season4 6話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
6.『スタンド・バイ・ミー』
※1時間スペシャル
ついにフトゥーAIと対峙したペパー。
と、AIが口を開く。
「──今マで、ありがトう。ようヤく、タいムマシんヲ、彼ノ意思ヲ、止めルこトが、デきタ」
かくかく話すフトゥーAI。
「──父ちゃんじゃ……、ないんだよな?」
「うん……」
静かにうなずくしかないヨーコ。必死に言葉をつむぐフトゥー。
「あア、コんナにも、大キく育ッて……、クれて、嬉しい、ぼクの……」
「……!」
ヨーコ、オリジナルのデータが混ざっていることに気づく。ペパーも息を飲む。
「さミしイ思い、今マで、すマナい、さセて、ぺp……」
ペパーの名前を呼ぼうとするフトゥー。
「と……、父ちゃん!!」
思わず叫ぶペパー。その時、
『セキュリティに異常発生。セキュリティに異常発生』
無機質なアナウンスと共に部屋が紫に染められていく。
「はっ?」
「え……」
見回すペパーとヨーコ。
『タイムマシンが危険にさらされています。タイムマシンが危険にさらされています』
「わっわっわっ! 何何何!?」
うろたえるボタン。
「またポケモン軍団来ちゃう!?」
驚きながらもどこか嬉しそうなネモ。
「ネモさん!」
思わずツッコむヨーコ。
「コれは、まさカ……!?」
天井を見上げるフトゥー。
『タイムマシンの活動に障害が発生しています。障害を取り除くため、楽園防衛プログラムを起動します』
「楽園防衛プログラム……!?」
愕然とするヨーコ。
「コれは……!? 博士は、ドウしテもタイむまシんヲ止メタくなイノか!?」
動揺するフトゥーAI。
『フトゥーIDを除くすべてのモンスターボールをロック』
「は!?」
「えっ!? どう言うこと!?」
ボールを構えるヨーコとネモ、動揺する。ボタン、必死でスマホを操作する。
『プログラム準備中……、テラスタルエネルギー集束開始……』
AIの体が、足元から結晶に覆われていく。
「すマナい、子供たチ……」
振り向くヨーコ達。
「キミ達では不可能ダ」
ぎこちない動きで、でもしっかりと手を伸ばすフトゥーAI。目も結晶に覆われてしまっている。
「……逃ゲテクレ!!」
思わず手を伸ばしかけるペパー。無情に響くアナウンス。
『フトゥーAIは楽園防衛プログラムに上書きされました』
再びせり上がるマシン。ボールをかまえ、不敵に笑うフトゥーAI。一瞬、動きが止まるが、動き出してしまう。目は不気味に光るばかり。
「──邪魔者ハ、ハイジョスル!」
落とされるボール。そこから例のミライドンが!
「っ、ぴっかりさんお願い!」
ぴっかりさんのボールを投げるヨーコ。しかしそのまま地面に落ち、鎖のような光がボールをがんじがらめにする。
『ピカ!? ピッカ!!』
ぴっかりさんも出ようとするが、抵抗むなしく開かない。
「まさか……」
慌ててボールを拾い、研究所にあった文書を思い出し愕然とするヨーコ。
──『ゼロラボ防衛のため、ボールロックシステムを開発。特定のID以外のモンスターボールを……』──
「ボールが使えない! これじゃ戦えないよ!」
ネモもボールを出しながらうろたえる。
必死でスマホをいじるボタン。でも画面にはNGの文字。
「わっ、変な電波で妨害されてる! ハッキングでも解除できん!!」
「そんな……!」
呆然とするしかないヨーコ。
「ズリィ……! こんなの大人がやることかよ!!」
憤るペパー。
「ピッピ人形使って逃げれる相手じゃないし……」
(──そもそも、逃げたら絶対ヤバい! でもボールみな開かん……。どうしたら……)
と、かすかにミライドンの鳴き声が。
懐を見ると、ひとつだけ光り輝くボール。
「……ミライドンさん?」
ミライドンのボールだった。自分を出してくれ、私も戦う。そう言っているように聞こえたヨーコ、決意。
雄叫びをあげる片方に対しボールを投げる!
