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season5 18話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
18.『ペパーの夢の一歩』
翌日、食料が切れていたためテーブルシティへの買い出しの前に食堂へ行って食べようとするヨーコ。ペパーがいた。
「ありゃ、ペパーさん」
「よう、ヨーコ! オマエもメシか?」
「うん、ペパーさんも?」
「オレは今食ったとこ」
ペパー笑って、
「学校最強大会(バトルスクールウォーズ)ではやりやがったなー! オレの親友(ダチ)はすごいヤツばっかでこまるぜ」
ペパーため息まじりに、
「だってさ、ヨーコは文句なしにチャンピオンですごいだろ?」
「それはほうじゃけど……」
「ネモも成績優秀ですごいし、ってかアイツもチャンピオンか!」
「確かに……」
「ボタンなんて、ポケモンリーグからオファーがかかってるみてえだし!?」
「うん、トップ直々にそんなお話しとったみたあね」
「なーんかオレだけ平凡なんだよな……」
「え、でも料理とっても上手じゃろペパーさん」
「いやいや、趣味レベルだぜ? 親が作ってくれないから上達したってだけで……」
と、ペパー、ハッ、と気付いて
「……そうだよ! 親だよ!」
「へ?」
「マフィティフも元気になったし、宝探しの延長ってことで、自分探しを計画してたんだ!」
ペパー腕を組んで、
「自分探し……、自分のルーツ……、といえばやっぱ親だろ!」
「あー、確かに?」
「父ちゃんって、この学校の生徒だったみたいなんだよ。学校で父ちゃん情報いろいろ調べてみるぜ! サンキューな!」
サムズアップし去っていくペパー。見送り朝食を食べるヨーコ。
その後実の両親を想いながら買い物する。すると周作から連絡が。クラベルに資料を渡して欲しいという頼みを受け、アカデミー前で待ち合わせ。頭をなでられ嬉しいが不思議な気持ちになるヨーコ。そのまま校長室へ。ペパーが話していた。
「失礼しまー……、ありゃペパーさん」
「ヨーコ! ちょうどいいところに! コレ見てみろよ!」
近寄ってみると、ペパーがあるものを差し出す。
「父ちゃんが学生の頃研究してた標本なんだってよ!」
「ほー、すごい……!」
「へへ……、校長せんせに見せてもらってたんだ」
「フトゥーが学生の頃、私は研究者でした。グレープアカデミーにすごい学生がいると、研究者の間でも有名でしたよ」
「オレの父ちゃん……、昔からすごかったんだ」
部屋を見回すペパー。
「そういえば、校長室って割に、なんで機械がいっぱいあるんだ?」
「あ、それうちも思うとった」
「ほう……、気がつきましたか」
目を丸くするクラベル。
「ここはかつて、彼の研究部屋だったのです」
「え!」
「研究に没頭しすぎて、寮にも帰らずほとんどこちらで寝泊まりしてたそうですよ。私も機材があると落ち着くので、校長室として使わせてもらっています」
「そうだったのか……。父ちゃんが生きてた証拠、身近にいっぱいあったんだな。考えないようにしてたから、今まで気づかなかったんだ……」
ペパーの言葉に、ヨーコ、ちょっとセンチメンタルに。
「校長せんせ! 教えてくれてありがと!
ヨーコも一緒に聞いてくれてサンキュ!」
嬉しそうに走り去るペパー。
「おっとペパーさん、トロフィーの説明がまだ……」
「行ってしもうた」
「思い立ったら一直線。……こまったものですね。
──そんなところも、フトゥー……。……あなたにソックリですよ」
静かに笑うクラベル。今の両親が話してくれたことを思い出すヨーコ。少しぼおっとして、クラベルから声をかけられる。
「ヨーコさん?」
ヨーコは書類を渡し、そのまま考えていたことをクラベルに話す。
「ご両親はおっしゃっていましたよ」
クラベルから両親が言っていたことを聞き、クスノキシティについての本を久しぶりに読もうと思い立ちエントランスへ。
ここでもペパーが本棚の前でにらめっこしていた。
「ペパーさん」
「おっ、チャンピオン! 勉強しに来たのか?」
「まぁ、そんなとこ……」
「おいおい! これ以上頭まですごくならないでくれよー」
「えー、ほいじゃペパーさんは?」
「……ん? ああ、オレのほうは、アレだぜ。自分探しの続きだ。エントランスの本棚で、父ちゃんの研究レポートをあさってたらこの本見つけてさ」
ペパー、手にしていた本を開く。
「灯台の研究所にもあった、父ちゃんの大事な本……。バイオレットブックだっけか?
