season1 13話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
13.『秘伝スパイス、大空にあり』
家庭科の調理実習(サンドウィッチ作り)を受け放課後(ヨーコは宿題があったので、ペパーが先に向かった)、大空(たいくう)のヌシの元へ向かうヨーコ。
セルクルタウンから勝負しつつ進み、ポケモンセンター近くで野宿した翌日、風車のあたりまで進むと、ペパーから電話が。
『よう、ヨーコ!』
「ペパーさん」
『今どこだ?』
「セルクルタウンの上の風車のとこ」
『おっ、そうか。その近くの岩山のどっかに大空のヌシがいるらしいんだ』
「大空? とりのポケモンさんかね」
『かもな。けどじっくり探そうにも山からでっけえ岩が転がってきて危ないちゃんなんだ。岩に当たると勢いでぶっ飛ばされちまうけど、アイツにライドすればふんばれるぜ!』
「ミライドンさんね。わかった」
電話切れる。片付けしてミライドンにライド。
確かに岩がぼとぼと落ちる場所がある。
「確かになんか飛んどる……」
遠目にポケモンの姿を確認。スマホロトムで図鑑を見る。ダッシュモードで岩を掻い潜り山のてっぺんへ(ぶつかっても確かに平気なミライドン)。
その空中にいたのは大きなオトシドリ。舞い降りてくる。
「ストオオオクッ!!」
臨戦態勢に入るオトシドリ。
「進化したあんたの力、見せてやりぴっかりさん!」
ボールに戻していたぴっかりさんを出す。
「ピカチュ!」
さっそくエレキボールをくらわすぴっかりさん。しびれながらもついばむオトシドリ。
「効果抜群でもさすがに一発で倒せんね……」
キハダ先生のバトル学授業が頭をよぎる。
『ポケモンの攻撃技にはたくさんの種類があるのだが、技によって異なるものがある。威力やタイプ……、そして分類だ!
威力が高ければダメージも大きい。相手に刺さるタイプならさらにだ! そして分類は物理と特殊2つの種類がある。
物理はポケモンの持つ攻撃の値が高ければ相手に与えるダメージが大きく、特殊は特攻の値が高ければ大きい!
逆に相手の技は、自身の防御と特防が高ければ受けるダメージを少なくできるぞ!
──結論!! 物理技が得意なポケモンは特攻よりも攻撃を高めて、特殊技が得意なポケモンは攻撃よりも特攻を高めるべし! どっちつかずのステータスだと、勝負で力を発揮しにくいぞ!
人もポケモンも同じだ! いいところを伸ばしてあげないとな!』
「──ぴっかりさん、ネモさんからもろうたマシンのあれ、やりますか!」
「ピカピカ!!」
ぴっかりさん、気合いを入れる!
「かみなりパンチ!!」
前足で作った拳に電気をまとい、オトシドリに大ダメージをくらわすぴっかりさん!
まひして動けなくなっているところに、ぴっかりさん、もう一発! 不利とみたオトシドリは近くの岩場を壊し何かを食べ始める。
駆けつけるペパー。
「ヨーコ! ヌシにたどり着いたんだな!」
「ペパーさん! ええとこに!」
「アイツが大空のヌシ……! 岩落としてたのアイツだったのかよ!! ヨーコが引き付けてくれたから岩なく安全に来れたぜ」
みるみる元気になっていくオトシドリ。
「秘伝スパイスの力で強くなってるみたいだ……」
再び飛んでくるオトシドリ。
「ヨーコ! きばっていくぞ!」
「うん!」
ペパー、コジオ出す。ヨーコは再びぴっかりさん。
「どんどろ轟け、ぴっかりさん!」
ぴっかりさんテラスタル!
「岩落とす危ねえヤツには、しょっぱい敗北召し上がれ! だ!」
コジオ、うちおとすでオトシドリを地面に落とす! そこを逃さずかみなりパンチ。
再び飛び上がろうとしたところをうちおとすコジオ。ついでにつばさでうつ攻撃も引き付けてくれる。
その死角をつくヨーコ&ぴっかりさん。
「脇がお留守じゃ」
急所に当てるかみなりパンチ! 見事撃破!
