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season1 20話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

20.『シェダルの別火』


 美術の授業(テラスタルジュエルの話)を受け放課後、今度はスター団ほのお組「チーム・シェダル」の元へ向かうヨーコ。
 ハッコウシティで買い物をし、そこから例によってぴっかりさん&わっぷるさんとミライドンで走っていくと、ネルケと見知らぬネコのポケモン(ニャローテ)がたたずんでいた。

「……ヨーコか」

 ミライドンから降りたヨーコ達に気付き振り向くネルケ。

「ク……、ネルケさん、と……」

 ヨーコ、図鑑を起動させる。ネコポケモンはニャローテだった。

「ニャローテさん」
「そうだ。今のオレはネルケ。こいつは最近進化したオレの相棒ニャローテ。よくわかってるじゃないか」
「ニャーロ」
「はあ」

 ヨーコ(汗)。ぴっかりさん&わっぷるさんは相変わらず胡散臭そうなものを見る目付き。

「ヨーコ、まずは感謝するぜ。おかげでスターダスト大作戦に加わることができたからな」
「ネルケさん達は、なんのために?」
「スター団の問題とその謎……、それを突き止めるためだ」
「ニャロロ」
「どういうことです?」
「いじめで多くの生徒を退学に追い込んだ……、アジトにこもってアカデミーに襲撃する計画を立てている……、いくつかヤバい噂はあるが、あくまで噂レベル。今直面している一番の問題は……」

 ここで一息つくネルケ。

「団員達のあまりにも長い無断欠席……、不登校の状況なんだ」
「え」

 虚をつかれるヨーコ。

「こと5名の生徒……、スター団でボスと呼ばれる生徒は、1年以上学校に来ていない。加えて最近は、お前のクワッス、──今はウェルカモか、がやられたみたいに、したっぱ達がやんちゃを始めてるようで──」

 一旦言葉を切るネルケ。

「──だから、私はスター団に解散を要望しました。そして要望を無視するならば、退学してもらう他ない、と……」

 校長の言葉遣いに戻っていることも気にも留めず、黙って聞くヨーコ達。気遣わしげなニャローテ。顔を上げて話すネルケ。

「しかし、スター団から返事はなし。解散か退学かどちらかを選択する期限も迫っている……。そんな折に聞こえたのが、あなたとカシオペアの電話です」

 噂をすると電話が。

『……こちらカシオペア。ヨーコ、聞こえるか?』
「!」「っ!」

 目を見開くヨーコとネルケ。ネルケはひそひそ声に。

(続きはまたの機会に……。それではお気をつけて)

 黙ってうなずくヨーコ。ニャローテと共に去っていくネルケ。

『アジトが近いようだが、誰か……いたのか?』
「いえ、うちと相棒達だけです」
『……ボスを1人倒したことで、スター団は警戒を強めている。アジト攻略も以前より厳しいものになるだろう』

 バレてないようで内心ほっとするヨーコ達。

『くれぐれも注意してくれ。また連絡する』

 切れる電話。アジトに近付くヨーコ。見張りがひとり。
 ヨーコの姿を認め睨み付けてくる。

「……おい、なんだよ。ここスター団のアジトだぞ」

 わざと黙るヨーコ。苛立つ見張り。

「さっさと帰ってくれない? でないと正当防衛だぜ?」
「帰りませんよ。帰るわけなかろうが」

 強気な口調に少し怖じ気づくが、イキる見張り。

「よ、よし! じゃあ正当防衛でボッコボコにしてやる!」

 デルビルを出してくる見張り。

「ぴっかりさん、前みたあに露払いじゃ!」

 さっそく攻撃を仕掛けられるが、かわして姿を消すぴっかりさん。

「ど、どこ行った?」
「あなをほる!」

 地面から出てきたぴっかりさんにワンパンされるデルビル。

「オレの正当防衛が……!」 

 へなへなになるしたっぱ。

「あんためちゃ強いじゃん……」
「当たり前じゃ。ジムバッジ3つの実力なめんな!」
「っていうか、もしかしてスター団にケンカ売ってる人?」
「はい、北條陽子です」
「ご丁寧にありがとう! そりゃ激マズだぜ!」

