season2 2話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
2.『碧の仮面の不思議な子』
マップアプリを見ながら姉弟の家へ(一応回復コーナーにも寄る)。元気になったぴっかりさん&わっぷるさんも出てくる。
「じーちゃん、ただいまー!」
おじいさんが庭にいた。
「スグリ、お帰りなさい。そちらの方は?」
「えっとね……、この人は林間学校で一緒の……、ヨーコ……」
「おお!? もしかしてスグリのお友達かな?」
「はい、友達になりました! 北條陽子です! この子は相棒のピカチュウのぴっかりさんと、ウェルカモのわっぷるさん」
「ピーカチュ」
「ウェループ」
「え!? そ、そうなんだ!?」
「ほうよ?」
「ピカ」
「友達……、こそばゆい変な感じ……。にへへ」
スグリ、嬉しそう。
「ヨーコさん、ピカチュウさんとウェルカモさんも、スグリと仲良くしてくれてありがとう」
「あら? お友達?」
おばあさんがやってくる。
「……うん! ヨーコって言うんだ! それとヨーコの相棒の、ピカチュウのぴっかりさんとウェルカモのわっぷるさん! あ、ヨーコ、うちのばーちゃん」
「初めまして、北條陽子です」
「ピカチュウ!」
「ウェルプ」
「スグリちゃんにお友達! ヨーコちゃんにピカチュウさん、ウェルカモさん、よろしくねえ」
「いえいえ、こちらこそです」
「ピーカ」
「ルプ」
「おお? もう日暮れか」
「ああら、オモテ祭り、今夜からだったわねえ。スグリちゃん、ヨーコちゃん、じんべえ出してあげるから、一緒にお祭り行って来なさいな」
「じんべえだって! やった!」
「そんな、悪いです」
「いいのよ、ちょっと待っててね」
しばらく準備……。着付けとか教えてもらったりして、
「はい! できあがり!」
うぐいす色の甚平に雪駄、おまつりきんちゃく姿のヨーコ。
「わぁー……」
感心してくれるスグリ。ヨーコもにっこり。
「えへへ、向こうじゃお祭りん時は浴衣じゃけ、じんべえは初めてじゃ! 涼しゅうて動きやすい!」
「やっぱり思ったとおり! とっても似合ってるわねえ」
「ピーカチュウ!」
「ループ」
「ありがとうございますー」
「ハッハッハ、なんだか孫が増えたみたいだな」
「そうそう、おしゃれなヨーコちゃんなら、このお札も使いこなせるかも」
緑色の綺麗なカードをもらう。
「キレイ。おしゃれカードみどり?」
「都会のブティックや美容室で、いろいろメニューが増えるんですって」
「ありがとうございます!」
と、ゼイユが出てきて、
「ねえ、ばーちゃん、祭りのさー……」
ヨーコを見て固まるゼイユ。
「ってゲッ、なんであんたがいんのよ」
スグリ、ぴしっ、として、
「ヨーコは……、おれとオモテ祭りさ行くから……」
「……へーえ? ふぅーん?」
面白げなゼイユ。
「どうでもいいでしょ! ねーちゃんこそ何……?」
敢えて無視のスグリ。ゼイユ、ニヤニヤしつつ、
「そうだばーちゃん、お面ないんだけど」
「お面はねぇ、去年、離れの倉庫にしまったはずよ。たしか3つあったはずだから、仲良く使ってね」
「鍵は開けてあるから、みんなで取りに行きなさい」
おじいさんが勧める。
「っしゃ! 離れの倉庫ね! 早い者勝ちー!」
一番に駆け出すゼイユ。追いかけるスグリ。
「ねーちゃん! ずるっこ!」
「ヨーコさん……、騒がしくてすまないね。孫たちのこと、よろしく頼んだよ」
「あはは……」
苦笑いして追いかける。倉庫前でなにやらやってる姉弟。
「もう! ないじゃん!」
ヨーコに気づくスグリ。
「ねーちゃん、ヨーコ来た」
「チッ! ちゃっかり来たわね」
ゼイユ、舌打ちした後やたらと明るく、
「なんか倉庫にお面2つしかなかったんだよねー。あーこればっかりは仕方ない! 人生って早い者勝ちだし、あんたはお面なしでいいよね?」
「えー、そんなぁ……」
しょんぼりヨーコ。
「まぁまぁ! 機嫌なおしなって! お祭り姿のあたしが勝負してあげるからさ」
スグリは後ろでため息。うなずくしかないヨーコ。
「はあ」
「それじゃ、位置につきなさい」
ぴっかりさん達をボールに戻し、玄関前で勝負。一発目モルペコ。ヨーコはお馴染みぴっかりさん。
「じんべえ姿に見とれていいよ。その間に倒しちゃうから」
「やってみい。ぴっかりさん、アイアンテール!」
アイアンテールで急所に当てる!
