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season3 21話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
21.『ボタンの見た星
~スターダストストリート、完了~』
「ありがと……。ヨーコ……、ネルケ……」
「うん……」
「たしかに……、見届けたぜ」
ボタンうなずき、
「これでうちも、スター団も終わ……」
「待ってくだ……、くれないか?」
止めるネルケ。
「改めて確認したいことがある」
「確認?」
聞き返すボタン。
「マジボスであるあんたが、何故スターダスト大作戦を企てた?」
「──解散しようって言ったのに、誰も団やめないから……」
「マジボスが命令しても?」
「お願いはしても命令はしない。……そういう団の掟だし」
「掟……、ボスたちも掟を大事にしていた」
「だから、掟使って団を解散させようと思った」
「掟で決められた理由なら、みんなスター団をやめると?」
「そう……。掟にのっとって戦わなきゃダメだった」
「それで、スターダスト大作戦を……」
ネルケ、うなずいて、
「カシオペア……、最後にひとつ聞かせてくれ。あんたにとって、スター団……、団の仲間たちは、どういう存在なんだ?」
ボタン、しばらく沈黙。ボス達とのやりとりの日々を思い出し、
「……大事な」
そしてにっこり笑う。
「……宝物だよ」
ヨーコも思わず微笑む。
ネルケ、ぴしりと背を伸ばし、
「──よろしい、よくわかりました。ボタンさん」
「……はっ?」
口調の変わったネルケに、目を見開くボタン。ネルケ、ボタンに近づきながら、
「私から、ボタンさんにお話ししたいことがあるのです」
「え、しゃべり方どうした!? 急に怖……」
当然ながら戸惑うボタン。
「……そうですね。まずは正体を明かしましょう」
そしてヨーコの時みたく、
「……ハッ!」
変装を解くクラベル!
「こっ……、校長ーッ!?」
驚愕するボタン。
(気付いとらんかったんじゃね……)
(汗)なヨーコ。
「カシオペアがボタンさんならば、ネルケはクラベルだったのです」
「……いやなんで!? てか、ヨーコ知っとったん!?」
「知っとったというか、うすうす気付いとったというか……」
「えー……」
「正体を隠していたのは、スター団の皆さんと、きちんとお話しするためです。
教師と生徒……、ましてや校長が相手では、皆さんの本音が聞けないと思ったからです」
「だからって、えー……、変装までする!?
ヅラのチョイスも意味わからん……」
なおも信じられない様子のボタン。
(辛辣……!)(汗)
心中でツッコむヨーコ。
「……コホン、そろそろいいでしょうか。皆さんいらしてください」
咳払いし、入り口を向くクラベル。
同じ方向を見るボタン。
「……え」
来た人達を見て、驚愕するボタン。
*
「ひさしぶりだな、マジボス!」
明るく挨拶するピーニャ。
「……ピーちゃん」
各組のボス達が、ボタンに向きなおる。
「ひさしぶりってか、初めましてだろ? 本当の名前も今知ったしさ」
優しい顔のメロコ。
「……メロちゃん」
「初めて見るマジボスのご尊顔、誠に眼福でござるな」
しみじみうなずくシュウメイ。
「……シュウメイ」
「えーと、本名、ボタン、だっけ? 元気にしてたの?」
照れ臭そうなオルティガ。
「……オルくん」
「やっと会えたね……。すっごく心配してたんだよ……」
泣きそうな顔のビワ。
「……ビワ姉」
うつむき、涙をこらえるボタン。ピーニャがみんなに、
「じゃあ、せーので……」
うなずき合うみんな。声と動きを重ねて、
「お疲れさまでスター!」
「──さて。ボタンさん、そして、ボスのみなさん」
呼びかけるクラベル。
「アカデミーを代表し、スター団に申し上げます」
頭を下げ、
「本当に、申し訳ございませんでした」
「……え?」
キョトンとするボタン。
「アカデミー校長クラベル、一生の不覚です……」
「……え? え?」
「スター団結成の理由……、活躍はボスの皆さんに聞きました。
私が赴任してから見ていた、いじめのないアカデミーの姿は……、あなたがたの悲しみと怒り……、勇気が勝ち取っていたということを」
クラベル、深呼吸し、
「……結論から言います。──スター団の解散要望、およびボスの皆さんへの退学勧告は……、ただちに撤回いたします!」
「つまり、それってさ……」
ピーニャ、思わず笑う。
「ええ! スター団の解散は、もはや必要ありません!!」
クラベル、しっかりうなずく。
ボスのみんな、ボタンに駆け寄り、
「やったあー! ボタンちゃん! これからもみんな一緒だよ!」
はしゃぐビワ、うなずくシュウメイ。
「恐悦至極にござる!」
「で、でも……、うち、みんなを裏切って……」
「スターダスト大作戦のこと? クラベル校長から聞いたよ」
戸惑うボタンに明るく言うオルティガ。
「団にこだわって退学しそうなボクらを心配しての行動だろ?」
「普通に解散って言われても、ハイそうですかってオレらじゃねえし」
優しく言うピーニャとメロコ。シュウメイとビワも、
「我らを思うボタン殿の心中、察するにあまりある……」
「心配させてごめんね。わたしたち、もう大丈夫」
「だ! だとしても……」
そこでクラベル、手を叩き、
「……話を続けますね」
みんなクラベルを見る。
「先ほど申し上げたように、スター団の解散要望は取り下げます。
──ただし、スター団の皆さんがおこなった……、長い無断欠席! 制服の改造! アカデミー備品の勝手な持ち出し! ライドポケモンの改造および暴走! ……などなどなど! 学則違反もろもろは見過ごせません!」
「はーい……」
肩を落とすみんな。まぁ、ですよねーな顔のヨーコ。
「──ゆえに処分として、奉仕活動をしてもいます」
「奉仕活動……?」
首をかしげるボタン。
「はい。スター団の皆さんには、STCの運営をお願いします」
「エスティー……、何の略?」
「Sはスター、Tはトレーニング、Cはセンターを意味します。スタートレーニングセンター。アカデミーとポケモンリーグで新設する、ポケモントレーナーを育成するための施設です!
