season6 1話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
『そのブルーベリーは、甘くない』
(ポスター鎌倉殿風に)
1.『指名~交換留学生・北條陽子~』
※1時間スペシャル。
season5から2週間後。
ミライドンに乗り込み、走って滑空してなみのりして、気ままにドライブしているヨーコ。
マリナードタウン横のビーチでぴっかりさん&ミライドン共々のんびりしていると電話が。
「ん?」
「ピカ?」
出てみるヨーコ。
『もしもしヨーコさん。私、クラベルです』
「クラベル先生!」
『今お時間よろしいですか?』
「よろしいです!」
「ピカチュ!」
うなずくヨーコとぴっかりさん。
『おやおや、お元気そうで何よりです』
電話ごしに笑っているクラベル。
『さっそくですが、本題に入りましょう』
思わず居住いを正すヨーコ&ぴっかりさん。
『この度、ヨーコさんにお電話差し上げたのは、ヨーコさんに名誉あるチャンスが訪れたからです。イッシュ地方のブルーベリー学園をご存知ですよね』
「もちろん知っとります!」
『ええ、林間学校でご一緒したとうかがってます。私の古い友人がそのブルーベリー学園で校長先生をなさっておりまして、ヨーコさんを交換留学生としてぜひお迎えしたいとおっしゃっています』
「交換留学生!?」
びっくりヨーコ。
『広い世界を知ることができる絶好の機会だと思います。何事も挑戦ですからね。お受けすれば、半年ほどそちらで過ごすことになります』
「な、なるほどですね……。ブルーベリー学園、ポケモン勝負に力入れとるところやし、ネモさんにまた勝つため行きたいですけど……」
少し戸惑うヨーコ。
『ははは、素晴らしい心意気です』
クラベル笑うも、一旦言葉を切り、
『ただ……、いったい何故、ヨーコさんをご指名なのか……。一度彼にお会いして、真意を聞いてみましょう。かなりファンキーな方ですが、私もついていますのでご安心を。もろもろのお返事は直接校長室でお伺いしますので、後ほどいらしてくださいね』
「わかりました!」
『お忙しいところ、失礼しました。……それでは、お気を付けて』
電話切れる。
果たしてアカデミーについてみると、
「あれー? その顔……」
ダンディーかつラテンだが胡散臭げな紳士が声をかけてきた。
「どっかで見たなー。えーと、誰だっけ?」
(汗)なヨーコ。
「えと、どこのどなたか存じませんが、うちは北條陽子です」
「あー、そうそうヨーコさん! 知ってる知ってる」
笑う紳士。
「んじゃ、そういうわけで、行こっかー」
「え」
「ちょっとちょっと! シアノ先生!」
急展開についていけないヨーコに救いの手! クラベルが駆け寄ってきた。
「あれ、ベルちゃんいたの! 元気そうだねー?」
「いやいや、当然私はいますよ! あと、生徒の前でその呼び方は……」
ツッコミを入れるクラベル。
「というか、校長室に来てくださるとお約束したではありませんか!」
「あれー? そうだっけ?」
首をかしげるシアノ。
「まあいいじゃない。だってこの子でしょ?」
「それは、そうなのですが……」
(なんかつかみどころのない人じゃなぁ……)
ヨーコが困惑していると、
「おっとヨーコさん、説明不足ですみません。こちら、交換留学先、ブルーベリー学園のシアノ校長先生です」
「うん、僕、校長ー」
シアノ、にこやかにうなずき首をかしげる。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ええ……」
ヨーコ、うなずきつつ困惑(汗)。
「ヨーコさんの反応を見るに、おそらく説明されてないでしょう」
ため息交じりクラベル。
「そういえば……、この度は何故、ヨーコさんを交換留学生としてご指名で?」
「ベルちゃん、いい質問だね。んー、それはねー」
帽子を脱ぎながら答えるシアノ。少し間があいて、
「──あれ? ……なんでだっけ?」
ずっこけるヨーコとクラベル。
「あ! そうだ! キタカミ!」
帽子を戻し、にっこり笑うシアノ。
「林間学校でうちの生徒と一緒になったでしょ? たしか名前は──ゼイユちゃん!」
「ああ、ゼイユさん!」
「彼女から君を推薦されたんだった」
「ゼイユさんが?」
嬉しくなるヨーコ。
「そ! ついでにヨーコさんっていうおもしろそうな子がいるって情報筋からも教えてもらって、さっきその辺でも聞いてみたら、君を知ってるって人、多かった。
で、こうして実際に会ってみたけど……。うん。僕もいいなーって思ったかな!」
「ほほう! シアノ先生もそう思われますか!」
クラベルも嬉しそう。
「君にはぜひ我が校に留学してもらって、新しい風を吹かせてほしいなー」
「シアノ先生はこのような感じですが、人を見る目は確かです。ヨーコさんさえよろしければ、ブルーベリー学園でも見聞を深めていただきたい」
クラベル、キリリと笑い、
「……いうなれば、宝探し拡張版ですね!」
「なるほど!」
思わず目が輝くヨーコ。
「私も付き添いたいですが、シアノ先生がいればひとまずは安心……、ですかね?」
「安心安心ー!」
高らかに笑うシアノ。
「まだ見ぬ宝物を探してきてくださいね」
「はい!」
「それでは、いってらっしゃい」
手を振り去るクラベル。
「君がブルーベリー学園に行きたくなったら、声かけてよー」
「はい! 家族や友達に挨拶してきます!」
スグリについて多少の不安はあるものの、ゼイユと久夫に会いたいヨーコ。ネモ達(season5最終回の大会でネモに派手に負けたため、ネモにはリベンジマッチの約束を取り付ける)や家族に励まされながら旅支度をし、晴美への挨拶を済ませ、エントランスへ。
「シアノ先生!」
「ブルーベリー学園への留学準備は出来たかな?」
「はい! お世話になります!」
ペコリ!