「どうじゃ!」
ゼイユ、少しだけ動揺。
「急所にあたったくらいでなに? 別にあせってないんだけど?」
モルペコのにらみつけるで攻撃力減るも、あなをほるで噛みつくを回避。効果抜群!
「っし!」
「ちょっと! お面の恨み!? 効果抜群やめなさいよ!」
二番目、グラエナ。ヨーコはまんじゅう。
かみつくを合図でかわし、がんせきふうじで動きを封じ込めていく。スグリ戦で覚えたじだんだでとどめ。
三番目、クルマユ。ヨーコはわっぷるさん。
ローキックで素早さを下げるも、はっぱカッターで効果抜群。くさわけで突撃してきたところをお返しにエアスラッシュ!
「あんたをコテンパンにして、気持ちよくお祭り行くんだから!」
最後、チャデス。ヨーコはここまでノーダメのぴっかりさん。
かみなりパンチをくらわせるもからにこもられいまひとつ。
「めでたい日だからね。景気いいのいくわよ!」
チャデス、メガトレイン。体力とられる。おどろかすをくらって攻撃がつかめない。
「いまひとつでもこれなら! ぴっかりさん、エレキボール!」
ぴっかりさん、おどろかすを食らう前に急所に当て勝利!
「じんべえ姿に見とれなさいよ!」
「ありがとぴっかりさん!」
「ピーカチュ!!」
回復のため、ぴっかりさんをボールに戻す。
しかし気を取り直すゼイユ。
「……ま! あたしに勝ってもお面が増えるわけじゃないし、それじゃ遠慮なく……」
お面つけるふたり。
「どう? イカすでしょ」
「──おれのお面、やっぱヨーコにあげるー……」
「ダメー! 早い者勝ち! それにあんたそのお面、鬼のやつ大事にしてたじゃん!」
「んだけども……」
「お面はお祭りでも買えるんだから、ヨーコはこのままでいーの! それじゃ行くわよー!」
さっさと行ってしまうゼイユ。
「あうう……、ごめんなヨーコ」
「ええよ。ピカチュウのお面、あったら買うし」
「ねーちゃん憎まれ口さたたいてっけど、ヨーコさくるまで一生懸命3つめ探してたんだ。……内緒だよ」
クスクス笑うスグリに、ヨーコもつられて、
「ああ、それなら言うてくれればよかったんに。わかった」
「オモテ祭りはキタカミセンターでやってる。そ、それじゃ、行こっか」
「うん」
回復コーナーで回復させ、昼間とはまた違った舞出街道を、ポケモン図鑑を見たり夜空を見上げながら姉弟と歩く。バルビードやイルミーゼ、ホーホー、そしてチャデスがいる。
そして祭り会場。山から碧の仮面をかぶった何がやってきた。
*
一方ヨーコ達も到着。
「わぁー……」
出店の明かりに感動するヨーコ。
「これがオモテ祭り! 今日から何日か続く……」
「こーんな大きい祭り、パルデアでもやってないんじゃない?」
「うーん……(あっちは毎日お祭りのようなもんじゃし、クレペも大けーお祭りあるし……)」
考え込むヨーコに、ゼイユ、どや顔やれやれ。
「あちゃー、圧倒されて声も出ないかー。意外とキタカミ、都会にも負けてないのね」
「……ヨーコ、気ぃ使わなくていいからな」
スグリはいつもの調子。
「記念に写真撮ったげる。ロトりぼう貸しなさいよ」
「お願いします」
ロトりぼうにスマホロトムを乗せ、ゼイユに渡すヨーコ。
「ヨーコもスグももうちょっと寄って」
「ねーちゃん足踏んでる!」
「ちょっとくらい我慢しなさい! いくわよー……、はいピッピ!」
パシャリ。
「お祭り感満載でいい感じね」
ロトりぼうとスマホロトムを返してくれるゼイユ。
「ありがとうゼイユさん」
「オモテ祭りは、3匹のともっこさまの勇姿を称えるお祭りなのよ」
「ともっこさま? ともっこプラザの名前にも出とるけど」
首をかしげるヨーコに、自分のお面を指差しながら説明するゼイユ。