「うっし! ヨーコ! お疲れちゃんだぜ!」
「ピカピ!」(あたしもいるわよ!)
「そうだな、オマエもお疲れちゃんだ」
「ピーカ」(わかればよろしい)
ヨーコ、ぴっかりさんをボールに戻しながら、
「ペパーさんとコジオさんもありがとう」
「ああ。これでもう危ない岩は落ちてこなくなるんじゃねえか?」
「ほうじゃね」
「アイツが食ってた秘伝スパイスはこの中にあるはずだ。ちゃっちゃか調査しようぜ!」
「うん!」
洞穴に入るふたり。
*
「前と同じなら、今回ももしかして……」
少し進んだ先、ペパーが叫ぶ。
「やっぱりちゃんかーっ!」
緑に輝くスパイス!
「本当にあった! 間違いなくスパイスだぜ!」
「ほんに苦そうじゃ……」
「秘伝・にがスパイスだな」
スパイスを採るペパー。
「うおー! やったぜ! ありがとよ、ヨーコ!
えーとなになに? 本によると……、秘伝・にがスパイスは血行促進、血の巡りをよくする! 体をポカポカ温めて、免疫効果もアップ……、とのことだ! コイツも料理して食べさせりゃあ……! よし、ヨーコ! 飯だ飯! さっそく準備するぞ!」
「うん」
例によって張り切って料理するペパー。
「うおおおおおお! ずりゃ! おりゃー!」
(うん、こっちはちゃんとお料理しとりんさる……)
仲間達と皿を準備しながら思うヨーコ(キハダ先生くしゃみのカット)。
(それに今日の調理実習で一番上手じゃったし)
「お待ちどうさん! オレ特製、きまぐれスパイスたっぷりサンドだ! 感謝の気持ちのヌシバッジも添えて……な!」
「いかにも苦そう! でもおいしそうな匂い……」
ぴっかりさん達、最初は顔をしかめるもすごくおいしそうに食べる。
「ほいじゃ、いただき……」
「アギャス!」
再び出てきたミライドン。
「……ったく、またかよ!」
サンドウィッチの匂いを嗅ぐミライドン。
「食べる?」
ヨーコが聞くと、ミライドンはペパーに向き直り、
「ギャアンス」
「フンッ。お礼でも言ってるつもりか……?」
ペパー、少しためらいがちに、
「余分に作っといて正解だったぜ。ただし!
頑張って手伝ってくれてるヨーコとヨーコのポケモン達のためなんだからな! 絶対にミライドンのためじゃないぞ!」
「ふふ、ペパーさんええ人じゃねえ」
笑いながらサンドウィッチをもらい、そして片方あげるヨーコ。ガツガツ食べるミライドン。
「いただきます」
ヨーコも食べる。顔をしかめるもすぐ笑顔になる。
「にが~、じゃけどコクがあっておいしい!」
※サザエみたいな味かもしれない
ミライドンがサンドウィッチの最後のひと欠片を飲み込む。すると体が光る。
「アギャアス!」
「ん?」
「なんか、また成長したんか?」
「アギャ!」
「みたいなね」
ペパーとしげしげながめるヨーコ。
「やっぱ秘伝スパイスの効果ってば絶大だなー。……そうでなくちゃ、困るけどよ」
ペパーが背を向けた時、残りのサンドウィッチに気がつき、匂いを嗅ぐミライドン。
「アギャア?」
「触るな!! それはオマエのじゃない!!」
叫ぶペパー。驚いて立ち上がるヨーコ。ミライドンも首をかしげている。
「アギャ……?」
「ペパーさん?」
どしたのよ? と首をかしげるぴっかりさん。
「ピカチュ?」
わっぷるさんとまんじゅうも顔を見合わせている。
「あ……、すまん。大声出して。──ヨーコにはちゃんと話しとくべきかもな」
ボールを取り出すペパー。
「……出てこい」