「オッケー! それじゃ、レッツゴー!」
ということで、ブルーベリー学園へ──
*
「ジャーン! 到着ー!」
ブリッジを渡ると、近未来的な建物!
「わー!」
「ようこそ、僕のブルーベリー学園へ!」
バトルコートのある広場が見える。
「今見えてるのがエントランスで、学園のほとんどは海の中に沈んでるんだー。すごいでしょー!」
「ほー、びっくりなつくりですねえ」
「あとねー」
シアノ、屋根のドーム部分を見上げる。
「青いでしょー! こだわりのブルーベリー色なんだー! あとはねー」
シアノ、少し黙って、
「……なんか逆に聞きたいことないの?」
「どうして海の中にあるんです?」
「海底で運用している資源開発プラントに併設してるからなんだ! まぁ海の底で海洋研究とか海底資源を調査研究してる場所と一緒になってるってこと!」
「クラベル先生とは? どんな関係なんです?」
「ベルちゃんは大学院時代の僕の後輩でね、ちゃらんぽらんな僕と違って、昔から真面目でいいヤツなんだよなぁ」
「あ、わかります」
うなずくヨーコ。
「でしょー」
シアノも同意する。
「ほいじゃ、学校の名前の由来ってあるんですか? アカデミーは昔からパルデアに生えとる果物が元じゃけど」
「えー、君って変なとこ気にするね? それはねー、たしか、えーと……」
「ブルーベリーの花言葉、『実りある人生』……、からだと聞いていますよ!」
別の生徒がやってきた。ピンクの髪の女の子。
「そうそう! それが言いたかったんだー」
にっこりうなずくシアノ。
「さっすがタロちゃん」
「いえいえー」
タロもにっこり。それからヨーコを見て、
「そちらの方はお客様ですか?」
「そうそう! 交換留学のヨーコさん! 半年間こっちにいるんだ。なかよくしてよー」
タロびっくり。
「わっ! パルデア地方から来るって噂の……、あの!?」
タロ、すぐに気を取り直して、
「自己紹介が遅れました。わたしはタロ! 2年生です!」
「北條陽子です。グレープアカデミー1年生です。半年間お世話になります」
「こちらこそ」
お辞儀しあうふたり。
「それにしても、シアノ先生が名前を覚えてるなんてめずらしい。よっぽどすごい方なんですね」
「言うねえー。まあヨーコさんは、パルデア地方チャンピオンクラスのトレーナーのひとりだからねー。あ、これ、ベルちゃん情報」
「どうりで!」
膝を打つタロ。
「そうだタロちゃん、よかったらヨーコさんに学園の説明してあげてよ!」
「えっ! わたしがですか!?」
「だって、僕だけじゃ心もとないでしょ?」
「それはそうですけど、わたしよりもっと適任が……」
タロ、すぐにヨーコへ向き直り、
「えーと、ごめんなさい、イヤとかじゃないんですよ!? シアノ先生、いっつもこうやって仕事押しつけるから……」
「大変ですねえ」(汗)
「まったくです!」
タロ、シアノにバッテンマーク。
「そういうのよくないと思います!!」
「手厳しいねえー」
しかし気にせず笑うシアノ。考え込むタロ。
「うーん、でも噂の留学生でパルデアチャンピオンのヨーコさんとお近づきになれるのは、アリだなぁ」
タロ、にっこり承諾!