「ともっこさまはかつてキタカミを悪い鬼から守ったポケモン! あたしとか村の子のお面も、ありがた~いともっこさまの顔なんだよ」
「あ、そういえば村の子達が誰が好き、とか話しとりんさったね」
ここに向かう途中の子供達の会話を思い出すヨーコ。
「……ふふふ」
急にクスクス笑い出すスグリ。すかさず睨むゼイユ。
「ああん? なに笑ってんのよ」
「べ、別に! 鬼さまのこと、なんもわかってないなーって思って……」
ゼイユ、ワナワナ。
「はー!? キタカミ伝説はあたしのほうが詳しいっての! 弟のくせにナマイキ!」
「うぅ……」
肩を落とすスグリ。ふふん、なゼイユ。
「スグはお子ちゃまだから、悪的な存在にあこがれちゃうのよねー。ともっこさまより鬼の方が好きなの」
「は、はあ」
「あ! 見てりんごあめ! 屋台さ行こ!」
屋台へ駆け出していくスグリ。
「スグリさん待って!」
追いかけるヨーコ。ため息ゼイユ。
「全く、スグって都合悪くなるとすぐ逃げんだから……」
*
途中、他のメンバーとブライアに会いながら(メンバーは管理人さんからじんべえもらってた。男の子はキタカミアップ、女の子はキタカミポニーにしてもらってる。眼鏡の子はそのまま。公民館の受付さんがやってくれたそう)、りんごあめの屋台に行くと、スグリが、
「あ、あの……、りんごあめふたつ」
「あいよ! ふたつね!」
りんごあめをくれた。
「ヨーコ……、いっこあげる」
「ええの?」
「ばーちゃんからこづかいさもらってっから、気にしないで」
「ありがとう。いただきます。あま~!」
ペロペロなめながら、近くのベンチでおしゃべり。
「りんごあめって、普段食えないから好きだなー。ばーちゃんが作るおやつ、いっつももちばっかりだし……。季節になったらりんごとかかきとか食えっけど」
「そ、そりゃ大変じゃね……」
「キタカミには、りんごあめみたいなポケモンっこもいんだよー」
「へー、いつか会うてみたいねぇ。こっちはまんまりんごみたあなポケモンと、アップルパイみたあなポケモンならおりんさるけど」
「パルデアのお菓子って何があるんだ?」
「いっぱいあるよ~。みなとっても甘くておいしいんじゃ。サクサクしとるアルファホールとかケーキとかクレープ、あと、きっちゃてんのウエハーつきアイスクリン! コーヒーは苦いけど」
「きっちゃてんの、ウエハーつきアイスクリン?」
「あ、喫茶店のウエハースつきアイスクリームのこと。屋台のアイスクリームもあるけど。チュロスていうドーナツもあるね。それとね、お米とミルクで作る甘いデザートもあるんよ。アロス・コン・レチェって言うんじゃけど」
「もち以外のお米でできたお菓子!? わやじゃ!」
「あと、クレペとかコサジだと秋になったら家で干し柿作るけ、それ食べたりするかね。それと果物とかジャムとかクリームはさんだ甘いサンドウィッチも……」
「わやー、いっぺん食べてみたいなあ」
「こがなお祭りじゃと、かき氷はもちろん、オレンジあめとかブドウあめ、チョコバナナとか冷しパイナップルとか、ププリンさんやマリルさんっていうポケモンみたあな形したベビーカステラとか、チルタリスさんていうポケモンみたあなわたあめもあるんよ。さっき言うたチュロスとアイスクリームと、クレープの屋台もあるんじゃ」
「うまそうなもんいっぱいだべな!」
「飲み物もあるよー。電球の形のいれもんに入った電球ソーダとか」
そうこうしているうちに食べ終わる。
「ごちそうさま」
「にへへ、あっちさ行ってみよ!」
奥へ行くと、鬼退治フェスの呼び声。
「鬼退治フェスやってるよー、きみたち挑戦してみない?」
「鬼退治フェス?」
「あれ? パルデアから来てる子だよね?