紫色の光と共に、ミライドンが出てくる。
「よっしゃあ!」「やった!」
ペパー達からの歓声。
振り向くミライドン。ヨーコ、力強くうなずきながら、
「ミライドンさん。──あんたに決めた!」
ミライドン、どこか嬉しげに片方と真っ正面から向き合う。同時に体が光り輝く。
「わぁ……!」
宙に浮き上がり、強い光が迸る!
「ヌ……!」
動揺するAI。ミライドン、バトルフォルムに変化! 雷をまとう、鉄の大蛇の姿。
「キレイ……」
感動のあまり言葉が出ないヨーコ。
堂々と降り立ち、雄叫びをあげるミライドン。
「──やろう、ミライドンさん!」
「アギャアス!」
ミライドン、うなずき対峙!
「グォォ! グオオオオ!!」
吠える片割れ。何が出来る! と挑発しているよう。
お互い、特性:ハイドロエンジンを発動。エレキフィールドが展開される。
*
片割れ、さっそく挑発。ヨーコ動じず叫ぶ!
「テラバースト!」
テラバースト出す! でもそこまでじゃない。
「ありゃ、そのまんまじゃとトップみたあにはいかんね……」
「バトルフォルムになれたんだ! がんばれ、ミライドン!」
応援するネモ!
「キミハ何モ成セナいママ、コノ楽園デ朽チ果テル◼️ダ」
フトゥーAIの言葉とともに、片割れパワージェム。
「お返しじゃ!」
こちらもパワージェム! 少しずつ削れていく片割れ。
「僕ノ楽園ハ壊ささささセなイ。殲滅◼️準備ヲ開始スル……」
片割れ、充電を始める。特防上がる。
「っ……」
冷や汗ヨーコ。ボタン、アドバイスする!
「なんかヤバいよヨーコ! な、なんとかこらえて……!」
「う、うん! ミライドンさん、こらえる!」
ミライドン、こらえる体勢に入る!
「時ハ満ちタ。夢ノ礎トナリタまエ」
片割れ、はかいこうせん! ギリギリでこらえるミライドン!
「ミライドンさん……!」
「よく耐えたな! オマエならやれる……、やれるぞ!」
ペパーから声援が飛ぶ! 特攻が上がるミライドン!
「イナズマドライブ!」
反動で動けない片割れにイナズマドライブ! しかし効果今一つで倒れない。ようやく半分。
「うそ! 倒しきれない! このままだとまずいよ!」
ネモ驚愕。
「ドラゴンポケモンはやっぱしタフじゃ……」
苦虫を噛み潰したような顔のヨーコ。と、ボタン何かに気づく。
「ね、ねえ、ヨーコのテラスタルオーブ、光ってない!?」
「え?」
取り出してみる。キラキラ輝き始めている。
「ここまでロックされとらんかったんじゃ……!」
「ヨーコ! ミライドン! テラスタルで決めちまえ!」
「が、頑張れふたりとも!」
「やっちゃえ、新チャンピオンとそのライドポケモン!」
ペパー、ボタン、ネモの声援を受け、全ての能力が上がるミライドン!
「ミライドンさん、──テラスタルじゃ!」
「アギャアス!!」
「空高く昇って、ミライドンさん!」
ミライドン、テラスタル! ドラゴンの冠が頭上に輝く!
「まげ(見事)じゃ……!」
思わず涙ぐむヨーコ。しかしこらえ、オモダカとの勝負を思い出すヨーコ。
「トップの戦い方……!」
ミライドン、小さくうなずく。自分も見てた、と言う感じ。
「──受け売りじゃけど、機械頼みのあんたらにゆうとったる」
キッ! と前を見据えるヨーコ!
「技はこがな風に出すんじゃ! ──うちらの友情の力、感じんさい!!」
ミライドンの冠が輝く!
「ミライドンさん、テラバースト!!」
テラバースト発動!!
片割れまともにくらう! 片割れ倒れる!