 ガビーン! なしたっぱ。

「そんじゃオレは仲間のとこに帰ります! では! お疲れ様でスター!!」

 アジトに帰る見張り。入れ替わりにやってくるネルケ&ニャローテ。

「おーい! ヨーコ!」
「ニャーロ!」
「あ、ネルケさん、ニャローテさん」
「ほのお組アジトの調査をカシオペアに頼まれたんだ。終わったから手伝いに来たんだが、もう必要ないみたいだな……」
「ええ。ぴっかりさんがやってくれました」
「ピッカ!」

 すると、

「ボウ! ホウボウ!」
「「ん?」」「ニャ?」「ピカ?」「ウェルプ」

 一匹のカルボウが姿を現した。

「ボウ! ボウ!!」
「カルボウさん?」
「こいつは、ボウジロウか?」
「ボウ!!」

 うなずくカルボウ、もといボウジロウ。

「やっぱりそうだ! なぜここに……?」

 眼鏡を上げるネルケ。

「お知り合いですか?」
「ピカチュ?」

 聞くヨーコとぴっかりさん。

「ええ。アカデミーの敷地内でお世話をしているカルボウなのですが……」
「ボウボウ!」

 うなずくボウジロウ。

「ああ、昔のわっぷるさんみたあな」
「ウェルプ」

 うなずくわっぷるさん。

「ボウー!!」

 いてもたってもいられぬ様子で、アジトに行ってしまうボウジロウ。

「あ! ボウジロウ! ……行ってしまった」
「どうしたんですかね。まさかあん子もわっぷるさんみたあに……」
「ええ。スター団ほのお組と、何か関係が何か関係があるのかもしれません……」

 ネルケ、ヨーコに、

「私達はあの子を追ってから行きます! ヨーコさんとピカチュウさん達は先にアジトへ!」
「はい!」

 ネルケ&ニャローテ、ボウジロウを追いかけていく。
 そこでカシオペアから電話が。

『……したっぱに対処できたか』
「はい」
『そこにたむろしているのは、スター団ほのお組、チーム・シェダルだ。ボスのメロコはスター団きってのなんでも屋。どんな問題も強引に解決する。
 おそらくメロコは、我々の宣戦布告で荒れているはず。今頃したっぱ達がアジトで彼女をなだめているだろう。ならばしたっぱたちをどんどん倒せばいい。なだめる相手がいなくなれば、彼女は姿を見せるだろう』
「は、はぁ」(ぶち怒った時の径子お母さんみたあじゃ)
※ここで径子のくしゃみのカットが入る。
『準備が出来たら前のようにゴングを鳴らして大作戦開始! チーム・シェダルにカチこんでくれ』
「わかりました」

 電話が切れる。
 まんじゅうも出し、確認するヨーコ。

「みんな、準備ええかね?」

 うなずくメンバー。いざカチコミ。鳴り響くスピーカー。

『まぐれでほかのチームに勝ったやつがアジトにカチこんできました! スター団の力の見せ所です! 侵入者を叩き出してあげましょう! 10分以内にオレたちのポケモン30匹倒せるまで、ボスの手はわずらわせないぜ!!』

 前の如く無双しまくるヨーコ達。

「叩き出せるもんなら出してみいや!」
「守りきれませんでした……。そろそろボスの出番です!」

 例によってスターモービルで登場、ボスのメロコ。

「……テメーか、オレらにケンカ売ってんのは」

 ガンを飛ばしてくるメロコ。

「ええ、北條陽子です」
「細けぇことはどうでもいい。ケンカ売られたら買う……、それだけの話だ。……爆ぜろや」

 メロコ、コータスを出す。
 わっぷるさんをスターモービルにとっておくべく、ぴっかりさんが先鋒。

「テメーはオレが……、はっ倒す」
「……やってみんさい」
「ピカチュ!」

 あなをほるで大ダメージを負わすも、ひでりを使われ上がった火力に破れてしまうぴっかりさん。

「今のは……、やられたしたっぱ連中の分だ」
(……強い!)

 続いてまんじゅう。

「燃えろ……! んで! 灰になっちまえ!!」

 コータスからかえんぐるまをくらうポイズンテールをくらわすまんじゅう。マッドショットでコータスを倒す。

「……チッ! オレはまだ燃えッカスになってねぇんだよ!!」

 スターモービルを出すメロコ。攻撃と同時に当てたポイズンテールでどく状態にすることに成功するが、素早さの前に破れてしまうまんじゅう。

「真打ち登場じゃ! わっぷるさんあんたの力見せたりんさい!」

 切り札わっぷるさん。ひでりにもめげずテラスタル!