「わかりました! お引き受けしましょう!」
「わーい」
「よろしゅうお願いしまーす」
シアノにっこり。ヨーコも嬉しい。
「それではブリッジをまっすぐ進んで、エントランスロビーまで向かいましょう!」
「ここから見える夕日ね、綺麗なんだよー」
ということでまっすぐ進んでエントランスへ。
「こちらがブルーベリー学園の入り口、エントランスロビーです」
中央にはバトルコート。奥にはゲート。周りには階段方の観客席。
「ブルーベリー学園はポケモン勝負に力を入れてまして、目の前の中央コートでは公式戦などがおこなわれます。使われてないときは自由に使えます。ポケモンを戦わせる機会は、ほかの学校より多いはずですよ!」
「そうそう! そうなんだよねー」
うなずくシアノに、タロはため息。
「シアノ先生がいると、ちょっと……、やりづらいです」
すぐに調子を取り戻し、
「海風が気持ちいいので、試合がないとき、観客席は生徒たちの憩いの場になってます」
「ええですねえ」
思わずほっこりなヨーコ。
「そしてそしてなんと、本校には驚きの性質がありまして……」
「はい……」
身構えるヨーコ。
「──野生でテラスタルするポケモンがいるんです!」
ややあってヨーコ、
「──ほうですか……」
「あっ、パルデアでは当たり前のことでしたね、すみません」
謝ってくれるタロ。シアノが解説に入る。
「パルデア地方で発見された現象、テラスタル……。この学園はテラスタルオーブに続いて、テラスタルのメカニズムを制御できる技術を発明したんだー」
シアノ、ヨーコにニッと笑い、
「どうやったか知りたいでしょー?」
「あの! その説明は降りてからの方がわかりやすいので、あとでお願いします!」
タロ止める。
「しっかりしてるねえー」
と、シアノはたと思い付いて、
「そうだいいこと考えた! 君たちさー、勝負してみなよー!」
「へ?」
「えっ、今からですか!?」
目を丸くするヨーコとタロ。
「うん、ヨーコさんの実力も見たいし」
シアノ、ヨーコを見て、
「タロちゃんはねー、校内で色々勝負するリーグ部の四天王だから、学びがあると思うよ。お父上はイッシュのジムリーダーだしー」
「あ、勝手にわたしの個人情報を……」
タロ、ムッとしてバッテンマーク。
「そういうの、よくないと思います!」
「ごめんよー」
しかしシアノはのらりくらり。
「ふたりの勝負、審判ついでに特等席で観させてもらうねー」
シアノ、ついでに集まっていた生徒達に、
「おーいみんなー! タロちゃんと、留学生でパルデアチャンピオンのヨーコさんの勝負が始まるよー!」
みんなバトルコートに目を向ける。ヨーコ、思わずペコリ。ひそひそ声も聞こえる。
「あの子が留学生?」
「あんまし強そうに見えないな」
「大丈夫かしら。ここポケモン強くないとやってけないけど……」
そりゃそうじゃね、負ける時もあるし。と特に意に返さないヨーコ。
「まったく、相手を見た目だけで判断したら足元掬われる、って授業でも言われてるのに……」
タロ、ため息まじりに、
「すみません……。シアノ先生ったら言い出すと聞かないんです」
「ああ、いえ、大丈夫です」
「……とはいえ、わたしもちょっとわくわくしてます!」
「よかった、うちもです」
笑いあうふたり。
「ブルーベリー学園はダブルバトルが主流です! 交流試合、頑張りましょっか!」
「はい!」
と、ボールが震えてぴっかりさん出てきた。
「ピカチュ!」
「ぴっかりさんもやる気充分じゃね!」
「わあ、かわいい!! 女の子のピカチュウですね! ハート型の尻尾がとってもキュートです!」
目を輝かせるタロ。
「うちの相棒のぴっかりさんです」
「ピッカ!」
どや顔ぴっかりさん。
「ツンデレじゃし少しウエメセですがお気になさらず」
「いえいえ、かわいいは最強ですから! ではお願いします!」
ということでバトルコートで位置につく。
「それじゃ、勝負開始ー!」
シアノの合図と同時に、タロはプラスル&マイナンを出す。
ヨーコは安定のぴっかりさん&わっぷるさんを出す。
「ブルーベリー学園代表として、恥ずかしいとこ見せられませんね」
楽しそうに笑うタロ。
「うちも、グレープアカデミー代表としてはりきります! えっとそばえて、わっぷるさん!」
わっぷるさんテラスタル。周囲からも歓声が上がる。
「キレイ……」
思わず息を飲むタロ。周りからも感動のため息。
「あれがテラスタル!?」
「ピカピカしてる!」
(ぴっかりさんと同じ電気タイプかね……。電撃は大丈夫か試してみるか……)
ぴっかりさん、ためしにプラスルにかみなりパンチ。しかし特性ひらいしんで無効&特攻アップ。マイナンも特攻が上がる。
「特性ひらいしん&マイナス! 電撃くらってもへっちゃらパワーアップと、相方に当てられてパワーアップする特性です! コンビネーション攻撃にはうってつけですよ!」
「なるほど勉強になります!」
「かわいいコンビネーションお見せします! プラスル、スピードスター!」
プラスルのスピードスターがさっそくぶち当たる。畳み掛けるようなマイナンのみわくのボイスをかわすわっぷるさん。
「ほいじゃこっちも! わっぷるさん、わざマシンのやついくで!」
わっぷるさん、マイナンに肉薄! かわらわりで急所に当てマイナンしとめる。
「テラスタルのタイプと同じじゃなくても威力はそのまま強いです!」
「プラマイ戦法ダメでしたか……、しかも痛いとこつかれちゃった。どうやって立てなおそうかな……」
タロ、少し考え、
「ではではゴリゴリ攻めちゃいます」
ドリュウズ登場!
ぴっかりさんはプラスルにはたきおとす攻撃!
しかしみわくのボイスくらう。
「プラスル、飛び上がって! ドリュウズ! お願ーい! めいっぱい揺らしちゃおっか!」
プラスルが飛び上がった刹那じしん攻撃! だが間一髪でわっぷるさんがぴっかりさん拾う!
「ふたりとも、一気にいくで!」
わっぷるさん、空中から必殺のアクアステップ! 倒れるドリュウズ!
「なるほど! タイプ相性を的確に攻めてきちゃいますか」
思わず感心なタロ。一方、ぴっかりさんも飛び上がり、空中にいるままのプラスルの背後にまわりじゃれつく攻撃! プラスル倒れる。ヨーコ勝利!
