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season2 4話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

4.『ひと欠片の亀裂』


「今度こそ……勝つ! ヤンヤンマ!」
「受けてたつ! ぴっかりさん頼んだ!」

 それぞれ一匹目。ヤンヤンマとぴっかりさん。

「か、勝ちたい! だから……けっぱる!!」

 エアスラッシュで体勢をくずされ、むしのさざめきをくらうもなんとかいなしエレキボールで効果抜群。でもヤンヤンマ倒れない。が、

「ああ間違えた! 違う、こんなはずじゃ……!」
「スグリさん……?」

 頭を抱えるスグリを見るヨーコだが、ぴっかりさんがむしのさざめきを再びくらったので戦いに集中する。かみなりパンチでとどめ。
 スグリの二番手はオオタチ。ヨーコはぴっかりさん続投。
 アイアンテールをかわされあなをほるをつかわれる。でも同じ技で対抗。かみなりパンチ&エレキボールで畳み掛けるもあなをほるでかわされる。しかし寸前でかわしてとどめのエレキボール。
 3体目、ニョロゾ。こちらはまんじゅうに交代。
 みずのはどうを放つニョロゾ。しかし特性ちょすいによりまんじゅうには効かない。

「ヌオーと同じ!? そんならとっしん!」
「ヘドロウェーブ!」

 突き進もうとするも急所にあたり、ワンパン。

「そんな!? 流れもってかれる!」

 最後の一体。

「どうして、こうなんだ? どうして……、どうして?」

 動揺しながらもカミッチュを出すスグリ。こちらは切り札わっぷるさん。

「りんごあめみたあなポケモン……。前に言うとった子かね」

 けたぐりで素早さをさげるも、

「カミッチュけっぱれ! あめまみれさしちまえ!」

 みずあめボム! 効果抜群。しかもこちらも素早さをさげられてしまう。

「エアスラッシュ!」

 倒れない。まるくなるで防御をあげられ、あめまみれのこちらは動きを封じられる一方。
 アクアジェットで解くついでに攻撃をくらわすも効果はいまひとつ。あめは変わらずまとわりついてくる。
 そこにみずあめボムを再びくらい大ピンチ。しかしなんとかこらえるわっぷるさん。

「ようこらえた! エアスラッシュ!」

 力を振り絞ったエアスラッシュで効果抜群。なんとか勝利。

「……おれが、弱いから」

 カミッチュのボールを握り、うつむくスグリ。片方の拳を握る。

「負けちまった。──おれが弱いから……、だから……」
「──スグリさん」
「──看板……、課題さ終わらせよ」
「……うん」

 何も言えないヨーコ。看板に近づいて読む。

「──『黄昏時、村の外で向こうから歩いてくる影があったなら気をつけよ。すぐさまお面をかぶってみずからの顔(おもて)を隠しなされ。さすれば影が人であれ鬼であれ、お面同士会釈して通り過ぎるのみ。
 もしお面を持たざるときあれば、影が人であることを願いなされ。その影、人であればよし、二度とお面忘れるべからず。
 その影が鬼であれば最期、真の面(おもて)を覗きこまれたなら、その者、魂を抜き取られ、二度と村へは帰れぬだろう』……」

 スグリがゆっくり話し出す。

「──当時みんなお面持ってて、それ全部作ったの……、おれのじーちゃんのじーちゃんの、ずーっとじーちゃんなんだって」
「すごい」

 素直に感心するヨーコ。

「もちろん鬼さまが魂抜くとかは嘘だと思うけど、うちがお面さ作ってたのは本当。
 おれん家……、代々お面職人の家系なんだって。じーちゃんもお面作れんだ。オモテ祭りも、オレの先祖がやろうって言い始めたんだと」
「……」

 一瞬口調が変わったのを悟るヨーコ。

「……おれ、ここの看板に書かれてること、好きじゃない。鬼さまが怖いからって、必要以上に怖がって、村の外へ追いやって……。鬼さまだって、きっとさみしかったはずだ。
 ──ひとりだけ……、のけ者にされたから」
「……ほうね」
「ヨーコも、そうだよね」
「……ごめん」
「……何が?」
「……」

 言おうとするも、やっぱり言えないヨーコ。

「──写真さ、撮ろっか」
「──うん」

 パシャリ。でもどこかぎこちない。

「これで課題はおしまいだ。おれ、ポケモンっこさもっと強くすっから……。……帰るね」
「……うん」

 別れて去る。
 ミライドンに乗って戻る途中、フジが原の景色の話を思い出して(朝食の時に出た)行ってみる。
 水辺の藤の木と、舞っているオドリドリにため息が出るヨーコ。課題が終わったのでひとまず公民館へ。ブライアに報告する。