これはヨーコさんが、アジトにカチコんでるのを見てひらめきました」
「え、うち?」
ヨーコ、パチクリ。
「スター団の戦法やアジトは、ユニークかつ独創的! ですので、アジトはトレーニング施設として、スター団はSTCスタッフとして、活動を継続していただきます」
クラベル、みんなを見回し、
「……以上、問題はございますか?」
「いや、楽しそうだし、なんかWin-Winっぽいけど……」
悩むボタンに、オルティガ、
「オレたちが言うのも変だけどさ、ボタンも一緒にやろ!」
シュウメイ、ビワ、ピーニャ、メロコも、
「左様……。ボタン殿も、ともに……」
「学校も一緒に通おう! 何があってもわたしたちが守るよ!」
「スター団も学校も両立できたらいいなって、ボクらで話してたんだ」
「……ダメか?」
「みんな……」
ボタン、ヨーコを見て、
「ヨーコ、どう思う?」
「ええと思う! 楽しそうじゃ! うちも手伝えることあったらするけえ、きばろう!」
「で、でもでも! うーん、うーん……」
必死に悩むボタン。
「今決めなくとも大丈夫ですよ。ゆっくり考えてください」
優しく話すクラベル。
「あの」
ヨーコ、話を切り出す。
「……うちからも、ボタンさんたちに聞いて欲しい話があります」
「え?」
振り向くボタン達。
「──自分語りになってしまうけど……、うちは元々、孤児なんです」
「「「「「「え……」」」」」」
息を飲むみんな。見守るクラベル。
「お父ちゃんもお母ちゃんも、うちが7つの時にクスノキシティで起こった事件のせいで死んで……。うちだけ生き残って、今のお母さんとお父さんと出会えて、パルデアに来ました。
うちは思うとらんけど、他の人から見れば、うちの家族はちいと違う。じゃけえ、何かが違えば、うちもみなさんとおんなじ立場だったんです。みなさんのおかげで平和になったこの学校で楽しくやれとるけど、ほうじゃなかったら……」
ヨーコ、一呼吸置いて、
「それに、したっぱ連中に仲間を──うちのウェーニバルさんを傷つけられて、大切な前の相棒さんが眠るお墓を荒らされたかけたとは言え、みなさんの事を悪と決めつけてしまっとったんです。
本当は違うとったのに。そがな事するのは、ほんの一部だけじゃったのに。……うちは、皆さんの宝物を壊すところだったんです。じゃけえ──本当に、ごめんなさい」
頭を下げて謝るヨーコ。
「や、そんなん、こっちが悪いし……」
「そうだよ。ヨーコくんがボクらを倒してなきゃ、同じこと続いてたかもだしさ」
「色々あったんだな、テメーも」
「艱難辛苦に耐えてきたのでござるな」
「んだよ、ここに来て泣かせんじゃねえよ」
「よく頑張ったね、ヨーコさん」
むしろ同情してくれるみんな。
「……うん、ありがとう」
涙をこらえ、笑うヨーコ。みんなも笑ってくれた。クラベルが優しく宣言する。
「ひとまず解散しましょうか。……団ではなく、この場を!」
「はーい」
「ヨーコさんは、明朝、校長室まで来ていただけますか?」
「わかりました」
*
翌朝。身支度して食堂で朝御飯を食べてから、歯磨きして校長室へ。
「失礼します」
「ヨーコさん、いらっしゃいましたか」
「おはようございます、クラベル先生」
「おはようございます。スター団の一件に関して、お礼を伝えたくてお呼びしました。
あなたがいなければ、私はスター団の皆さんに誤った処分をしてしまうところでした」
クラベル、にっこりと笑い、
「誠に、ありがとうございます」
「いえ、そんな、うちも色々知ることができたし……」
と、ノックの音。
「ん?」
「どなたでしょうか?」
「……ボタンです」
入り口からボタンの声。
「どうぞ、入ってください」
「おジャマします……」
入ってくるボタン。
「おはようボタンさん」
「おはよ、ヨーコ」
ボタン、校長にもじもじしながら向き直り、
「STC……。えっと……、みんなと……、やってみたいんですけど」
「わあ」
思わず歓声を上げるヨーコ。
「それは素晴らしいですね。いいお返事をありがとうございます」
うなずくクラベル。しかしボタンうつむき、
「でも、あの……、うち……、みんなより処分、重くなるような気がしてて……」