「勝者、グレープアカデミーのヨーコさん!」
シアノ宣言! 周囲からも歓声と拍手。
「水色のやつ、パルデアのポケモンか!?」
「かっけえー」
「前言撤回! この子すごい!」
「本気じゃないとはいえ、タロちゃん相手にやるぅー!」
「久しぶりにいいもん見たな!」
「おーい留学生! 今度勝負しよーぜー!」
口々に誉めてくれる生徒達。
「圧倒されちゃいました。すごい!」
タロ、苦笑しつつもヨーコと握手してくれる。
「しかもお上手ですね、本場のテラスタルの使い方! さすがって感じでした!」
少し昂るタロ。
「ブルーベリー学園では、最近テラスタルオーブが支給されたばかりなので、使い方のコツ、教えてもらいたいです」
「いやいや、向こうじゃもっと使い方上手い人おりますけえ」
シアノも近づき、
「ふたりともお疲れさまー。ヨーコさん強いねー、ドリュウズって意外と素早いのに、よく対応できてたよ。いやあいい勝負だったねー!」
ついでにふたりのポケモンも回復してくれる。
「はい! うちのドリュウズ、かわいいだけじゃないのに……」
タロもうなずいてくれる。
「おっとそうだ、制服もあったんだった! 向こうで着て気分出しちゃいなよ!」
受付横の更衣室を借りて着てみるヨーコ。
「わあ……!」
青の夏服!
「わっぷるさんと同じ色じゃ!」
「バルーブ!」
サムズアップわっぷるさん。
「ピカチュ!」
馬子にも衣装ね! な感じのぴっかりさん。
「ふたりともありがとー」
「とってもお似合いですね!」
タロも誉めてくれる。
「えへへ、ありがとうございます」
「キマってるねー! ついでにこれもあげちゃう」
おしゃれカードあおをもらう。
「おお、みどりに引き続き……」
「パルデアのブティックや美容室で注文できるものが増えるんだよー」
「それでは、気分も新たにお次は学園の中に行ってみましょうか」
タロ、受付ゲートを見て、
「学内の移動はあちらのゲートから行き先を選びます。テラリウムドームをご紹介しますよ!」
*
ゲートをくぐり、海中エレベーターで到着後、廊下を進むと……、
「わぁ……!」
思わずため息が出るヨーコ
「こちらが、ブルーベリー学園が世界に誇る海中庭園……、テラリウムドームです!」
一面の自然が広がっている!
「海の中なのに、壁や天井をプロジェクターで映してるので、まるでお外みたいですよね!」
「はい、本当に広い……」
「ポケモンが過ごしやすい環境が人工的に作られているんです」
「僕が設計したよー! すんごいお金かかったよねえー」
シアノしみじみ。
「ドーム内には、環境エリアが4つほど内包されてまして……」
タロ、目の前を指す。
「まずはこちら、亜熱帯~なサバンナエリア」
「一面の草原!」
タロ、ロトムスマホを取り出し、画像を見せながら、
「向かって右手側は、南国~なコーストエリア」
「海じゃ海!」
「左側は渓谷~なキャニオンエリア」
「険しい!」
「最後、奥のほうは雪国~なポーラエリア」
「ナッペ山思い出すわあ……」
「気温や湿度など、エリアごとにこまかく調整されてるので、エリアが違えば、生息しているポケモンも全然変わりますよ!」
タロ、ロトムスマホをしまう。
「こだわったよねえー」
シアノまたしみじみ。
「ヨーコさんは、どのエリアが気になっちゃいます?」
「ほうですねえ……」
ヨーコ、少し考え、
「南国のコーストエリアですかねえ。実家が海近いってこともあるけど……」
「うふっ、気が合いますね! わたしも一番好きです! ゆる~い雰囲気が落ち着きます!」
タロ嬉しそう。
「あ、ポケモンを回復させたい時は、ドーム内各エリア休憩所に設置してある、セルフ回復マシンでご自由にどうぞ」
「自動!? すごい!」
「では、シアノ先生、どうしてブルーベリー学園では野生のポケモンがテラスタルしたり、結晶が生成されるんですか?」
シアノに話を振るタロ。
「あれ? 知ってるでしょ? ……ってそういう段取りなんだね」
シアノ、上を見ながら、
「その理由は……、天井をご覧あれ!」
見上げるヨーコとタロ。
「あれこそ、テラリウムドームを見守るテラリウムコア。あの中にはパルデアで採れたとある物質が溶け込んだ液体が入ってるんだよー」
「ほえー」
適当な感想しか出ないヨーコ。
「あそこからテラスタルのエネルギーを照射してるから、ドームでテラスタル要素が活発なんだ!」
「さすがー! すごーい! そうなんですね!」
丁寧に誉めてあげるタロ。目線を戻し、
「そういえば、テラリウムコアに入ってる物質って何なんです? 情報……、公開されてませんよね?」
「あ、それうちも気になります」
「ふっふっふ、それはねー……」
「「それは?」」
聞き返すふたり。シアノ、少し間をおき、
「……あれ? なんだっけ?」
ずっこけるヨーコとタロ。
「ブライアちゃんにまかせっきりで、ちょっとわかんないや」
「……だと思いました」
「ブライア先生、さすがですねえ」
ジト目なタロ。ヨーコは(汗)ながらも感心。
と、ディンドンダンドン♪ 放送チャイム。
『まもなく、コーストエリアで実技授業「ドーム生態・捕獲研究」が始まります。受講する生徒は、コーストエリアまでお集まりください』
ドンダンドンディーン♪
「ちょうど授業が始まるみたいですね!」
タロ、ヨーコに、
「せっかくなので、ヨーコさん、本校での初授業、ご一緒しませんか?」
「はい、ぜひ!」
「うふふっ、勉強熱心でいいですね!」
タロ、再びスマホロトムを取り出し、
「ドーム内のマップをスマホロトムに登録しますね」
「あ、ありがとうございます!」
ヨーコもスマホロトムを取り出す。
「わぁ、カバーもピカチュウ!」
「えへへ、パルデアのお店で買いまして」
ふたりともにっこり。と、タロ、少し考えながら、
「テラリウムドームは自分で歩くのが楽しいし、案内するとかえって迷惑かなぁ……」
タロ、すぐに決める。
「……うん! というわけで、コーストエリアの授業場所までは、自分の足で行っちゃってください!」
「はーい」
と、シアノおもむろに、
「僕がいなくても全然大丈夫そうだね」
「え?」
振り向くタロ。
「ヨーコさんには寮の部屋も用意してるから、あとで行ってみてよ!」
「あ、はい」
「あー、あと、図鑑アプリ開いてごらん。部屋の番号も一緒に送るから」
シアノ、スマホロトムを取り出す。ヨーコも出す。ブルーベリー図鑑が追加された!