出てきたのは、大きな犬のポケモン。
「──コイツはマフィティフ。オレの相棒さ」
「マフィティフさん?」
図鑑で確認するヨーコ。
「ア、ギャア」
気遣わしげに鳴くミライドン。ぴっかりさん達も近より様子を伺う。しかし全く反応なし。目も閉じられている。
そんな相棒にサンドウィッチを差し出すペパー。
「さ、元気になるサンドウィッチだぞ」
半分にわり、口にいれてやるペパー。
「ほら、ゆっくり食べろよ。少しずつでいい。ゆっくりゆっくり噛むんだぞ」
ゆっくり口を動かすマフィティフ。
「──コイツ、しばらく前にちょっと……、大怪我、しちまってさ。それ以来、ずっと具合悪くて……」
「……ポケモンセンターは? 大抵、治してもらえるじゃろ?」
「普通の怪我や病気じゃないんだと」
ペパー、ゆっくり立ち上がりながら、
「……オレにとって大事なのは、コイツ、マフィティフだけなんだ。どんなことしてでも絶対治してやるって、ネットや本で治療法をたくさん調べて、あらかた試してきた。どれもあんま効果なくて、諦めかけてたそんな時……、秘伝スパイスの存在にたどり着いたってワケだ!」
紫色の装丁をした本を取り出しながら言うペパー。
「──前から思うとったんじゃけど、その本は?」
「父ちゃんの研究室で見つけたんだ。嘘みたいな話ばっか書いてある、誰も信じないオカルト本さ」
ペパー、顔を上げ、秘伝スパイスのページを見せる。黙読するヨーコ達。
ペパー、本を戻し、
「けどオレは本当だと思ってる! この本によれば、秘伝スパイスを5つ全部食うと、どんな怪我も病気も治るらしい! 実際、前のスパイス食べたら、冷えきったマフィティフの手足がちょっと温かくなったんだぜ」
マフィティフ、少しだけ身動ぎする。
「あ、食べ終わったか?」
と、マフィティフ、少しだけ動く。目も開いている。
「わわわっ! マフィティフ! オマエ、これって……! 目、見えてんのか!?」
ペパー跳び跳ねて大喜び!
「やった! やったぁ!」
男泣きに咽ぶペパー。
「ずっと……、ずっとさ! 目も開けなくって! オレ、すげえ心配で……! うぅ……、よかった! 本当によかった……!」
マフィティフ、返事代わりかペロリと口元をなめる。
「うっ……、へっ、ぐへへ……! 目がつぶらすぎて開いてるのかわかんねえー! ってか、スパイスの力ってすげー! やっぱ本物だよ!
オレ、絶対にマフィティフを昔みたいに元気な姿にしてやるんだ」
そして余っていたサンドウィッチをマフィティフの前に置き、
「……そーゆーわけ、だからさ、スパイス探しは残り3つ! 一緒に頑張ろうな!」
「……」
ヨーコ、考えにふける。
「おい、ヨーコ、どうした?」
「えっ、あ、ううん何でもない!」
慌てて首を横に振るヨーコ。
「ほうね、マフィティフさんのためにも頑張らんとね!!」
「アギャ、アギャ!」
うなずくミライドン。ぴっかりさん達も。
*
ペパーと別れ、洞窟から出ると電話が。
「はい」
『ハロー、ヨーコ。こちらフトゥー。ミライドンがまたひとつ本来の力を取り戻したようだな。ライド状態であれば、水上でなみのり移動も可能になったようだ』
「なみのり、水の上を走れるってことですか?」
『そうだ。これからもミライドンをよろしく頼んだよ』
帰路、川下りしながら帰っていく。ずぶ濡れになるヨーコ達。
寮のお風呂にぴっかりさん達と入りながら、ヨーコはクスノキシティの事件をぼんやり思い出す。