「なして?」
「スターダスト大作戦を指揮したから……ですか?」
「いや、違くて。うち、完璧、悪いこともしてて……」
歯切れの悪いボタン。
「完璧、悪いこと?」
「何してしもうたん?」
クラベルとヨーコの問いにボタン、意を決したように顔を上げ、
「スターダスト大作戦でギャラとして配ってたLP……、あれ、リーグのLP管理システムハッキングして、ちょっと、あのー、不正発行してて……」
「リーグにハッキング!?」
「ああ……、なんということを……」
驚愕するヨーコ。目を伏せるクラベル。
「そもそもポケモンリーグのシステムをハッキングできるとは……」
半ば呆れながらも感嘆するクラベルに、ボタン、
「や、そんなにムズくない……、じゃなくて、ごめんなさい」
(い、色んな意味ですごい……)
(汗)なヨーコ。
「……さすがにその件は、私の範疇を超えますね。
──ポケモンリーグのトップ、オモダカさんにも相談してみます」
「……ですよね」
重々しくうなずくボタン。
(ほうじゃ、トップは理事長先生でもあるんじゃった)
「申し訳ありませんが、ヨーコさんは席を外していただけますか」
「あの、クラベル先生、うちもLP受け取って使うたし、お仕置きはうちも受けます」
「ありがと。でも、ヨーコは悪くない」
ぶっきらぼうながらにヨーコを気遣うボタン。
「ボタンさん……」
クラベル、優しくヨーコの肩に手を置いてうなずく。そのまま部屋を出るヨーコ。
寮の自室でやきもきしたり、校内をうろついたりグラウンドで走って他のクラスメイトと勝負したり。
そうこうしているうちに夕方。夜風に当たろうと外に出る。ぴっかりさんとわっぷるさんが気遣わしげに出てきた時、電話が。
「はい、北條陽子です」
『……ヨーコ?』
「ボタンさん?」
声からわかったヨーコ。
『ちょっと話あって、うちらが初めて会った学校の階段前に来て欲しい』
「あ、うん、今いく!」
『……待ってる』
電話切れる。うなずきあい階段前へ急ぐヨーコ達。
*
ボタン、夕暮れの空を見上げている。星がぽつぽつ輝き始めている。
「ボタンさん」
ヨーコの声に振り向くボタン。小さく手を上げ、
「……お疲れ様でスター」
「え、あ、お、お疲れ様でスター……?」
まねるヨーコ。ボタン、小さくうなずき、
「団作ったメンバー6人で、最初に考えた挨拶」
肩を震わせ笑う。
「ダサすぎて、逆にアリだよね」
「え、ええ……?」
話が飲み込めないヨーコ。
「……LP不正発行の件、ヤバイことになると思ったのに、あっさり許された……」
「よかったぁ」
胸を撫で下ろすヨーコ。
「どうなったん?」
「ポケモンリーグでエンジニアとして奉仕活動すればチャラだって。卒業後もぜひ来てほしいって言われた。校長にもオモダカって人にもなんかすごくほめられたし。素晴らしい才能! だとか……」
ボタン、少し黙る。小首をかしげるヨーコ達。
「……ピカ?」
「……呼んどいてごめん。リアルで話すの苦手なん。うまく言葉がでてこないし、だけど……、あの……」
ボタン、ヨーコをまっすぐ見る。
「あ、ありがとう……、ございました」
「そんな、お礼なんて……」
ボタン、首を横に振り、
「ヨーコのおかげで、スター団も仲間も救われた……。感謝してもしきれない。
そして、わっぷるさん、だっけ。その、したっぱ連中が、……ごめん。本人達にも、頭下げてもらうから……」
わっぷるさんに頭を下げるボタン。わっぷるさん、ありがとう、という風に鳴いてウィンク。ヨーコとぴっかりさん、微笑む。ボタンも微笑む。
「ありがと。──だから、これ……」
りゅうせいぐんのわざマくれた。
「あなたなら、多分使えるはず。
……それと、ヨーコに借り、返したい。何かあったら、言って。特に機械とか、ハッキングとか、得意分野……」
ボタン、にっこり笑い、
「ヨーコが困った時は、今度はうちが助けるんで。じゃあまたね、お疲れ様でスター」
「お疲れ様でスター」
互いに挨拶をかわす。階段を軽やかにかけ上がるボタンを見送るヨーコ達。
「……何か食べにいくかね!」
賛成! と鳴くぴっかりさん&わっぷるさん。
夜空には幾つもの星が瞬いていた。