「わぁ、新しいポケモン図鑑!」
「ドームのポケモンとじゃんじゃん出会ってよ!」
シアノ、スマホロトムをしまい、
「それじゃ、ブルーベリー学園生活、思いっきり楽しんでってねー!」
去っていく。
「本当に行っちゃった……」
「アカデミーの見学ん時とはだいぶ違う……」
きょとんと見送るふたり。タロ、ヨーコに、
「代わりにわたしがしっかりするので、心配しなくて大丈夫ですからね」
「お世話かけます」
ぺこり。
「それじゃ、授業に行きましょっか! コーストエリアで待ってますね!」
「すぐ来まーす!」
タロを見送り休憩所に立ち寄ってみる。ぴっかりさんも出てくる。すると見覚えのある人が。
カメラをかまえ変わった姿のガーディを連れた人。
「あ!」「ピカ!」
「ぐふふん!」
ガーディが気付いて鳴く。
「あれ? なんだか見覚えあるお顔……」
サザレ、すぐに気付いて、
「やあ助手クン……、じゃなくってヨーコクンとぴっかりさんじゃないか!」
「サザレさん! お久しぶりです!」
「ピカチュ!」
「そうそう! おひさしぶりのサザレさん! キミたち元気そうだな! キタカミでは赫月の調査でお世話になったよね!」
嬉しそうなサザレ。
「再会の記念に写真のポーズを教えてあげよう!」
キラーンエモートを教えてもらう。
と、ツノじろうが出てくる。
「あ! キミにたくしたガーディ! ウインディになったのか!」
サザレ大喜び。
「はい! 自分でほのおのいし使いたい言うてきんさって、この通り!」
「すごいすごい! さっすがウインディ! 男前!」
ツノじろう、兄と再会を喜ぶ。
「ぐるるふ!」
「ぐふぁーん!」
「ガーディは対となってるポケモン! 大事にしてくれたから再会できたね! ありがとう!」
「いえいえ、ツノじろうがんばっとったけえ」
「ところで、ヨーコクンはどうしてここに? ブルーベリーの制服着てるけど、転入してきたとか?」
「あ、実はかくかくしかじかで」
「へー! ヨーコクン交換留学中なんだ!」
「半年間お世話になります」
「そっかー。奇遇なことに、ワタシも最近この学園でカメラマンとして働いてるんだ!」
「すごい! さすがです!」
「ピカピカ!」
「ふっふっふー! すごかろうさすがであろう!」
サザレ、カメラを手ににっこり。
「まあ、まだ試用期間中なんだけど……。なんかドームとか生徒たちのスナップ写真広報に使うんだって。よかったら、キミたちの写真も撮らせてもらうかも!」
「ありがとうございます!」
ということでセルフ回復マシンとか自販機見たりして、マップ登録しミライドンにライド! ポケモンを眺めながら走る。
「色んなポケモンおりんさるねえ。仲間になってくれる子おるとええね」
「ピッカチュ!」
「アギャッス!」
*
そうこうしている内に南国~なコーストエリアに到着! マップの場所に到着。休憩所隣の屋外教室にて生徒たちが集まっている。タロもいる。
「タロさん!」
「ヨーコさん!」
タロ、振り向く。ヒソヒソ声で、
「迷わず来れました?」
「来れました!」
ヨーコもヒソヒソ。
「よかったです!」
と、授業スタート。
「みなさん、アローラ! それでは授業を始めます!」
先生、ヨーコの姿を認め、
「初めての人もいるみたいですね!」
ヨーコ、軽く会釈。みんなも興味津々な目。
先生、目線を戻し、
「ここ、コーストエリアは、南の島のような環境を人工的に再現しています。そしてここには、そんな暖かい気候に順応したポケモンが多く暮らしています。通常よりたくさん光を浴びて、ほかの地方よりも大きく成長しているポケモンもいますよ!」
「なが~く成長したナッシーとかですか?」
別の生徒が質問する。
「そうその通り! 同じポケモンでも別の地方で姿が違う、リージョンフォームですね!」
ヨーコ、後期最後の生物学の授業を思い出す。
先生、生徒たちを見回し、
「それではみなさん、実際にリージョンフォーム、アローラのすがたのポケモンを捕まえてみましょう! 捕まえたらわたしまで見せに来てくださいね」
先生、宣言!