同時にバリン! と何かに弾かれるようによろめくAI。
ミライドン、元に戻って振り向く。
「アギャ」
「うん」
小さくしっかりうなずくヨーコ。
*
「やった……!」
ほっと一息のネモ。
「暴走止まったん!?」
見上げるボタン。
「なんと……」
上からフトゥーAI。正気に戻ったらしい。
「なんと、素晴らしい! まさか、オリジナル博士の最終手段さえ退けてしまうとは!」
「戻った……、のか!?」
驚くペパー。
「ああ……、この結果は、最高の科学力を持つAIにも計算できなかった」
フトゥーAI、語りかける。目は元通りになっている。
「キミたちは絶望のふちにいても、自分の頭で考え、友達を信じる勇気を持ち、決断できる人間なのだな」
どこか嬉そうな声のAI。
「どれほど苦しい未来が待っていたとしても、キミたちなら……、自分が選んだ道を、胸をはって進んでいけるだろう」
暖かみのある声。
「ありがとうヨーコ。ありがとう子供たち」
フトゥーAI、チラリとタイムマシンを見て、
「──どうやらボクがいる限り、タイムマシンは止まらないらしい……。ボク自身が、マシンを復旧するシステムの一部となっているようだ」
「な、なんだよ……、それ!」
どよめくペパー。
「すまないな」
詫びるフトゥーAI。
「キミたちの冒険をここから見ていて、感じたことがある。──キミたちのその自由さがうらやましい、と」
ボタンを見るフトゥーAI。
「仲間を想い、徒党を組んだり」
ネモを見て、
「強さを求めて、戦いの中に身をゆだねたり」
ペパーを見、
「大事なものを守るため、大きな敵に立ち向かったり」
そしてヨーコを見る。
「仲間達と共に戦い、己の思う美しいものを探したり」
「アギャ、アギャス!」
私も! と答えるミライドン。
「フフ……、その翼で大空を翔けまわったり、な」
ミライドンに笑いかけるフトゥーAI。
「ボクもキミたちのように、何ものにも縛られず、自分だけの宝物を見つけたい」
「宝物……」
ポツリとつぶやくボタン。
「タイムマシンの一部であるボクがここにいる限り、タイムマシンは止まらない。
──だからボクはタイムマシンで……、夢にまで見た、未来の世界へと旅立とうと思う」
「えっ……」
「なっ……」
驚愕するヨーコとペパー。
「そんな! せっかく……、会えたのに!」
引き留めるネモ。
「タイムマシンを止めるだけではないんだ。ボク自身が、未来の世界をこの目で見たくてたまらないのだよ。
──冒険に胸を躍らせるとは……、こういう気持ちなのかな」
ペパーにまっすぐ語りかける。
「ペパー、今まで、真実を言えずすまなかった。オリジナルの感情をそのまま受け継いだボクにはわかる。
──キミの父親は、キミのことを、本当に愛していたよ」
「──そんなの……」
うつむくペパー。涙ぐんでいる。
「今さら、ずりぃよ……!」
「──そうだな、すまない」
静かに詫びるAI。
「ペパー、ミライドン、ヨーコ、少しさみしいが、お別れだ」
「──父ちゃん!」
涙をこらえ、見上げるペパー。
「……さらばだ。自由な冒険者たちよ!
