトカゲの未来の姿、……ということがわかっている』
「モトトカゲさんの遠い子孫、ということかね……」
「たしかに似てるっちゃ似てる?」
それぞれ考え込むヨーコとボタン。
『ほかにもたくさんのポケモンが時を超えてやって来たが、ミライドンの種族は全部で2匹しか転移出来なかった』
「え?」
「は? ってことは、アイツ……、もう1匹いんの!?」
驚くヨーコとペパー。
「もしかして、家族じゃない!? エリアゼロのどっかでミライドンを待ってたりして!?」
明るく言うネモ。ボタン首をかしげる。
「感動の再開……?」
「うん! 家族見つけてあの子と再会させられたら、絶対、絶対、幸せだよ!」
「家族か。ああ……、いいと思う。この世界にもう1匹しかいない家族……、会いたいに決まってるよな」
「──うちもそう思う」
少し考え込むが、ややあってネモとペパーにヨーコもうなずく。
「突然の胸アツ展開……、こういうの嫌いじゃないし」
ボタン微笑む。
『ではヨーコ、中央のパネルを操作してロックを解除してくれ』
「はい」
ということでポチッとな。
『ロックが解除されました。残り1/4』
の音声案内。
『残りはあと1つ……。最後の観測ユニットもよろしく頼む』
「野生のポケモンはまかせろー! ズバッと倒していざ進め!」
ネモの鼓舞にみんな進む。ヨーコは急いでファイルをめくる。
『タイムマシンの研究、偉大なる功績。未来からポケモンの転移に成功。ミライドンと命名した。
なんと! 新しい宝にも恵まれた。いいことは続けて起こるものだ』
『1号に続いて、未来のポケモンの転移に続々と成功している。あの本が現実になる日は近い。この楽園で3人が幸せに暮らせるよう努力せねば』
急いで外へ。
「ミライドンが未来のポケモン……、どうりで見たことないはずだよ!」
膝を打つネモ。そして目を輝かせ、
「ヨーコ! 今すぐミライドンと勝負させてっ!」
「え、ええー?」
さすがに戸惑うヨーコ。静かにツッコむボタンとぴっかりさん。
「モンスターボールに絶賛引きこもり中」
「ピカピ」
「あ、そうだった……」
正気に戻るネモ。
「未来から来てたってのは、オレも初めて知った……」
語り出すペパー。
「アイツは昔、父ちゃんが突然家に連れて帰ってきてさ。ちょっとの間、灯台の研究所でみんなで一緒に住んでたんだ。絶対に秘密って約束で、オレも世話手伝わせてもらってて……」
「それで、くわしかったんだ!」
「なるほどー」
うなずくネモとヨーコ。
「でもある日、ミライドン、野生のポケモン相手に暴れてさ。近所のヤツらに存在がバレかけたことがあって……。そのあとすぐ、父ちゃんがアイツをエリアゼロにつれ帰ったんだ」
「確かに、お父さん達がなんか話ししとる時あった」
「違う時代のポケモン……、だもんね」
うなずくヨーコとボタン。
「ああ。バレたら大騒ぎだ。それ以来、父ちゃんにもミライドンにも会えなくなった。
──今思えばガキくさいけど……、アイツに親をとられた気がして、すげーイヤだったんだよな」
「ペパーさん……」
「だから、ミライドンのこと嫌いだったし、あんま言いたくなかった」
ペパー、ヨーコを見る。
「ヨーコ。……黙っててすまんかった」
「ええよ。気にせんで」
優しく笑うヨーコ。ぴっかりさんしょうがないわね顔。対照的にネモは興奮。ボタンはジト目。
「そんなワクワク情報! もっとはやく知りたかったー!」
「ここ来る前に言えし」
「オ、オマエらさ……」
半分呆れ顔、でも安心したような顔のペパー。
*
洞窟の中へ進んでいく。しばらくすると、滝の落ちる空間が開けている。
「わぁー……」
一歩進むネモ。岩場に結晶が生えている。
「大きな結晶がいっぱい! きれー! 下まで
続いてるー!」
「落ちたら、一巻の終わり……」
「うん……」
生唾を飲むボタンとヨーコ。うなずくネモ。
「そうだね! 足元気を付けないと!」
そんな中、ペパー静かに、
「博士がこの奥に……。──もうすぐ会えるんだな」
ひとり自分に言い聞かせる。
「……オレは、大丈夫」
みんなを見渡し、
「ヨーコ、ネモ、ボタン、用心して進もうぜ」
「うん!」
*
「不思議な景色……、大穴の財宝、本当にあったりして!」
ネモはしゃぐ、ペパーうなずきつつ、
「うーん……。なんか、天国? みてえな場所だよな……」
「ここらへんの結晶、テラスタルとおんなじ光? めっちゃ気になる……」
ボタンの言葉に、ヨーコふと、
「……てらす池みたあじゃ」
「てらす池?」
聞き返すボタン。
「キタカミの里っていう場所の山ん上にある池で、こがな結晶が沈んどるんよ。ここみたあに、キレイじゃけどどこか怖いとこで、死んだ人に会えるって言う噂もあるんじゃ」
「ピカチュ……」
ぴっかりさんしみじみうなずく。
「へー、ポケモンいた?」
ボタン相づち。
「うん。キラフロルさんとかおったよ。あと強いポケモンがたまに出てきさんてっじゃ」
「やだいつか絶対行きたい!」
ネモ大興奮。
「それにそこの結晶、ポンさんのお面にも使われとるんじゃけど、ポンさんその力でテラスタルしとるみたいなんよね。それに、引率の先生が、池の水はテラスタルのエネルギーと同じ波長? を持ってるとか言うとりんさって……。今思えば、結晶の光はテラスタルやここの光と同じ感じじゃった……」
「グルーシャさんの時のやつだよね! 今度勝負させて!」
「ああ、すごかったもんな、あれ」
「ほー……」
オーガポンの戦いぶりを思い出し目を輝かせるネモ。うなずくペパーとボタン。
ペパー静かに、
「──ま、奥まで行きゃあ、全部わかるさ」
再度みんなを見回す。
「……行くぞ、みんな」
「「「うん」」」「ピカ」
気を付けて進んでいくみんな。