「それでは、授業開始! アローラな気分で歩き回りましょう! 他のエリアに行っても大丈夫ですよー」
生徒たち、おのおの解散。タロ話す。
「ブルーベリーは、実際にやってみる授業が多いんです」
「なるほど」
「ではでは、初授業がんばっちゃいましょっか!」
「はい!」
タロと別れ、近くの草むらをぴっかりさんとぶらぶらするヨーコ。
「ついでによせて(仲間になって)くれそうなポケモンおらんかねえ」
と、草むらががさがさ鳴って、
「ベトベト!」
「ありゃ!」
緑色のベトベターが立ちふさがった!
「ベットベト!」
力比べしよう! と言っている様子。
「パルデアのベトベターさんと違う色……、もしかして」
図鑑で調べる。アローラのベトベター!
「ちょうどよかった! あんた、勝負してうちらが勝ったらよして……、あ、仲間になってくれんかね?」
「ベット」
ベトベターうなずく。
「よし、やろっかぴっかりさん!」
「ピカチュ!」
力比べ。なかなか固い。しぶとさに敬意をあらわしいかづちおろし! ベトベターが息切れを起こしたところでボール! 無事にゲット。
べとべとさんと名付け回復してやり、戻るヨーコ。
「先生!」
「アローラのすがたのポケモンは捕まえられましたか?」
「はい、このベトベターさんです」
べとべとさん出す。
「ベトベ」
「おお! 間違いない! そのベトベターはアローラのすがた!」
先生驚きつつも解説してくれる。
「ゴミ問題を解決するため、アローラに持ち込まれたベトベターがいつの間にか姿を変えたポケモンだ!」
「えっ!? ヨーコさんもう捕まえちゃったんですか!?」
タロが駆け寄ってくる。
「えへへ、相棒とがんばりました」
「ピカチュ!」
どや顔ぴっかりさん。べとべとさんは「強かったわー」顔。
「勝負だけでなく捕獲もお上手だとは……。グレープアカデミーのレベルの高さが伺えますね」
後からやって来た他の生徒達と見せ合いっこしたりしてしばらく経ち、
「はい、それではみなさん、集まってくださいー!」
生徒たちがどやどややってくる。
「時間が来ましたので、授業は終了します! まだ捕まえられてない人は、次の授業までの宿題ですよ! それでは、解散!」
「ちぇー、おれ宿題だよ」
「よかったー、ナッシーほしかったんだ」
「ベトベターも大切にする」
「アローラのロコン持っててよかった」
口々に話しながら戻っていく生徒たち。
「ヨーコさん、ブルーベリー学園の授業はどうでした?」
「楽しかったです! さっそく新しい仲間にも会えましたし」
「わあ、よかったです! わたしまでうれしくなっちゃいます」
と、タロ、ハッっとして、
「あっ! わたし、部室に顔出さなきゃいけないんでした! 案内は終わりになっちゃうんですが、最後にこれだけは聞いてください!」
「はい」
「この学園では、ブルーベリー・スペシャル・レクリエーション、略してブルレクが盛んです!」
「ブルレク?」
「ブルレクはドーム内で活動してると学園から出題されるミッションでして、おまかせバトルをしてー、とか、特定のポケモンを捕まえてー、とか、いろいろなお題を出されるんです! いつ、どこで、どんなお題が出るかは誰にも予想できません」
「ふむふむ」
「お題をクリアするごとに学園内通貨、ブルーベリーポイント、略してBPがもらえます! BPは食堂や購買部でお金として使えますよ! あ、自炊用の食材は普通の通貨で買えますのでご心配なく」
「ありがたい!」
「あとは今後、部活でも……」
タロ、言葉を切り、
「とりあえずブルレク! ブルレクしてBP集めてみてください! 急ぎ足ですみません!