「えっとそばえて、わっぷるさん!」

 バーンアクセルをくらいやけどを負いながらも、パワーアップしたみずのはどう&アクアカッターで粘り強く追い詰め倒す!

「ったく。これで終わりかよ。やれやれ……」

 (回想)

 1年と数か月前……。

「……やれやれ、間に合ったな」

 ボスたちの元へ戻ってきたメロコ。

「メロちゃん、お帰り!」

 出迎えてくれるビワ。メロコ、照れ隠しにぷいっ、と、

「……カルボウ、何匹か進化させてきたぜ。これでパワー不足もなんとかなるだろ。スターモービルも動くはずだ」

 シュウメイ、オルティガに、

「やったでござるな、オルティガ殿」

 オルティガ、そっぽを向いて、

「口だけかと思ってた……」
「うっせえ! 一言余計なんだよ! テメーはそういうとこがウザいんだぞ!」

 喧嘩腰のメロコ。オルティガ苦々しく、

「メロコも似たようなもんでしょ……。口も態度も悪いから、悪目立ちしてるんでしょ?」
「それは違うよ、オルちゃん」

 優しく否定するビワ。

「メロちゃんはかわいくて女の子にヤキモチ焼かれるから、わざとぶっきらぼうに悪態ついてるの」

 その後なんとかフォローしようとして、

「えーっと……、だから結局、悪目立ちしてるんだよね」
「おいおい! ビワ姉、勘弁してくれよ!」

 苦虫を噛み潰したような顔のメロコ。ピーニャが諌める。

「そのくらいにしとこうぜ。そろそろ時間だもん」

 重々しくうなずくビワ。

「いよいよだね……、スター大作戦」

 シュウメイ、ピーニャに、

「して、マジボス殿の考えは?」
「ああ、いじめっ子をまとめてグラウンドに呼びだしたってさ」
「いよいよか……! 燃える……、燃えてくるぜ!」

 ピーニャの言葉に、メロコ燃える。

(回想終わり)

「燃えて、燃えて……、燃え尽きちまったか。……ここまでだな」

 笑いながらヨーコの元に来て、

「テメーのポケモン、マジで気合い入ってたぜ」
「ホント!? ありがとう!」

 思わず笑顔になるヨーコ。

「ああ、そしてこのオレに勝ったんだ! 胸張ってダンバッジ持ってけ」

 バッジをもらい握手するも強く握られる。

「痛い痛いメロコさん痛い」
「へっ……」

 すぐに手を離してくれる。

「もうどうにでもなれだ。わざマシンもくれてやるよ」

 ニトロチャージのわざマをもらう。

「あ、ありがとうございます」
「勘違いすんなよ。テメーにやるんじゃねえ。テメーの仲間のポケモンにやるんだからな……」
「あ、はい……」

 苦笑いになるヨーコ。

「……用は済んだろ。ひとりにさせろよ」

 なんとなく動けないヨーコ。ネルケ&ニャローテが来る。

「スター団のメロコ。会って欲しいポケモンがいる」
「……なんだ、テメーら」

 するとボウジロウがネルケ達の後ろから出てくる。

「ボウ!」
「カルボウ? いや、お前は……」
「ボウボウ!」
「ボウジロウか……。お前、どうして……」

 目を見開くメロコ。

「この子はあんたを探してアジトに来たみたいだぜ」
「ボウ!」

 うなずくボウジロウ。

「お前……」
「懐かれてるみたいだな」
「──アカデミー行ってたころは、コイツと毎日遊んでたからな。火のゆらめき見てりゃ、考えてることくらいわかるぜ」
「すごい」