「まだオリエンテーリングが終わってない生徒がいるんだ。待っている間は自由にキタカミをエンジョイしてくれたまえ」
「はい……」

 ここでみんなが帰ってきて夕食後(女の子から話しかけられ、何も答えられないヨーコ。
「スグリくん、落ち込んでる? 話しかけても気付いてもらえなくて……」)、部屋に帰ってシャワーを浴び寝転ぶヨーコ。
 この世界でひとりぼっちの感覚。誰からも見つけてもらえない、みんなと同じことが出来ない悲しさ。自分もかつてそうだった。ぐるぐる考えながらも眠りにつく。



 翌日。

「あ、ヨーコさん、おはよう」

 眼鏡少年から声をかけられる。

「おはよー」
「ゼイユさんから伝言で、家で待ってるからはやく来てほしいんだって」
「わかった」
「ペアのぼくを差し置いて家に招かれるなんてどういう関係?」
「あー、ちょっとねー。看板巡り終わったから、スグリさんづてで……」
「全部巡ったの!? ぼくとゼイユさんまだ2つ目すら行けてないよ!?」

 眼鏡少年びっくり。男の子と女の子も、

「早くてすごいね! ペアのお姉ちゃん、おれの体調心配してゆっくり巡ってくれてるんだ」
「気にしないで! それに昨日、管理人さんにすごいお面見せてもらっちゃったもんね!」
「お祭り入り浸ってたいけど、課題もやらなくちゃだしなー」

 ん? と女の子の発言にひっかかりを感じるが、姉弟の家に急いで向かう。

「ゼイユさん、来たで」
「ヨーコ! おそーい!」
「ごめん、急いだ方なんじゃけど」
「スグが起きてこないうちに話しちゃいたいの」

 おじいさんが話し出す。

「オーガポンさまのお面を直そうとしたんだが……、完全に修復するには、ひとつ素材が足りないんだ」
「素材?」

 ヨーコが首をかしげると、ゼイユが、

「じーちゃんが言うにはさ、てらす池に沈んでる『結晶の欠片』が必要なんだって。お面、今のまま返しにいってもいいけど、きれいにしたら、オーガポンもきっと喜ぶわよね!」
「うん、きっとそう。ゼイユさんも優しいね」

 ヨーコにっこり。ゼイユ、プンスカ。

「何よその言い方!」

 しかしすぐに、しんみりと、

「ま、本当の話聞いちゃったら……さ。オーガポンにいい思いしてほしいもん」
「その気持ちに、きっとオーガポンさまも喜んでくださるはずだ」
「でしょー!」

 おじいさんの言葉ににっこりなゼイユ。
 と、スグリ、家から出てくる。

「じーちゃん、おはよ」
「おお、スグリ」

 ゼイユすかさず、

「スグ! あんた今日はどっか行っ……」
「はいはい、勝手にすれば」

 そっけないスグリ。ゼイユ、ワナワナ。

「は……、はぁー!? なんですって!」
「……用、あっから」

 去っていくスグリ。気になるが何も言えないヨーコ。

「あいつ、昨日からなんかへそ曲げてんの」
「夕飯も食べずに、部屋にこもっておったな……」

 顔をしかめるゼイユ。心配げなおじいさん。
 ヨーコは去っていった方向を見つめるしかない。

「……スグリさん」
「ま! 思春期だし、そういうこともあるわよね。スグがヨーコにべったりだと動きにくかったけど、むしろ好都合!」
「ええと、鬼が山の頂上なんね」

 ヨーコ、マップを見る。

「よそ者が山に入るのゲゲーって感じだけど……、ま! あんたならいいわ。結晶の欠片求めて、山登りにレッツゴーよ!」
「てらす池は強いポケモンが出るから、気を付けなさいね」
「はい」

 行く前に祭り会場を覗くと、お面があったのでちょっと考え、ピカチュウお面と鬼のお面を買う(お土産もかねて)。ついでにきのみのあめをなめてみるが、あまりの珍味にみんなで撃沈。
 気を取り直し口直しのハナビラアイスコーンをなめ、そこからミライドンで鬼が山を登り地獄谷へ。へんな臭いに顔をしかめながらも進んでいく。
 アカデミーの地獄の階段並みの石段を上る。