それではわたしはこれで! 学園生活、楽しんでくださいね!」
去っていくタロ。
「ありがとうございましたー」
頭を下げるヨーコ。と、今度は電話が。
「はい、北條陽子です」
『ヨーコよね!? あたし、ゼイユだけど!』
「ゼイユさん!」
ぴっかりさんも出てきた。
「ピカチュ!」
『あら、ピカチュウもいっしょなのね。聞いたわよ! あんた今、うちに留学してるんだって!?』
「うん、半年間お世話になるんじゃけど、なんで知っとるん?」
『ふふん! 先生から聞いたの! あ、電話番号も先生からね』
ゼイユ嬉しそう。
『まさかあんたがブルベリにいるとはね。ねえ、ひさしぶりにちょっと顔見せなさいよ!』
「もちろん! どこに行けばええ?」
『えーとそうね……、テラリウムドームには行った?』
「まさに今そん中におるよ」
『なら話は早いわね。ドームの中心にセンタースクエアって広場があるから、そこで待ち合わせしましょ! 待たせたら……、わかってるわよね?』
「あはは、急いでくるけえ安心して」
『じゃ、一旦切るわね』
電話切れる。
「ゼイユさんに会えるって! 行こっか!」
「ピカチュ!」
センタースクエアを目的地登録し、ミライドンで向かう。さっそくブルレクが始まってるので、ポケモンの写真とったりものをひろったり移動したりしてスクエアへ向かう。
一方、スグリらしき少年が……。
*
スクエアに到着。探しまわりながら歩いていると、
「最近リーグ部、雰囲気悪いんですよね……」
「カキツバタさんからスグリさんにチャンピオンが代わってから……、部活が楽しくなくなっちゃって」
「関係がギクシャクしてるってね。今度話してみましょうか」
「先生が入っても言うこと聞きそうにないですよ……」
「急に雰囲気変わりましたし……」
スグリに関する不穏な噂が聞こえてくるが、今はゼイユに会いに行くことが優先。
上のバトルコートに着くと、ゼイユが誰かと話していた。
「そうなのよ、ちょっと大変でさ……」
「心中、察する」
褐色肌の眼鏡の少女がうなずく。
「あのう」
小声のヨーコに少女が気付き、
「ゼイユ……、来客」
ゼイユ、振り向きにっこにこ。
「ヨーコ! ピカチュウ! ひさしぶり! すっごく会いたかったでしょ!?」
「うん! もちろん!」
「ピカチュ!」
「ふふ……、ふたりそろって正直でよろしいじゃん!」
「時間……、ゼイユ」
懐中時計をしまい、少女が声をかけてくる。
「会えてよかった。さようなら」
「あ、うん、またね!」
きびきび去っていく少女を見送るゼイユ。
「あの子、同級生ですっごいおもしろい女なの」
「しかも美人さんじゃねえ」
「ま、わたしには負けるけど!」
ゼイユ、ヨーコを見て、
「と、いうか……、ふうん? ブルベリにヨーコがいんの、なんか不思議な感じするわ」
「ほうかねえ?」
「よく見たらあんたたち……、全然変わってないわね!」
「ええ……」(汗)(汗)
「あたしは最近、ブライア先生といろんな地方調査してまわってるから? 前戦ったときよりポケモン強くなってるのよねー」
「本当? うちらもじゃ」
「ピカピカ!」
「うふふ、当然、見たいでしょ?」
「うん!」「ピカ!」
「ちょうどバトルコートもあるし、位置につきなさいよ」
「はーい!」
「ピカチュー」
位置につく。ギャラリーもポツポツ集まってきた。
「ダブルバトルでやるわよ! 覚悟はいい?」
「いつでもどうぞ!」
「ピカピカ!」
「じゃ、ひと泡吹かせてあげる」
ゼイユ、ドデカバシとグラエナ出す!
「せっかくだから味わいなさい、テラリウムドームの土の味!」
「パルデアチャンピオンの腕見せたる! わっぷるさん!」
わっぷるさんぴっかりさんの横に登場!
と、ドデカバシがクチバシを加熱しはじめる。
「まずい! ぴっかりさん!」
さっそくいかづちおろしでしとめる! 一撃で仕留めるもやけどを負うぴっかりさん。
わっぷるさんも追撃でかわらわりをお見舞いし、グラエナ倒す。
「ぴっかりさん!」
「ちょっと! たまには今ひとつ技も使いなさいよ!」
やけどの傷が広がってきたので、ぴっかりさんを戻すヨーコ。ゼイユもズルズキンとヤバソチャを出す。
「あんたも会いたがっとりんさったね!」
代わりにポンさん出す!
「ぽにおー!」
「あっ! オーガポンじゃん!」
ゼイユにっこり。
「やっぱりあたしが恋しくなったのね?」
「がお」
首を横に振るポンさん。
「それはない、じゃと」
「そこは嘘でもはいって言いなさいよ!」
ゼイユ、気を取り直し、
「じゃ、そろそろ本気のあ・れ! うふふ……、テラっちゃおっかなー?」
「はっ、まさか……!」
ゼイユ、ヤバソチャをテラスタル!
「わー! テラスタル!」
ヨーコ、お目々キラキラ。
「んじゃ、うちらもやろっかポンさん!」
「ぽにおーん!」
「面影宿して、ポンさん!」
ヨーコもポンさんテラスタル!