スイリョクタウンに昔から伝わる催し物で、たくさんきのみを集めて台まで運んで高得点を狙うゲームだよ! お代はサービスしちゃうから、やってみない?」
「えと、じゃあ、やります」
「あー……、ヨーコ、これやるんだ? と、遠くから……、応援してる」
と、
「いやー、しょっぱい焼そば食べるとお祭り来たって感じするわー」
ゼイユも焼そば食べながらやって来た。
「へーえ? あんたも鬼退治? さっきあたしもやったけど、楽勝だったよ」
「へー」
「ちなみにスコア6390! 越えられるかしら?」
「ヨーコ、けっぱれー」
会場に移るヨーコとミライドン。
「頑張ろうね、ミライドンさん!」
「アギャス!」
なんとかレベル2まで行くものの、ゼイユの記録には及ばず……。
「お疲れさま! 景品はこちらでーす」
おもちとけいけんおまもりをもらう。
「うう……、難しかった……」
ヨーコ、しょんもり。
「村一番のオニバルーン割り王(キング)と呼ばれてるこのあたしの……、勝ちのようね!!」
どや顔ゼイユ。
「追い打ちかけたいけど、おこづかい残り少ないし……」
スグリを見る。
「スグ! あんた代わりにヨーコをもっと負かしなさい!」
「や……、やだよ」
「あんた! ねーちゃんよりよそ者の肩持つってのー!? ムカつきすぎて気絶しそうよおお!!」
「うう……、うるさくてごめんな。おれ相手してっから、ヨーコ他まわってて」
「う、うん……」
「あんたねえ! 姉弟パワーはよそ者なんかに負けないんだから!」
行こうとすると、キラキラしたお面の不思議な子がキタカミセンターの裏へ行くのが見える。首をかしげるが、
「ピカ!」
「ウェルプ」
休むためボールに戻っていたぴっかりさんとわっぷるさんが出てくる。
「お腹すいたね。何か食べようか」
気にはなるものの、ひとまず屋台に戻る。
「うーん、かき氷はクレペのお祭りでも食べとるけえ……」
ハナビラアイスの屋台に目が行く。
「蒸し暑いねー、アイス食べて涼まない?」
「ハナビラアイス?」
「キタカミ産ミルク使用! 自慢の名産品だよ!」
「ほいじゃカップでください!」
カップでいただく。みんなの分も。
「冷やくてあま~!」
おいしく食べ終わる。
「次は……」
「焼き焼きそばそば! キタカミそば! 食っていくかい!?」
「あ、ゼイユさんが食べとったの! ください!」
「へい! 焼きたて出すから、ちょっくらお待ちよ!」
焦げたソースがたまらない。
「クレペの海鮮焼そばとはまた違う味~!」
「ありがとうよ!」
「さて、もう一品……」
飴屋さんをもう一度見る。あおりんごあめ。
「さっきもろうたのはりんごあめじゃったし、こっちも食べてみるかね」
「はーい、めくるめくあめの世界へごあんなーい!」
「さっきよりすっぱい! でもあまあ~!」
みんなで味わってなめていると、お面屋さんの近くを通りかかる。
「お面買いたいのに、お店の人いないのよ」
「どこ行ったんだろうねえ」
ピカチュウお面を買えないことを残念がりつつ、お腹いっぱいで眠くなったみんなをボールに戻しさっきの子を探すことに。
お面の子は鬼が山への入り口にいた。
見ていると、向こうもこちらに気付いたらしい。近づいてみるヨーコ。
「こんばんは」
挨拶すると、不思議な子はお面ごしにヨーコを見る。