──ボン・ボヤージュ!」
バイオレットブックを手に浮き上がるAI。
みんなが見守る中、タイムマシンの光の中に消えていく。
そしてマシンも閉じ、部屋全体の光が止んだ。
「……消えちまった。──父ちゃん」
ぽつりとつぶやくペパー。
「──ペパー、大丈夫?」
ネモ、顔を覗き込む。
「──なんとなくさ……、わかってた。アイツ、偽物だけど、あの顔で、あの声で、──オレの名前、呼んでた」
一呼吸置くペパー。
「偽物でも、その気持ちは本物で……。だから、オレさ……、なんか……」
目を閉じ、ため息をついて頭を振る。
「──悪い……、よくわかんねえ」
「……うん」
静かにうなずくボタン。ヨーコ、黙って見守る。
「ギャス……!」
ミライドン、小さく寂しげに鳴く。
「ミライドンさん……」
「ミライドンも、悲しいよね……」
ヨーコと見上げるネモ。そこでハッ、とネモ気付き、
「っていうかバトルフォルム! 強かった! かっこいい!」
「この巨体でじゃれつかれたら、マジでヤバそ……」
ちょっとげんなりボタン。
「ヨーコとミライドンが頑張ってくれたおかげで、パルデアは救われたんだね」
「う、うん! すごかった! ありがとね! ヨーコ!」
「大げさじゃ。お礼はミライドンさんに言ってつかあさい」
思わず照れ笑いなヨーコ。
「アギャア」
嬉しそうにヨーコにすりすりするミライドン。
と、ぴっかりさん出てくる。いつの間にかロックが解除されたらしい。ほめてつかわす、とヨーコの頭とミライドンをぺちぺち。
「ぴっかりさんありがとう」
「アギャギャス」
「ヨーコ……、さすがだよな」
かすかに笑うペパー。
ボタン、少し黙ってから、
「ペパー……、え、えと……、博士いなくなっちゃったけどさ、──きっと、未来で楽しく冒険してるよ」
ペパー、少し驚き、目を細める。
「……ん、サンキュな、ボタン」
ボタン、うつむきがちに、
「えっと……、うん、ごめん」
空気を変えるように、ネモがヨーコに問いかける。
「ヨーコ、これからどうしよう?」
「──みなで帰ろう! 一緒に!」
うなずくヨーコ。
「そうだね! 帰ろっか! ……私たちの家に!」
ネモもうなずき返す。
*
チャンプルタウンを抜けて一泊野宿。この間にヨーコが詳しい真実を話す。
朝の光の中、テーブルシティへと歩くその帰り道。風車近くの道を歩く。みんなトボトボとした足取り。ペパーは黙っている。
と、ネモ、元気に、
「はい! はーい!」
「ん?」
「どしたん?」
顔を上げるヨーコとボタン。
「せっかくだからさ、より道して帰ろっ!」
「──オレは……」
「いいね、買い食いに一票」
ペパーを遮り明るく賛成するボタン。駆け出すネモとボタン。
「──うちも! 何か食べたい!」
敢えてペパーをおいて、ヨーコも駆け出す。
「おい、ヨーコ!」
みんなで待つ中、動けないペパー。ミライドンがぐいぐい背中を押す。
「ちょ、あーもう! わかったって!」
笑うネモとボタン。ぴっかりさんも出てくる。
「ピカチュ!」
うなずくヨーコ。
リュックを背負い直し、「ありがとな」とぴっかりさんの乗っていない方の肩を叩くペパー。
ミライドンをはさみ、寄り道へ向かう。
その空はどこまでも、晴れ渡っていた。
*
(特殊エンディング。もちろんあの曲)
エンドロール。買い食い。
クラベルに帰ってきたことを報告するヨーコ達。待っていたらしい両親からかみなりを落とされるも抱き締められるヨーコ。思わず涙ぐむ。しかし径子からそろってくどくど説教される。
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その翌日、博士の遺体が見つかり葬儀。
火葬し、校内墓地に埋葬される。
↓
ペパー、墓の前でミライドンとマフィティフと共に立ち、泣く。
↓
墓地を出ると、ヨーコ達が待っていた。すっきり笑うペパー。
↓
仲間達とクスノキ寺で精進落としの宴会。
クラベルと担任の先生トリオも来てくれる。セイジ先生と話すペパー。また涙にむせび、セイジ先生肩を抱いてくれる。パモさんも気遣ってくれる。
ヨーコ達がバトルコートに呼び、ふたりでそちらに行く。
パルデアは今日も晴れだった。
↓
Cパート、ヨーコがみんなと北條家へチャンピオンになったお祝いに行くシーンでEND。喪が明けたペパーがやってきて、みんなで街を歩いていく。
開かれた窓から吹き込む爽やかな風。ヨーコの部屋には、家族の写真と並んであの写真があった。