「相変わらずキレイだこと!」
ヤバソチャ、わっぷるさんにしびれごな! しかしわっぷるさん華麗にかわし、ズルズキンに肉薄してかわらわり! ズルズキンダメージ受けつつ防いだため、倒れず。
代わりにポンさんのツタこんぼうでズルズキン倒す! ギャラリーからも歓声が上がる。
「すげえ、あんなテラスタルの形もあるのか」
「効果抜群ならなおすごそう……」
わっぷるさんはアクロバットでヤバソチャに攻撃。しかし倒れずしびれごなを至近距離でまかれる。体がしびれるわっぷるさん。
ポンさんツタこんぼうくらわすが倒れず。
「やったれヤバソチャ! シャッカシャカにしてやりなさい!」
ヤバソチャ、必殺シャカシャカほう! ポンさんは今一つで助かるが、わっぷるさん効果抜群で倒れる。
「ありがとうわっぷるさん」
ヨーコ、ボールに戻し、
「さっそく頼んだべとべとさん!」
べとべとさん出す。
ポンさん、このゆびとまれで集中させる。たたりめをくらったところでダストシュート。しかしかわされる。
「めげずに行こう!」
ポンさんツタこんぼう! べとべとさん、たたみかけてダストシュート! 今度こそ命中! ヤバソチャ倒れる。
「やった! すごいよべとべとさん!」
「ベトー」
べとべとさん照れ笑い。ついでにベトベトンに進化! 周りからはパラパラと拍手。
「思ってたのと違うんだけど」
悔しそうなゼイユ。回復させていると、
「あーあ! テラスタルで強くなったのに! もっと強くなってるんだもん! それに新技まで考えちゃって。その容赦のなさ! 全然変わってないわね」
「いやあ、これでもパルデアのチャンピオンのひとりじゃけえ」
「それからそうと早く言いなさいよ! おめでとう!」
「い、一応言うたけども……」(汗)
と、ギャラリーから、
「ヨーコ? ヨーコか!?」
白の春服姿の少年が駆け寄ってきた。
「久夫さん!?」
「久しぶりじゃのう! 見違えたわい!」
「うん! 久夫さんも元気そうなねえ」
「あれ、久夫じゃん。ヨーコと知り合い?」
ゼイユきょとん。ヨーコと久夫同時に、
「「いとこです」」
「あー! だからヨーコに初めて会った時、どっかで見た気がしたのね!」
膝を打つゼイユ。
「まあ血はつながっとらんけどな」
「ええ」
「え、それってどういう」
かくかくしかじか。ゼイユ、じーん。
「なにそれいい話……! って、ヨーコは悲しいわよね」
「ううん。確かに寂しい時もあるけど、今は楽しいし平気」
久夫と連絡先を交換すると(部活が科学部と判明)、
「久夫くーん!」
研究員っぽい人が久夫を呼ぶ。
「はい! 今行きます!」
久夫、ヨーコに向き直り、
「じゃあの、ヨーコ。今度勝負させとくれ」
「うん! またね」
久夫を見送ると、ゼイユ歯切れ悪く。
「ねえ、ところでさ、──スグとは……、会った?」
「うんにゃ、会うとらんけど……」
さっき聞いた会話が頭をよぎる。
「どうかしたん?」
「あ、いや……、会ってないなら、いいんだけど」
と、
「どうしてこんなこともできないんだよ!!」
下から怒鳴り声が。
「え!?」
「この声……!」
ふたりでスクエアのブロックに隠れつつ下を覗き込む。なにやら詰め寄っているのと詰め寄られているのがふたり。
「やっぱり、スグリだ。すっごいニアミス……」
「えっ、スグリさん!?」
あまりの変わりように、ヨーコ驚愕。
「シーッ! 静かに!」
ふたりで見守っていると、髪を上げ、刺々しい雰囲気に変わったスグリが恫喝している。
「試合用のポケモン5匹は育てて、って俺言ったよな?」
「ご、ごめん、今月は家の手伝いで帰ってて忙しくて……」
「そっか、わかった。──だったら一生、弱いまんまでいたら?」
ねめつけるスグリ。
「い、いや、それは……」
「忙しいみたいだし、代わりに書いてやるよ、……退部届」
上から睨み付け、
「本気になれない奴は、俺の部活にいらない」
去っていくスグリ。
「待ってよ! スグリくん! 許して! お願い!」
追いすがる生徒。周りもひそひそ。ヨーコ、思わず眉をひそめる。
「なんじゃね、ありゃ……」
「……驚いたでしょ。スグ、見た目も性格も、ちょっと……、変わっちゃって。林間学校終わってからかな。あれから、なんか……」
「なーんか胸クソ悪いもん見ちまったなあ」
突然男性の声。振り向き顔をしかめるゼイユ。
「ゲッ」
ヨーコも見る。歯磨き粉みたいな髪型の、流し目の少年。
「おやおや? ゼイユに……、見たことねえ顔」
少年、ヨーコをしげしげ眺めつつ、
「……もしかすっと、そちらさんが? 例のワケありさん」
少年にっこり。
「チッ! めんどいのに見つかっちゃった」
思わず舌打ちするゼイユ。
「おいおい、紹介くらいしてくれよ」
しょんもりと頭をかく少年。
「……これ、カキツバタ。いけすかない男」
しぶしぶ紹介するゼイユ。軽く手を振るカキツバタ。
「いちおう、ブルーベリー学園で一番強い……、強かったやつ」
「ご紹介どうもー」
にっこりカキツバタ。
「こっちはヨーコ。交換留学で来てて、半年間ブルベリにいんの。あたしの友達の……」
と、カキツバタ、ヨーコに、
「スグリとも! 友達なんだろぃ? アンタ」
真剣に詰め寄られる。
「はい、友達です」
うなずくヨーコ。
「ほーん、やっぱりそうかい! そいつはいいなあ!」
カキツバタ、腕を組み大きくうなずく。
「そいじゃヨーコ! オイラたちの部室、案内するぜぃ」
「へ?」
「は? なんでよ!」
ヨーコきょとん、ゼイユ驚愕。
「アンタ、まだ部活入ってないだろ?」
「ええ、まあ」
「半年間でもどっか部活入っときゃ学園も過ごしやすくなるし、おもしろそうなのは大歓迎!
……ツバ、つけとかないとねぃ」
カキツバタ、先に歩き出し、
「ついてきな」
「ねえ、ちょっと!」
カキツバタ、ゼイユも気に留めず進んでいく。
「ひと、ふりまわすやつ、ムカつく~!」
「う、うーん……」
ヨーコ、(汗)。
「あたしも行くから」
ふたりでカキツバタについていく。