「ぽに……?」
「ええお面なねえ。お祭り楽しい?」
「ぽにおっ!」
楽しそうに跳ねる。こっちも笑顔になる。
と、ここでゼイユが来た。
「聞いてよヨーコ!」
「ゼイユさん」
「スグったら全っ然ダメ! 鬼退治の才能ゼロ!」
「……!」
一瞬気色ばむ仮面の子。しかしすぐに逃げる。
「誰、あれ? パルデアの子?」
「うんにゃ。キタカミの子とちがうん?」
「あんな子、この村にはいないわよ」
「そう……。うち、追いかけてみる」
「ヨーコ!」
ゼイユの制止も聞かず、鬼が山への道へ向かうヨーコ。お面の子がたたずんでいる。
「おりんさった」
「!」
キラキラしたお面ごしにヨーコを見る不思議な子。
「ヨーコ! ねえ、勝手に行かないでよ」
ゼイユ追い付く。
「ごめん。あ、ゼイユさんあん子じゃ」
「ああ。さっきの子も、おーい!」
ゼイユが呼びかけるが後退りしてバック転。お面が落ちてしまう。
「あ!」
階段に落ちてきたそれをすぐに拾うヨーコ。
「はい! あんたのお面よ!」
「戻ってきなよ! 夜の山は危ないから!」
でも見られたくないのか、顔を隠しながら行ってしまう。ヨーコ、ひとまずお面をきんちゃくに入れる。
「何あれ、どこの子よ……」
「あがな動き方……、もしかして、人じゃのうてポケモンかもしれん」
「そんなこと……、えっ? じゃあさっきの、山に入ってったのって……」
驚愕するゼイユ。
「もしかして鬼!? 歴史の看板に出てくる!? えー!? あれってマジ話だったの!?」
山道を見上げ、
「お面落としていったし、そういうこと、だよね……」
「ヨーコ! ねーちゃん!」
ここでスグリが来た。
「こんなとこで何してんだ?」
「あ、スグリさん、うちらさっき鬼さんと会うた!」
「ちょ! わーわー!!」
ヨーコの言葉を大声で隠すゼイユ。
「な、何……? ねーちゃん、うるさい」
怪訝な顔のスグリ。取り繕うゼイユ。
「何でもない! 何でもないから!!」
「ふーん……。どうせおれの悪口さ言ってたんたべ。
……お祭りさ戻ってるよ」
とぼとぼ歩いていくスグリ。
「ふー、なんとかごまかせたか」
安堵のため息をつくゼイユ。ヨーコに振り向き、
「あんたビビる。急にぶっこむんだもん」
「だって本当のことやし……」
「スグって、鬼のこと本当にすっごくすっごく好きなの!! だから……、あたしたちだけ鬼に会ったって知ったら、あの子ヤな気持ちになるかもって」
少し冷静になるゼイユ。
「……考えすぎ? でも今から鬼追っかけて山入られても困るしね……」
ゼイユ考え込み、
「うん……。取りあえず隠しちゃったものはしかたない。さっきのはあたしたちだけの秘密。さっき拾った鬼の面も、しばらくスグには見せないで」
「──うん……」
歩きながらひとりごちるゼイユ。
「うふふ……、お祭り楽しい! 特に変わったことはなかったしー」
ヨーコもしばらく歩いて、頭を冷やすべくかき氷(グレープ)を食べる。すると北條家から電話。甚平とお祭りについて話す。
それからセンターの入り口に立っていたスグリに声をかけるヨーコ。
「スグリさん」
「ヨーコ、お祭りさ充分楽しんだ?」
「うん! おかげさまで」
「んだば帰ろっか。公民館まで送る!」
「ありがとう」
ゼイユも合流し、みんなで歩き始める。
祭り初日の夜は更けていく……。