「アカデミーの地獄の階段とどっこいどっこいの場所じゃ……」

 そして頂上。美しい池があった。

「わぁ……」



 看板を読む。大昔にどこかからもたらされた結晶の成分が溶けていて、あわく光ってる。でも飲める。池の光を見ていると、亡くなった人に会えるという言い伝えもある。

「亡くなった人に……」

 池をちらりと見るヨーコ。ぴっかりさん&わっぷるさんも出てきて見る。まぁ何も起こらないので橋を渡ると、ゼイユが先に来ていた。

「ゼイユさん、早いね」
「ヨーコ、来たのね! 見てみなよ!」
「キレイ……」
「ここがてらす池。きれいで驚いたでしょ?」
「うん! とっても」
「このへんの岩って、なんでか光ってんの。不思議よね。このあたりで死んだ人に会えるとか変な噂もあるくらい」
「看板にも書いとりんさったね」
「じゃ、お面を直すため! 水中に沈んでる結晶ちょっとだけ採ってこないとね。……というわけよ、ヨーコ! やったれ!」
「え」
「思いっきり池に飛び込むのよ!!」
「飛び込むん!? うちが!?」

 びっくりなヨーコに、ゼイユきょとんとして、

「だって、あたし泳げないし、服が濡れちゃうでしょ?」

 それからにっこりと、

「あんたすごいライドポケモン持ってるらしいし? いけるって!」
「あ、ああ、それなら……」

 と、ミライドンを出そうとすると揺れが。

「えっ!? 地震……!?」

 ゼイユ辺りを見回す。ヨーコも同様。
 すると池から美しい謎のポケモンが!

「みろろろろろ!!」
「ぴっかりさん!」
「モルペコ!」

 それぞれ出す(ヨーコはわっぷるさんを戻す)。ヨーコ、図鑑で調べる。

「ミロカロス……」
「こいつ、強そう! あたしがいて良かったわね」
「うん、助かる!」

 様子見でアイアンテールをくらわすも効果はいまひとつ。

「攻撃来るよ! ガードガード!」

 ミロカロスのたつまきに、受け身を取る2匹。
しかしひるんで攻撃出来ないモルペコ。エレキボールを出すぴっかりさん。効果抜群。でも倒れない。

「弱ってきてる! 一気にたたみかけ……」

 チャームボイスをくらいモルペコ倒れかけるも、にらみつけるで防御をさげる。狙ってかみなりパンチ。効果抜群でミロカロス倒れる。

「あー、ビックリした! ここ、さっきみたいなのたまに出てくんの」
「す、すごいとこじゃね」
「にしてもあんたって……、味方だと頼もしいわね」
「えへへ、ほめてもろうた」

 と、目の端に光るものが。

「あ!」

 近づいてみる。キラキラした欠片。

「ねえ、それって……」
「うん……」

 ヨーコ、手に取る。

「結晶の欠片じゃ」
「さっきのポケモンにひっついてたのかも?」

 と、

「池に沈む結晶……。このエネルギーはやはり……」

 ブライアがやって来た。

「「ブライア先生!」」

 ヨーコ&ゼイユびっくり。

「おや、ヨーコくんにゼイユくん。ペアをチェンジしたのかな?」
「あんまりここ……、地元の人以外は入るのやめてほしいんですけどー」

 呑気に質問するブライアに、ゼイユしかめ面。

「神聖な地であることは理解しているよ。一応、管理人さんには許可をとったのだが、不足かな?」

 不服ながらも納得した様子のゼイユ。しぶしぶ聞く。

「……何してるんですか?」
「ちょっとした調査さ。てらす池の水質に興味があってね」

 水面を見るブライア。

「……ビンゴ! だったよ」
「ビンゴといいますと?」

 質問するヨーコ。

「何故かはわからないが、てらす池の水はテラスタルエネルギーと同じ波長を持っているんだ。この理由を解き明かせば、いずれパルデア以外でもテラスタル現象を安定化出来るかもね」
「……はぁ」
「なるほど……?」

 わからないながらもうなずくゼイユとヨーコ。

「あの……、あたしたち急いでるんで。帰るよ、ヨーコ!」
「あ、ゼイユさん待って!」

 ゼイユ先に行く。つぶやくブライア。

「パルデア以外でもテラスタル現象を確立出来れば、テラパゴスに一歩近づけるはず……」
「先生にとっては、夢への一歩なんですね」
「ああ。引き留めて悪かった。気を付けてね」
「はい。失礼します」

 とんぼがえりで姉弟の家へ。

「じーちゃん、採ってきたよ!」
「結晶ですよ、おじいさん」

 意気揚々と伝えたふたりだが、おじいさんは暗い表情で、

「ヨーコさん、ゼイユ、すまない……」
「え、何?」
「鬼さまのお面を……、スグリが……、持っていってしもうた」

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