ひでんスパイス以外のページ初めてちゃんと読んだけどすげえぞ! うさんくさいけどおもしれえんだ! 挿絵もあって読みやすいし! ほらこことか見てみろよ!」
「何々?」
円盤のポケモンのページ。
「これ……」
「このページ、全部の本で文字がにじんで読めねえんだ。なんかヤバそうだよな」
「──テラパゴス……」
ぽつりとつぶやくヨーコ。目を見開くペパー。
「え、なんで知ってんだ?」
「林間学校の引率の先生が教えてくれたん。エリアゼロのどっかにおりんさる謎のポケモンで、いつか見つけたいって。でも世間じゃ信じられとらんって」
「……そうか。とんでもねえことばっか書かれてるけど、ひでんスパイスもあったし、エリアゼロであんな体験しちまったし、その先生が思ってるみてえに全部ウソとは言いきれないよなー」
「うん」
「っつーか、この本読んだから父ちゃんは研究者になったのかも。コイツに書かれてる未来のポケモンに惹かれて会いたくなっちまったんだろうな」
「あ、それわかるかも」
「──アレ? でも父ちゃんがタイムマシンを作ったから、未来のポケモンが来たんだよな?
タイムマシンが出来る前の本に未来のポケモンが書かれてるのはおかしくねー……?」
「……」
どことなくうすら寒いものを感じるヨーコ。
「まあ、そういうとこがうさんくさいんだよな!
デタラメでも信じて現実にした父ちゃんはすごいってことで! 見習ってオレも頑張るぜ」
ペパー、サムズアップし、
「じゃあオレ、やることあるからまたな!」
「うん……」
そしてクスノキシティの本を見つけるヨーコ。
いくつか借りて寮の部屋に戻ろうとしたが、それぞれの両親のことを思っていたせいで間違って美術室のある棟へ。
2-Gの教室の前を通りかかると、電子黒板に向かってノートをとっているペパーの姿が。
「ペパーさん?」
「……」
「ペパーさん」
「……ん?」
「おわっ、集中してて気付かなかったぜ!」
振り向くペパー。
「へへ……、オレが勉強してる姿、レアだろ。キリもいいし、ちょっと場所移すか!」
*
ペパーの部屋へ。
「どうよ! オレとマフィティフの巣だぜ!」
「わー、なんかイメージ通りじゃね」
「へへへ……。そうだろうそうだろうー!
って、オレのイメージどんなだよ?」
「え、いや片付いとりんさるなーて思うて」
「あー、マフィティフの毛がすごいから毎日掃除してんだ」
「なるほど」
「……で、教室でオレが勉強してた理由はさ、ひさびさにバイオレットで秘伝スパイスのページ読んだからだ。マフィティフが元気なかったこと思い出しちまってさ。あんときは、何も出来なくて本当に辛かった……」
「うん……」
「オレは、オマエが一緒にいてスパイス見つけられたからよかったけど、オレと同じように、自分のポケモンが元気なくて悩んでる人、いると思うんだ。だからさ、その……、笑うなよ?」
「うん」
「オレ……、料理人、目指そっかなって!」
「コックさん?」
「オレが作った栄養満点の料理で、ポケモンを元気にするんだ」
「うん、ええと思う! 絶対出来るよペパーさん!」
「うん! オマエならそう言ってくれると思ってた! 料理界で父ちゃんみてえなすげえやつになるぜ!
というわけで、オレの自分探しはエンディングを迎えた……。これからは、夢に向かって頑張るぜ! この部屋にもいつでも来てくれよ。マフィティフももてなしてくれるからさ」
「バフ! ワフ!」
マフィティフもうなずいてくれる。
部屋に戻り、本を読みながらクスノキシティで両親を知っていた人に出会ったことを思い出す。
いつかポケモンを持てたらいいと話していたことも。代わる代わるだっこしていてことも。
「どこか面影がある。じゃけど、今のお父さんとお母さんにもよう似とりんさる」
話を聞いた後で、すずも、
「それがヨーコちゃんなんよ。誰かにとっての、懐かしい切れ端。宝物のかけら」
実家に帰り前の両親の写真に手を合わせ、みんなと前の家族の話をするヨーコだった。