 感嘆するヨーコ。同時にホッとする。

(良かった。ひどい目に合わされとらんかったんじゃね)
「ボウジロウは、何を思ってここに来たんだろうな」
「ボウボウ!」
「……」

 黙って背を向けるメロコ。そんなメロコに回り込み、寄り添うボウジロウ。

「ボウボウ!!」
「ボウジロウ……」

 ボウジロウを見るメロコ。

「──オレには、ボウジロウがあんたに戻ってきてほしいと言ってるように……」
「……ウゼえ」
「メロコさん……」

 苦しそうなメロコが心配になっているヨーコ。

「──スター団はアジトでアカデミーを襲う計画を立てているとか……?」
「そんな噂、あんのかよ。あのころから何も変わってねえな。マジでありえねえから」

 吐き捨てる様に言うメロコに、首をかしげるヨーコ。引き続き問うネルケ。

「さっきまで改造車を乗り回してたのは?」
「スターモービル……。昔、ケンカ用に作ったんだ。実際に使ったのは、テメーら相手が初だけどな」
「初……?」
「昔のケンカ……?」

 そろって聞き返すヨーコとネルケ。

「スター大作戦って、知ってるか?」
「スター大作戦?」
「スターダスト大作戦じゃなくか? 初耳だな……」

 メロコの質問に、またしても首をかしげるヨーコとネルケ。

「そうか、知らねえよな……」

 寂しげに笑うメロコ。

「オレらスター団にとっては、宝物みたいな思い出だったんだ」

 何も言えないヨーコ。



 アジトを出るとカシオペアから電話。
『……ヨーコ』
「カシオペアさん」
『メロコからボスの証、ダンバッジをもらったようだな』

 団バッジを無言で見せる。

『ふむ、確かに。これで、ボスがいなくなったチーム・シェダルはなくなるはず……』

 そして電話の向こうでまた何か思っている様子。

『──メロコ……』

 少しあって、

『……すまない、また少し、考え事をしていた』

 LPとわざマシンのデータをもらう。

『新しいわざマシンでポケモンを強化してくれ。
 ……補給班にわざマシンの材料も届けさせる』

 そして現れるボタン。

「ど、どもー、補給班です……」
「あ、ボタンさん、お疲れ様」

 と、突然出てくるミライドン。

「アギャス!」
「うわっ、何なん!?」
「ミライドンさん!」

 ボタンの匂いを嗅ぎ、気に入ったのかなめ始めるミライドン。

「ちょ、やっ、やめろ……! た、助けてー!!!!」

 慌てて止めるヨーコ達。でもなめ続けるミライドン。しばらくして満足したのか眠る。

「うう、ヨダレでベトベト……。マジで何なん、あれ……?」
「うーん、謎のポケモン、としか……」
「えっ、よくわからんポケモンつれてるのドン引きなんだが……?」
「何も悪させんよ? むしろうちらを乗せて走ってくれんさるし。高いところから落ちてもへっちゃらじゃし」
「うーん、ある意味すごいけど……。えっ、すごいか?」

 気を取り直すボタン。

「って、あ、えと……、忘れないうちに、報酬ね」

 また落とし物をもらう。

「えと、名前、ヨーコ……、だよね?」
「うん。北條陽子。あ、この子達は切り札のわっぷるさん。ムードメーカーのまんじゅう」

 ヨーコ、回復させたわっぷるさんとまんじゅうを紹介する。

「いやポケモン達の名前ゆるいな。こないだも思ったけど」

 ツッコミを入れるボタン。気を取り直し、

「ヨーコ、スターダスト大作戦戦闘班から見て……、スター団って、どうなん?」
「え、普通に強いよ? ボスさんは特に。何度もひやりとさせられたもん」
「……ふーん」

 ちょっと思わしげなボタン。

「噂だと、スター団って、根っからの不良じゃないんだって。大抵がいじめられていたり、人付き合いが苦手なだけ……。そんな連中が集まって、スター団が結成された。ひとりでは立ち向かえないいじめに打ち勝つために……」
「いじめ? いじめられとった人達じゃったん……?」

 ちょっと信じられないヨーコ。でもメロコの台詞を思い出し押し黙る。

「──あっ、これ、生徒達のSNSハッキングして突き止めた情報。なんでも5人のボスを集めて、団を作った真の黒幕もいるとか……」
(それが、マジボス……、かね)
「しゃべりすぎた。のど、痛い……」
「あ、それなら、これ……」

 懐からミツハニあめを取り出すヨーコ。

「甘うてのどにええんじゃと。もらってばっかりやし」
「あ、ありがと……。残りの団のアジトも、えと……、がんばって」
「うん」

 見送りながら、ポツリと呟くヨーコ。

「メロコさんの笑った顔、なんかよかった……」

 もにょもにょがはっきりとした形になりかける。黙ってうなずくぴっかりさん達。

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